第42話:新世界(ネオ・センゴク)への降下と、原初の超生命体
第42話:新世界への降下と、原初の超生命体
超次元創世炉『アマテラス』によって引き起こされた「ノブナガ・バン」から数時間。
無限に広がる平面宇宙――新世界【ネオ・センゴク】の上空を、大日本・多元宇宙帝国の巨大な影が覆い尽くそうとしていた。
先陣を切るのは、星喰らいの獣王『黒王』の頭上に鎮座する多次元・帝都『アヅチ・ノヴァ』。その後ろには一千万隻の天魔艦隊と、巨大な魔獣に跨る大日本の武将たちが雪崩を打って降下していく。
「ヒャッハー! 大気圏突入だァ! だが、なんか様子がおかしいぜェ!?」
宇宙亀に跨った市松が、周囲を包む異常な光景に声を上げた。
通常、星への降下時に発生するのは空気との摩擦熱によるプラズマの炎である。
しかし、この新世界の大気は「空気」ではなく、高濃度の『カオス・エネルギー』と『闘気』が混ざり合った未知のエーテルで構成されていた。アヅチ・ノヴァが降下する速度に比例して、空が赤熱するのではなく、空間そのものが「殺意」を持って大日本軍に重圧をかけてきているのだ。
「フフ……。どうやらこの世界の大地そのものが、我々を『異物(魔王)』として激しく拒絶しているようですね」
金柑ことルーギス(ハイエルフ)が、多重次元シールドの表面でバチバチとはじける闘気の雷を見つめて優雅に笑う。
「計算通りです。我々が仕込んだ『進化のバグ』は、この新世界を極限の闘争環境へと作り変えた。ここでは重力すらも『強者の我』によって変動します。まさに、力こそが絶対のルール」
佐吉ことイシオン(ハーフエルフ)が、魔導盤を弾きながら冷静に分析する。
「ガハハハハ! 上等じゃねェか! 平和ボケした身体の準備運動にはもってこいだぜ!」
権六が巨大竜の上で戦斧を振り回し、武功派の猛将たちが一斉に歓喜の雄叫びを上げる。
黄金の天主のバルコニーで、織田信長は葉巻を咥え、眼下に広がる広大な大陸を睨み下ろしていた。
「五郎左! 一番乗りだ! あの鬱陶しい『闘気の雲』を大筒で吹き飛ばし、降下地点をこじ開けろ!」
「おうよォ、御館様! 特大の挨拶をブチ込んでやらァ!」
ドワーフの鍛冶長・五郎左が、アヅチ・ノヴァの主砲『真・次元穿孔砲』の引き金を引く。
極太のカオス閃光が新世界の分厚い雲を円形に吹き飛ばし、眼下に広がる『狂乱の荒野』を露わにした。
ズシィィィィィンッ!!!!!
黒王の巨大な四肢が大地を踏みしめ、続いて一千万の艦隊が轟音と共に着陸を果たす。
大日本・多元宇宙帝国、新世界【ネオ・センゴク】の大地へ、完全降臨。
原初の超生命体の襲来
「へっへへ……! 着陸成功でさぁ! さーて、この新しいシマには、どんなお宝が埋まってるか……」
猿ことトックス(猿獣人)が、天主から身を乗り出して双眼鏡を構えた瞬間。
『――ゴルロオォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!』
大陸全土を震わせるような、常軌を逸した咆哮が轟いた。
荒野の地平線が、文字通り「波打ち」始めたのである。
「なんだァ!? 地面が動いてやがるぞ!」
虎が十文字槍を構える。
動いていたのは地面ではない。地平線を埋め尽くすほどの超巨大な【獣の群れ】であった。
創世からわずか数時間。しかし、信長たちが仕込んだ「極限進化バグ」の影響で、新世界の泥と闘気から直接這い出してきた原初の超生命体たち。
体高数百メートルに及ぶ、六つの赤い目を持つ漆黒の大猿。全身がマグマのように燃え盛る巨大なサイ。そして、岩盤を削り出して作られたような、八本足の鎧甲蟲。
「お、おい佐吉! あいつら、ただのデカい獣じゃねェぞ! 魔力じゃなくて、純粋な『殺気』だけで空間を歪めてやがる!」
猿が悲鳴を上げる。
「ええ。彼らには、オムニバースの神々のような理屈も、知性もありません。ただ『本能』として、我々大日本を喰い殺すために創り出された、純度百パーセントの【暴力の権化】です」
佐吉が、バチバチと火花を散らす魔導盤を見つめながら汗を拭う。
「フハ、フハハハハハ!」
信長は、殺到する超生命体の群れを見て、最高に楽しそうに笑い声を上げた。
「良い顔をしている! 神様どもの無機質なツラとは大違いだ! あの飢えた瞳こそが、戦場に相応しい!」
信長が軍配を天に掲げる。
「武将ども! 接待の時間は終わりだ! この新世界の原住民どもに、大日本の【魔王軍】の恐ろしさを骨の髄まで叩き込んでやれ!」
「「「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」
魔王軍の蹂躙と、進化する狂獣
「一番槍は俺がもらうぜェッ!!」
又左が、雷エイの背から神速の跳躍を放った。
狙うは、先頭を突き進む六つ目の漆黒の大猿。オムニバースの星系すら容易く破壊した又左の電撃槍が、大猿の眉間を正確に貫く。
ズバァァァァァァァンッ!!
強烈な雷光が荒野を照らし、大猿の巨体が仰け反る。
……しかし。
『グル、ルル……ガァァァァァッ!!』
「なッ!?」
又左が目を見開く。貫かれたはずの大猿の眉間が、一瞬にしてドス黒い闘気で塞がり、逆に又左の槍の電撃を『喰らって』、自らの腕に雷を纏わせたのだ。
「オイオイ、一撃で死なねェどころか、俺の雷をパクりやがったぞ!?」
「ガハハハ! なら、物理でミンチにするまでだ!」
権六が巨大竜を駆り、次元晶の戦斧を大猿の頭部へ全力で叩き下ろす。
だが、大猿も雷を纏った剛腕で戦斧を真っ向から受け止め、周囲数キロの荒野がクレーター状に吹き飛ぶほどの衝撃波が発生した。
「ヒャッハー! 硬ェ! こいつらの肉体、オムニバースの『次元装甲』より硬ェじゃねェか!」
市松や虎も、マグマのサイや鎧甲蟲と激突するが、一撃で屠ることができず、かつてない肉弾戦へと引きずり込まれる。
「御館様! 奴らの細胞は、受けた攻撃を瞬時に学習し、環境に適応して『進化』しています! 中途半端な攻撃では、敵を強くするだけです!」
佐吉が叫ぶ。
「フン。小細工が通じない、究極の脳筋世界というわけか。……ならば」
信長は、玉座から立ち上がり、愛用の火縄銃を構えた。
「進化する暇も与えぬほどの、圧倒的な【理不尽】で消し飛ばせばいい」
「蘭丸」
「御意ッ!!」
信長の影から、絶対の剣・森蘭丸が飛び出す。
「我が主君の御前に立ち塞がる獣どもよ。その生命力ごと、次元の彼方へ消え去れ!」
「奥義・神断ち――『白銀・覇王十字星』!!」
蘭丸の放った極大の十字斬りが、地平線を埋め尽くす獣の群れの前衛を、空間ごと真っ二つに斬り裂く。
再生する間もない、概念ごと断ち切る絶対の一撃。
そしてその直後。
「俺がこの世界のルール(魔王)だ!」
ズドォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
信長の火縄銃から放たれた『神滅・覇王弾』が、蘭丸の開いた道を一直線に駆け抜け、獣の群れの中央に突き刺さった。
信長の極大の覇王色が爆発し、黄金の炎が数十キロにわたって荒野を焼き尽くす。
進化のバグを持った超生命体たちも、魔王の純粋すぎる覇気の前には学習する間もなく、文字通り「炭化」して崩れ去った。
第二次・天下布武の拠点
「ガハハハハ! さすがは御館様! やっぱり、一撃の重さが違いすぎるぜ!」
権六が、炭化した獣の残骸を踏みつけながら高笑いする。
先陣の群れが消滅したことで、後続の超生命体たちは、本能的に「今は勝てない」と悟ったのか、蜘蛛の子を散らすように荒野の彼方へと退却していった。
「ふぅ……。全く、とんでもない世界を創ってしまったものです。一歩間違えれば、我々が喰われていましたよ」
金柑が、乱れた金髪を整えながらため息をつく。
「だからこそ、面白いのだろうが」
信長は、硝煙の立ち昇る火縄銃を肩に担ぎ、新世界の荒野を見渡した。
「あの程度の獣が、この世界の『雑兵』に過ぎないという事実。そして……見ろ」
信長が軍配で指し示す遥か彼方。
無限に続く大陸のあちこちから、先ほどの大猿など比ではない、天を突くほどの極大の【闘気の柱】が、何本も立ち上っていた。
「……あれは、この新世界で独自の進化を遂げ、すでに『一つの国』を築き上げようとしている、未知の覇王たちのオーラです」
佐吉が、魔導盤の異常数値を読み上げながら息を呑む。
「我々が創った世界でありながら、すでに我々の予測を超えた【群雄割拠】の時代が始まろうとしています」
「フハハハハハ! 最高だ! 俺たちを殺すために生まれてきた、最強の敵ども! この胸の滾り、本能寺を抜け出して以来だ!」
信長は、軍配を荒野のど真ん中に突き立てた。
「五郎左! ここに『真・安土城』を築け! この大陸の中心を俺たちの本陣とし、四方八方から襲い来る未知の覇王どもを、片っ端から蹂躙してやる!」
「おうよォ!! オムニバースの全資材をブッ込んで、宇宙一カチカチの魔王城を建ててやらァ!」
「武将ども! 剣を研ぎ澄ませ! ここからが、大日本の真の戦だ!」
「「「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」
自らの手で創り出した究極の戦国世界。
進化する未知の超生命体と、誕生しつつある新たな覇王たちに対し、第六天魔王・織田信長は絶対的な【魔王軍】として、果てしなき第二次・天下布武の第一歩を強烈に踏み出すのであった。
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