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異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜  作者: 盆ちゃん


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第29話:鋼鉄の宇宙(第775実験槽)と、次元結晶(ディメンション・クォーツ)の咆哮

第29話:鋼鉄の宇宙(第775実験槽)と、次元結晶ディメンション・クォーツの咆哮

 純白の虚無空間(次元の海)に、凄まじい轟音が響き渡る。

 大日本・多元宇宙帝国の絶対拠点『ゼロポイント・アヅチ』から放たれた極太の次元穿孔砲ディメンション・カノンが、隣接する巨大な水槽――【第775実験宇宙】の透明な外殻(次元の壁)をドリルように容赦なく抉り開けていた。

「次元の壁、突破! アヅチ・ノヴァ、並びに天魔艦隊五百隻、新宇宙ターゲットの内部へ侵入します!」

 戦略室で魔導盤を叩く佐吉ことイシオン(ハーフエルフ)の声と共に、視界を覆っていた純白の光が晴れた。

 その直後、黄金の天主のバルコニーに立つ織田信長たちの眼前に広がったのは、かつて見たこともない異様な星の海であった。

「……こいつは、ひでェ煤煙スモッグだ。鼻がひん曲がりそうだぜ」

 前衛艦隊の甲板で、キールが鼻をつまんで顔をしかめた。

 そこは、文字通りの『鋼鉄と機械の宇宙』であった。

 自然の星は一つもなく、すべての惑星が鈍色の金属装甲で覆われ、星と星とが巨大な歯車とパイプラインで接続されている。宇宙空間そのものが、一つの超巨大な「工場」として稼働しており、大気エーテルには濃密な魔力排ガスが立ち込めていた。

「なるほど。観測者アルファ・オメガどもが、他の宇宙を管理・制圧するための『兵器』を造らせている重工業宇宙……まさに都合の良い武器庫ですね」

 劇薬の軍師・官兵衛クロードが、杖を突きながらその禍々しい光景を見て笑みを深める。

「ですが、歓迎はされていないようですよ、御館様」

 風の軍師・半兵衛ハルが扇を向ける先。

 煤煙の向こう側から、アヅチ・ノヴァの侵入を「エラー」として感知したこの宇宙の防衛システムが、無数の赤いセンサー光を瞬かせて姿を現した。

 それは、純白の機械の身体に、鋭利な刃の連なった『鋼鉄の翼』を持つ、無人機動兵器の大群――【歯車天使ギア・エンジェル】。

 その数は、ざっと見渡すだけでも数千万機を下らない。まるで宇宙を埋め尽くすイナゴの群れであった。

『――異常コード検知。非正規次元からの侵入者。直チニ、完全焼却プロセスニ移行スル』

 歯車天使たちが、一糸乱れぬ完璧な幾何学陣形を組み、その掌から一斉に超高出力のプラズマ・ビームを放った。数千万の光の雨が、アヅチ・ノヴァと天魔艦隊へと殺到する。

「チィッ、挨拶代わりにしては数が多すぎんだろ!」

 市松フリントが大斧を構え、迎撃の態勢をとる。

 しかし。

「――慌てるな、若造ども。相手の武器が最新式なら、こちらも『最新のアップデート』で応えるまでよ」

 信長は、玉座に座ったまま全く動じることなく、口の端を吊り上げた。

「五郎左! 新しいオモチャの初披露だ! 派手にやれ!」

「おうよォ、御館様! 待ってましたぜェ!!」

 通信機越しに、ドワーフの鍛冶長・五郎左ダンの野太い咆哮が響いた。

「全艦、シールド展開! 『次元晶ディメンション・クォーツ』コーティング、最大出力ゥゥッ!」

 直後、五百隻の天魔艦隊とアヅチ・ノヴァを覆う結界が、透明から『極彩色のオーロラ』のような異質な輝きへと変化した。

 数千万のプラズマ・ビームがそのオーロラの結界に着弾する。しかし、爆発すら起きなかった。

 ビームは結界に触れた瞬間、空間の摩擦係数を狂わされ、ツルリと滑るように「別次元の座標」へと受け流されて虚空へと消え去ったのだ。

「フフ……次元の海で回収した『次元晶』のエネルギー。ただの物理的な熱線など、次元のズレの前では通り雨にも劣りますよ」

 金柑ことルーギス(ハイエルフ)が、美しい髪をかき上げながら優雅に笑う。

「さあ、お返しと行こうじゃねェか! 全艦、主砲『次元徹甲・魔導旋風砲ガトリング』、ブッ放せェ!!」

 五郎左の号令と共に、天魔艦隊の砲門が一斉に火を噴いた。

 放たれたのは、青白い魔力弾に「次元晶の粉末」を練り込んだ特殊弾。

 ズドドドドドドドドドッ!!!!

 それは、もはや「撃つ」というより「空間を削り取る」攻撃であった。

 次元徹甲弾は、歯車天使たちの強固な装甲や防御フィールドを紙屑のように貫通――いや、「その部分の空間ごと抉り取り」、数千万の機械の群れを次々と無惨なスクラップに変えていく。

『――演算エラー。敵兵器ノ物理法則ガ、当宇宙ノ基準値ヲ逸脱。防衛アルゴリズム、再計算……』

 単調なプログラムで動く機械たちは、次元を超えた未知のエネルギーの前に完全に硬直した。

「計算に手間取ってるぜ! 機械風情が、戦場で立ち止まってんじゃねェ!」

「ヒャッハー! スクラップ解体の時間だァ!」

 その一瞬の隙を突き、大日本の狂戦士たちがカタパルトから宇宙空間へと飛び出した。

 権六ゴルグの巨大な戦斧が、オークの怪力と合わさって歯車天使を十機まとめて粉砕する。

 又左マティアスの狼の如き超高速の槍撃が、機械のセンサーを正確に貫く。

 平八郎ドラクに至っては、轟槌を振り回すことによる圧倒的な質量の渦で、機械の群れをブラックホールのように巻き込んで圧殺していた。

「佐吉、どうだ?」

 バルコニーからその蹂躙劇を見下ろしながら、信長が問う。

「ええ。敵の指揮系統のリンクを逆探知しました」

 佐吉は、目を閉じたまま魔導盤を異常な速度で操作している。

「この宇宙のすべての機械兵器に指示を出している『頭脳メインサーバー』……。前方約三十万キロの宙域に存在する、惑星サイズの巨大演算要塞。名付けるなら『機神母星マザーフレーム』といったところでしょうか」

「よし。雑魚に構うな、その『機神母星』まで一気に本陣を押し進めるぞ! 半兵衛!」

「承知いたしました。『鋼鉄の海を切り裂く、大渦の神風よ』」

 半兵衛の風魔法が、宇宙空間の煤煙と魔力排ガスを強引に巻き込み、天魔艦隊の進路上に巨大な「真空のトンネル」を作り出した。

「全艦、最大戦速! この宇宙のシステム管理者を、俺の『永楽銭』で買収しに行くぞ!」

 信長の号令のもと、アヅチ・ノヴァは数千万の機械の残骸を蹴散らしながら、一気に敵の心臓部へとワープ・ドライブを敢行した。

     * * *

 ワープアウトした先。

 そこには、星全体が基盤と水晶体で構成された、不気味に明滅する巨大な要塞惑星――『機神母星マザーフレーム』が存在していた。

 その周囲には、先ほどの比ではない、惑星そのものを砕く威力の「超大型軌道砲」が何万門もアヅチ・ノヴァへ照準を合わせている。

『――警告。警告。観測者アルファ・オメガノ敵対対象。コレヨリ、惑星コア・エネルギーヲ完全解放シ、対象ノ時空間座標ゴト消去スル』

 機神母星から、全帯域をジャックする形で無機質なシステム音声が響いた。

「フン、また消去か。ワンパターンな奴らだ」

 信長は、愛用の『火縄銃』を構えた。

「だが、俺たちはすでに『観測者』の本体に喧嘩を売った男だ。その下請けのポンコツ機械ごときが、俺たちを消せると思うなよ」

「御館様! 敵の軌道砲、一斉発射きます!」

 佐吉が叫ぶ。

「蘭丸」

「はッ!!」

 信長の絶対の剣、森蘭丸が静かに前に出た。

 機神母星から放たれた、数万筋の極太の殲滅レーザー。それは、アヅチ・ノヴァの多重次元断層シールドすらも容易く貫くほどの圧倒的なエネルギーの束であった。

 しかし、蘭丸の瞳には微塵の揺らぎもない。

「我が命は、御館様の野望を阻むすべての障害を切り裂くための刃! 機械ごときの光が、我が忠義の炎を消せるはずがないッ!」

 蘭丸が愛刀『天叢雲』を抜刀する。

 その刀身には、五郎左の手によって純度百パーセントの『次元晶』が打ち込まれていた。

 奥義――『次元断ち・覇王紅蓮断』。

 蘭丸の放った青白い魔力の斬撃は、数万のレーザーの束を正面から「次元の裂け目ごと」真っ二つに斬り裂き、機神母星の軌道砲群を、その周囲の空間ごと消滅させた。

「な、なんて威力だ……! 次元晶と蘭丸の坊主の剣術が合わさると、化け物じみてるぜ」

 虎が呆然と呟く。

「今だ、佐吉! 猿!」

 信長が軍配を振り下ろす。

「ハッ! すでに通信回線のファイアウォールは突破済みです! 猿殿!」

「へっへへへ! あっしらの『大日本・サカイウス商会』の誇る、超凶悪・強制買収ウイルス(プロパガンダ)! くれてやりまさぁ!」

 佐吉と猿のコンビが、蘭丸の斬撃によって生じた機神母星の「システムの隙間」に、魔導盤を通じて強烈なハッキング・コードを叩き込んだ。

『――エラー。システム侵入検知。排除……排除……再起動……』

 機神母星の明滅が狂ったように点滅を始める。

『――【新・永楽銭】のインストールを確認。大日本・星間帝国への所有権の移行を承認。……これより、全兵器工場のマスター権限を、オダ・ノブナガ様へ譲渡します』

 数分後。

 宇宙全土に響き渡っていた敵対的システム音声は、すっかり「大日本のアナウンス声」へと書き換えられていた。

「よしッ! 第一の宇宙、完全掌握でさぁ!」

 猿がガッツポーズを取り、戦略室の文官たちが一斉に歓声を上げる。

 圧倒的な火力の前に敵の戦力を物理的に粉砕し、最後にシステムそのものを「経済と情報」で丸ごと乗っ取る。

 それが、第六天魔王の究極にして最高効率の『侵略』であった。

「フハハハハ! 他愛もない! これで、この第775実験宇宙のすべての兵器工場と資源は、俺たち大日本のものとなった!」

 信長は黄金の天主から、己のものとなった重工業宇宙を見下ろし、凶悪に笑った。

「五郎左! 直ちにこの宇宙の工場をフル稼働させろ! 次元晶を搭載した『新・天魔艦隊』を、一千万隻単位で量産するのだ!」

「おうよォ! 徹夜どころか、寿命が縮む勢いで造りまくってやらァ!」

「観測者どもめ、水槽の外から高見の見物をしているのも今のうちだぞ」

 信長は、漆黒のマントを翻し、さらに広がる次元の海を睨み据えた。

「すべての宇宙ハコニワの資源を喰らい尽くし、貴様らの玉座を必ず引きずり下ろしてやる! 行くぞお前ら、次の宇宙ターゲットへの侵攻準備だ!!」

「「「おおおおおおおッッ!!!」」」

 多元宇宙マルチバースの天下布武。

 その最初の獲物を完膚なきまでに飲み込んだ大日本の野火は、無尽蔵の生産力を得て、次なる未知の宇宙へとさらに恐るべき速度で燃え広がっていくのである。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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