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異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜  作者: 盆ちゃん


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第23話:星雲の伏兵と、量産型・魔導鉄甲艦隊

第23話:星雲の伏兵と、量産型・魔導鉄甲艦隊

 銀河聖教連盟の中枢『聖王星サンクチュアリ』の最高評議会は、今や完全なパニック状態に陥っていた。

 金融の心臓部であるクリソールが陥落し、星を消し飛ばす殲滅兵器『神罰の槍』は跳ね返され、あろうことか連盟最大の兵器生産拠点である『機巧惑星アグニ』までもが、たった一つの浮遊要塞と数名の野蛮な戦士たちによって無傷で奪われたのである。

「もはや辺境の暴動などというレベルではない! 奴らは我々のシステムを完璧に理解し、その上で蹂躙しているのだ!」

「教皇猊下! このままでは、他の星系も次々とあの『オダ・ノブナガ』なる男の経済圏(永楽銭)へと寝返ってしまいますぞ!」

 狼狽する司教たちを見下ろし、教皇グレゴリウスは青筋を立てて玉座の肘掛けを叩いた。

「ええい、騒ぐな! 所詮は下等生物の寄せ集め! だが……これ以上の失態は神の威信に関わる。ユリウスを呼べ。我が連盟が誇る『聖騎士団パラディン』を全軍出撃させろ!」

 議場の扉が開き、一人の男が進み出た。

 白銀と黄金で彩られた豪奢な装甲に身を包み、背には光の翼を思わせる魔導スラスターを備えた美丈夫。銀河最強と謳われる聖騎士団長・ユリウスである。

「お呼びでしょうか、教皇猊下」

「ユリウスよ。貴様の率いる聖騎士艦隊五千隻で、あの忌まわしきアヅチ・ノヴァを討て。奴らの『鏡』は光線を反射する。ならば、貴様らの得意とする『剣』で、あの岩くれを物理的に切り刻んでこい!」

 ユリウスは静かに片膝をついた。その表情には、腐敗した司教たちのような傲慢さはなく、ただ純粋な戦士としての冷徹な光が宿っていた。

「承知いたしました。……奴らの戦術データは分析済みです。正面からの撃ち合いは愚策。私が最も確実な『狩り場』を用意し、第六天魔王の首を持ち帰りましょう」

     * * *

 その頃。

 大日本・宇宙造兵廠アグニの衛星軌道上には、銀河の常識を覆すほどの壮観な光景が広がっていた。

「フハハハハ! 見事だ五郎左! これこそが、俺が求めていたチカラよ!」

 アヅチ・ノヴァの黄金の天主から、織田信長は歓喜の声を上げた。

 漆黒の宇宙空間に整然と並ぶのは、かつて奈落の海竜を打ち倒したあの『魔導鉄甲船(天魔)』の同型艦。それが、なんと五百隻もの大艦隊となって軌道上を埋め尽くしていたのだ。

 鈍色のミスリル鋼の装甲に、高出力の魔力推進タービン、そして無数に束ねられた魔導旋風砲ガトリング・カノン

「へっへへ! アグニの自動工場とドワーフの職人魂が合わされば、こんなモン朝飯前でさぁ!」

 五郎左ダンが、油まみれの顔で誇らしげに胸を張る。

「素晴らしい生産効率です。……もっとも、この五百隻を造るために、猿殿がどれだけ各地から資源を買い叩いたかと思うと、少々同情しますがね」

 金柑ルーギスがクスリと笑うと、背後で帳簿を抱えたトックスが「胃薬が足りねェんだよ!」と泣き叫んでいた。

「よし、これで俺たちの『宇宙・織田艦隊』の結成だ!」

 信長は漆黒のマントを翻し、居並ぶ武功派の猛将たちを見渡した。

「先陣は権六ゴルグ又左マティアスに任せる! 貴様らが大日本の『鬼柴田』『槍の又左』として、宇宙そらの最前線を切り裂け! 両翼はキール市松フリント平八郎ドラクだ。遠慮はいらん、思う存分暴れてこい!」

「「「オオオオオオオオッッ!!!」」」

 オーク、狼獣人、虎獣人、ドワーフ、そして魔将。大日本の最凶の前衛陣が、新たな宇宙戦艦の艦長として歓喜の咆哮を上げた。

 かくして、五百隻の『量産型・天魔艦隊』を引き連れたアヅチ・ノヴァは、銀河の中心へ向けて進軍を開始した。

     * * *

 大日本艦隊が進軍するルートの途上。

 そこには『女神の涙』と呼ばれる、超高濃度の魔力ガスとデブリが渦巻く巨大な星雲が存在していた。

 レーダーは無効化され、魔力探知も乱反射する、まさに「宇宙の濃霧」。

 聖騎士団長ユリウスは、この星雲の内部に、自身の率いる五千隻の聖騎士艦隊を息を潜めて潜伏させていた。

(光線の撃ち合いなら、奴らの艦隊や結界に分がある。だが、この星雲の中ならば探知は無効。視界ゼロの超近接戦になれば、純粋な『白兵戦の技量』が勝敗を決する。我ら聖騎士団の『聖なる光剣』で、奴らの鉄船を真っ二つにしてくれる)

 ユリウスは旗艦の艦橋で、静かに抜刀の合図を待っていた。

 やがて、星雲の縁から、漆黒の天魔艦隊が姿を現した。探知が効かないためか、警戒する様子もなく、星雲の深くへと入り込んでくる。

「かかったな。……全艦、スラスター全開! 目標、敵艦隊の側面! 『聖光十字斬ホーリー・クロス』の陣形で一気に仕留めろ!」

 ユリウスの号令と共に、星雲のガスを切り裂いて、純白の戦艦五千隻が一斉に飛び出した。

 聖騎士艦隊の戦艦は、艦首に数百メートルに及ぶ「光の巨大な刃」を展開している。すれ違いざまに敵艦を物理的に両断する、彼らの必殺の突撃戦術であった。

「食らえ、野蛮な原住民どもッ!」

 ユリウスの旗艦が、先頭を走る権六の乗る鉄甲艦の側面に、光の刃を深々と叩き込んだ。

 ――ガギィィィィィィンッ!!!!

 星雲に響き渡る、けたたましい金属音。

 ユリウスは己の目を疑った。

 装甲を紙のように切り裂くはずの聖なる光の刃が、天魔の『鈍色の装甲』に触れた瞬間、パキンッ!と音を立てて砕け散ったのだ。

「な、なんだとォ!? 聖なる光剣が、ただの鉄の船に弾かれただと!?」

 ユリウスが驚愕の声を上げたその時。

 通信回路に、織田信長の冷酷で楽しげな声が響いた。

『――ただの鉄だと思うなよ、無能な騎士ども』

 信長の声と共に、星雲のガスが薄れ、無傷の天魔艦隊がその威容を現した。

『その装甲にはな、先日貴様らの司教が撃ってきた「神罰の槍」を反射した要塞……あの「黄金の十字架」の残骸スクラップを溶かして混ぜ込んである。貴様らの聖なる魔力(光剣)など、最初から完全に防ぐようにコーティング済みだ』

「ば、馬鹿な……我々の兵器の残骸を、短期間で装甲に転用したというのか!?」

 絶望するユリウスの耳に、今度は大日本の軍師たちの声が続く。

「フフ……。星雲に伏兵を潜ませる。古典的で美しい戦術ですが、マナの乱れを読めば伏兵の位置など手に取るように分かりますよ」

 官兵衛クロードが冷酷に笑う。

「それに、この高濃度の魔力ガス……少し『風』を送り込んでやれば、最高の『燃料』に早変わりします」

 半兵衛ハルの穏やかな声と共に、宇宙空間に異常な気流が発生した。半兵衛の風魔法が、星雲のガスを極限まで圧縮し、聖騎士艦隊の周囲に「高可燃性のガスのドーム」を形成したのだ。

「権六! 又左! 若造ども! 狩りの時間だ! 星雲ごと火の海にしてやれ!」

 信長の軍配が振り下ろされる。

「「「オオオオオオオオッッ!!!」」」

 権六率いる先陣艦隊の砲門が一斉に開き、放たれたのは通常の魔力弾ではなく、五郎左が開発した『魔導火炎放射弾』であった。

 着弾した瞬間、圧縮された星雲のガスに引火し、宇宙空間に「太陽」が生まれたかのような大爆発と業火の嵐が巻き起こった。

「ギャァァァァァァッ!?」

「あつい! 船が、装甲が溶けるゥゥッ!」

 光の剣を砕かれ、逃げ場を失った聖騎士艦隊五千隻は、星雲の業火の中で次々と爆散していく。

「チィッ! せめて敵の将だけでも道連れに……ッ!」

 ユリウスは旗艦のシールドを最大にして炎を抜け、一直線に権六の旗艦へと特攻を仕掛けた。装甲が通じないなら、直接乗り込んで首を獲るしかない。

 ガンッ!と権六の船の甲板に降り立ったユリウス。

 その前に立ち塞がったのは、身の丈をゆうに超える巨大な戦斧を担いだ、筋骨隆々のオークの老将・権六ゴルグであった。

「フン。白兵戦なら勝てるとでも思ったか、ヒヨッコが」

 権六が、獰猛な牙を剥いて笑う。

「我は銀河聖教連盟・聖騎士団長ユリウス! 旧き神の裁きを受けよッ!」

 ユリウスが、手にした純白の聖剣に全魔力を込め、神速の突きを放つ。その一撃は、小惑星をも穿つほどの鋭さを持っていた。

 しかし。

「大日本の前衛タテをナメるなァッ!!」

 権六が、全重力を乗せた戦斧を真っ向から振り下ろした。

 ――ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!!

 技も魔法も関係ない。圧倒的で暴力的な『質量と闘気』。

 権六の戦斧は、ユリウスの聖剣を根元から粉砕し、その豪奢な白銀の鎧ごと、聖騎士団長を甲板に叩き伏せた。

「が、はァッ……! ばか、な……人間の、原住民の兵士が……これほどの、武を……」

 血を吐きながら崩れ落ちるユリウス。

「お前は弱くはない。だが、俺たちの御館様(信長)が創り上げる『理』は、お前らの神よりも高く、重い。それだけのことだ」

 権六は、倒れ伏したユリウスを見下ろし、静かに斧を収めた。

     * * *

 数時間後。

 女神の涙と呼ばれた星雲は完全に吹き飛ばされ、そこには無傷で進軍を続ける五百隻の「天魔艦隊」と、その後ろを悠然と進むアヅチ・ノヴァの姿だけが残されていた。

 連盟最強と謳われた聖騎士団すらも、圧倒的な火力と兵器の進化、そして軍師たちの知略の前に完全に粉砕された。

 これで、銀河聖教連盟の中枢『聖王星サンクチュアリ』を守る盾は、すべて失われたことになる。

「フハハハハ! 見事な狩りだったぞ、権六! やはり大日本の矛はお前たち武功派だ!」

 信長は、黄金の天主から歓喜の声を上げた。

「御館様。次はいよいよ、連盟の総本山ですね」

 蘭丸が、静かな闘志を燃やして信長の傍らに立つ。

「ああ。宇宙そらの坊主どもに、引導を渡してやる時が来た」

 信長の視線の先、漆黒の宇宙の彼方には、銀河を支配してきた純白の超巨大天体『聖王星サンクチュアリ』が、恐怖に震えるようにその光を瞬かせていた。

 第六天魔王による宇宙の天下布武。

 その刃は、ついに旧き神々の中枢へと真っ直ぐに突き立てられようとしていた。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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