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異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜  作者: 盆ちゃん


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第21話:星砕きの審問艦隊と、八咫(やた)の魔鏡シールド

第21話:星砕きの審問艦隊と、八咫やたの魔鏡シールド

 銀河の中枢に位置する、純白の超巨大人工天体――銀河聖教連盟の総本山『聖王星サンクチュアリ』。

 その最深部にある最高評議会の大広間では、数千年にわたり銀河を支配してきた高位聖職者たちが、かつてないほどの狼狽と怒号の渦に包まれていた。

「金融惑星クリソールが、名もなき辺境の原住民に乗っ取られただと!? あの星には連盟の資産の三割が集中しているのだぞ!」

「システムが完全にハッキングされ、我が連盟の『信仰クレジット』がただの電子のゴミに成り下がった! 代わりに『エ・イ・ラ・ク・セ・ン』などという正体不明の暗号通貨が市場を席巻している!」

「先遣艦隊一千隻が、たった数十分で全滅したという報告も入っている。奴らは一体何者なのだ!」

 円卓の中心。最も高く豪奢な玉座に座る連盟の最高指導者、教皇グレゴリウスは、苛立ちと共に純金の杖を床に叩きつけた。

「静まれ! たかが一部の辺境星系がマナの暴走で知恵をつけたに過ぎん。だが、奴らが我らの『財布』を人質に取ったのは万死に値する」

「教皇猊下! クリソールを取り戻すための艦隊を――」

「不要だ」

 グレゴリウスの冷酷な声が、議場を氷点下に凍りつかせた。

「資産を握られ、市場を荒らされた以上、もはやあの星に価値はない。連盟の『絶対的な神の威信』を示すことこそが最優先である。異端審問長官・ザビエルを呼べ。奴らに『星間殲滅兵器』の使用を許可する」

「なっ……クリソールごと、消し飛ばすおつもりですか!?」

「神のシステムに逆らった原住民など、宇宙の癌細胞に等しい。星ごと焼却し、全銀河に見せしめとするのだ!」

 狂信と権威に凝り固まった神の代行者たちは、自らの経済の心臓部を、そこに住む何十億の民ごと切り捨てるという最悪の決断を下した。

     * * *

 一方、大日本の直轄経済特区『宇宙自由都市サカイ(旧クリソール)』。

 その衛星軌道上に停泊する浮遊星砦アヅチ・ノヴァの黄金の天主では、猿ことトックス(猿獣人)が、滝のように流れる電子帳簿を見ながら歓喜の涙を流していた。

「へっへへへ! 御館様ァ! 昨日の市場介入だけで、大日本の国家予算の数万年分に匹敵する富が転がり込みやしたぜ! これでもう、宇宙中からミスリルでもオリハルコンでも買い放題でさぁ!」

 葉巻をくわえた織田信長は、機嫌良くワイングラスを傾けていた。

「大儀であった、猿。だが、あまり浮かれるな。敗者が盤面をひっくり返された時、次に何をしてくるか。……そろそろ『挨拶』が来る頃合いだ」

 信長がそう呟いた瞬間だった。

 アヅチ・ノヴァの天主下層にある戦略室から、佐吉イシオンの緊迫した声が魔導通信機を通じて響いた。

『御館様。クリソール宙域の目前に、超大規模な空間跳躍ワープ反応。……敵です。数は三千隻。しかし、旗艦の質量が異常です。小惑星クラスの巨大建造物がワープアウトしてきます!』

「ほう」

 信長がバルコニーへ出ると、金柑ルーギスが展開した巨大なホログラムモニターが宇宙空間の映像を映し出した。

 空間が割れ、純白の艦隊が姿を現す。

 その艦隊の中心に鎮座していたのは、全長百キロにも及ぶ、巨大な『黄金の十字架』を象った超弩級宇宙要塞であった。

 十字架の先端には、周囲の宇宙空間の光すらも歪めるほどの、おぞましい密度のマナが収束しつつある。

『――愚かなる辺境の原住民よ。我は銀河聖教連盟・異端審問長官ザビエル』

 巨大十字架要塞から、全通信帯域をジャックする形で、傲慢で冷酷な声が響き渡った。

 サカイの地表にいる何十億の市民たちも、その声と空に浮かぶ巨大な死の十字架を見上げて絶望の悲鳴を上げている。

『神の威光を穢した罪、万死に値する。これより、星間殲滅兵器「神罰のロンギヌス」を以て、貴様らをその汚らわしい星ごと原子の塵へと還元してくれよう』

「な、なんだとォ!?」

 モニターを見ていた旧総督ヴァレリオが、通信越しに泡を食った。

「れ、連盟は我々を見捨てるというのか! クリソールには連盟の重要顧客も多数残っているのだぞ!」

「クックッ……。腐敗した権力者というものは、メンツのためなら自分の手足すらも切り落とすものです。実に合理的で、同時に最高に愚かな手ですね」

 劇薬の軍師・官兵衛クロードが、杖を突きながら底意地の悪い笑みをこぼす。

「御館様。あの十字架の先端に集束しているマナの量は、星を一つ完全に蒸発させる規模です。アヅチ・ノヴァの防御結界だけで防ぐのは、いかに金柑殿の術式といえど計算上不可能です」

 佐吉が、冷や汗を流しながら算盤を弾き終えた。

「でさぁね。……だが、真っ直ぐ飛んでくる馬鹿でかい光など、どうとでも料理できる」

 信長は葉巻を指で弾き飛ばし、不敵な笑みを浮かべてマントを翻した。

「五郎左! アレの準備はできているな!」

「おうよォ、御館様! 敵さんが『一番デカい筒』で撃ってくるなら、こっちは『一番デカい鏡』で跳ね返すのがスジってもんだろ!」

 地下の鍛冶・機関区画から、ドワーフの五郎左ダンの野太い声が響く。

「半兵衛! 空間の気流エーテルを整えろ!」

「承知いたしました。……『星の海を渡る、絶対屈折の神風よ』」

 風の軍師・半兵衛ハルが黄金の扇を天に掲げる。彼の放った強大な風魔法が、アヅチ・ノヴァの周囲数十キロの宇宙空間に、レンズのような特殊な「魔力・重力場」を形成し始めた。

「佐吉、金柑! 敵の出力に合わせた反射角の再計算だ!」

「「術式、展開完了しています!!」」

 信長は、かつてないほどの絶対的な自信に満ちた声で、全宇宙に響き渡る号令を下した。

「見せてやれ! 大日本の誇る究極の対・星間防御陣! 『八咫魔鏡シールド(やたのまきょうシールド)』、起動せよッ!!」

 ゴアァァァァァァァァッ!!!

 アヅチ・ノヴァの主機関(天使の心臓・極)から莫大なマナが抽出され、都市を覆う透明な結界が、鏡のようにギラギラと輝く「黄金の絶対反射面」へと変貌した。

『――無駄な足掻きを。消え去れ、異端ども!』

 ザビエル長官が処刑のスイッチを押し込んだ。

 超弩級要塞・黄金の十字架の先端から、クリソールという惑星そのものを貫き、蒸発させるほどの極太の純白のレーザー――殲滅兵器『神罰の槍』が発射された。

 宇宙空間が白一色に染まり、星の海が悲鳴を上げる。

 何十億もの命を刈り取る死の閃光が、アヅチ・ノヴァの『八咫魔鏡シールド』に激突した。

 ――ガギィィィィィィィィィンッ!!!!

 宇宙の法則が歪むような甲高い衝撃音。

 しかし、アヅチ・ノヴァは、そして背後にある惑星サカイは、チリ一つ燃えることはなかった。

「な、ば、馬鹿なッ!?」

 ザビエル長官の絶叫。

 彼の目に映ったのは、信じられない光景であった。

 五郎左が組み上げたミスリル鋼の超電導フレーム、佐吉と金柑の完璧な曲面計算、そして半兵衛の空間重力レンズ。

 大日本の天才たちが総力を挙げて創り上げた『鏡』は、星を砕くはずの光線を完全に受け止め、さらにそのエネルギーを「180度」折り曲げたのである。

「フハハハハハ!! 返してやろう、貴様らの神罰とやらをな!!」

 信長が軍配を振り下ろす。

 反射された極太の『神罰の槍』は、アヅチ・ノヴァから放たれた強烈な光の矢となって、真っ直ぐに審問艦隊の中心――巨大十字架要塞へと逆流していった。

『回避しろォォォッ!! 全艦、バリア最大出力ゥゥゥッ!!』

 遅すぎた。

 自分たちが放った最大の攻撃を、回避する術など彼らにはなかった。

 ドゴォォォォォォォォンッ!!!!!

 反射された殲滅の光は、巨大十字架要塞のシールドを紙屑のように貫通し、その核である主砲身から内部の動力炉に至るまでを完全に貫いた。

 全長百キロの要塞が、音のない宇宙空間で、太陽の如き大爆発を起こして四散する。その爆発の余波と巻き添えを食らい、周囲に展開していた三千隻の審問艦隊も、次々と連鎖爆発を起こして宇宙の塵へと変わっていった。

「ヒャッハー! まるでデカい花火大会だぜェ!」

 カタパルトからその様子を見ていた市松フリントが大口を開けて笑い、キールが呆れたように「出番なしだな、こりゃ」と肩をすくめた。

     * * *

 閃光が収まり、再び漆黒の宇宙空間が戻ってきた。

 惑星サカイの空を覆っていた死の十字架は消滅し、空を見上げていた何十億の市民たちは、数秒の静寂の後、爆発的な歓喜の声を上げた。

 自分たちを見捨てた旧き神の軍勢を、新たな主君である「第六天魔王」が、文字通り一網打尽にして見せたのだ。

「フン。口ほどにもない連中だ。あの十字架の装甲材、後で五郎左に回収させろ。いい資源になるだろう」

 信長は、何事もなかったかのように新しい葉巻に火をつけ、傍らに控える蘭丸に命じた。

「御意」

 蘭丸は恭しく頭を下げた後、凛とした声で尋ねた。

「御館様。連盟の殲滅兵器を退けたこの光景……サカイの通信網を通じて、周辺の星系にもすべて実況中継させておりました。これで、銀河中の誰もが、連盟の無力さと大日本の圧倒的な力を理解したはずです」

「ああ、その通りだ。戦というものは、見物人に見せつけてこそ意味がある」

 信長は、不敵な笑みを浮かべ、全銀河へ向けた『宣戦布告』の通信マイクの前に立った。

『――銀河の星々に住まうすべての者どもよ。よく聞け』

 信長の重く、絶対的な覇気を帯びた声が、宇宙のあらゆる通信電波をジャックして鳴り響く。

『銀河聖教連盟とやらが、貴様らの命を軽んじ、星ごと焼き払うというのなら、俺が貴様らを庇護してやろう。俺の前に膝を屈し、俺の「永楽銭」を使う者には、絶対の安全と繁栄を約束する!』

 それは、力による恐怖と、経済による救済の絶対的な二択。

『だが、俺の「天下布武」に逆らう者、旧き神に縋る者は……先ほどの十字架と同じ運命を辿ると思え! 俺は第六天魔王・織田信長! この宇宙の新たなことわりとなる男だ!』

 星を砕く兵器すらも跳ね返す圧倒的な軍事力と、銀河を飲み込む巨大な経済力。

 大日本の存在は、もはや一つの反乱勢力ではなく、銀河聖教連盟に代わる『新たな宇宙の覇権国家』として、全宇宙の歴史にその名を深く刻み込んだ。

 信長の野望は、もはや誰にも止められない。

 浮遊星砦アヅチ・ノヴァは、銀河の玉座を目指し、その漆黒の航跡をさらに広げていくのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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