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異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜  作者: 盆ちゃん


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第13話:魔王大陸上陸と、無傷の狂戦士(平八郎)

これまでの壮大なスケールと痛快な成り上がり展開を引き継ぎ、物語の新たな舞台「魔王大陸」への上陸と、未知の強敵との激突を描く第13話を執筆いたしました。

今回は、瘴気すらもエネルギーに変える信長軍の圧倒的な技術力と、史実における最強の武将「本多忠勝」を彷彿とさせる魔王軍の狂戦士との死闘を大ボリュームでお届けします。

# 第13話:魔王大陸上陸と、無傷の狂戦士(平八郎)

 大洋を切り裂き、荒れ狂う奈落の海を越えた魔導鉄甲船『天魔』。

 その巨大な漆黒の船首が、赤黒い岩肌が剥き出しになった未知の大陸――『魔王大陸』の海岸線に重々しく乗り上げた。ズドォォォンという地響きと共に、巨大ないかりが下ろされる。

「ひぃぃ……なんちゅう気味の悪い場所だ。空は血みたいに赤いし、空気がドブみてぇに臭ェ……」

 甲板から大陸を見下ろした市松フリントが、鼻をつまんで顔をしかめた。

「市松殿、無闇に息を吸い込んではいけません。この大陸の大気に満ちているのは、ルミナ帝国の周辺にあったものとは比べ物にならない高濃度の『瘴気』です。常人なら三分で肺が腐り落ちますよ」

 佐吉イシオンが、計算用の魔導盤を片手に無表情で警告する。

「な、なんだとォ!? じゃあ俺たち、ここじゃ戦えねぇじゃねぇか!」

 キールが慌てて口を押さえるが、その横で、金柑ことルーギスが優雅に銀の杖を振るった。

「ご安心を、野蛮なお二人とも。すでに私と佐吉殿で、対策は完了しております」

 ルーギスの杖の先から放たれた光が、天魔の主機(天使の心臓)と連動し、船全体から巨大な半球状の結界が展開された。

「この結界は、外部の瘴気を遮断するだけでなく、佐吉殿の考案した逆位相フィルターを通すことで、瘴気を純粋な『マナ』へと濾過ろかし、船の動力および内部の空調へと還元します」

「つまり、この忌まわしい毒の空気すらも、我が大日本の永久機関の燃料に過ぎないということです」

 佐吉と金柑の二人の天才による、息の合った完璧な説明。

「フハハハハハ! 見事だ。毒も喰らえば栄養か。いかなる魔境だろうと、俺のことわりの前ではただの領土に過ぎん!」

 信長は高らかに笑い、甲板の最前列へと進み出た。

「猿! 五郎左! 権六!」

「「「ははッ!!」」」

「結界の有効範囲内に、ただちに橋頭堡(前線基地)を構築しろ。この瘴気渦巻く大地に、俺たちの絶対の城を打ち立てるのだ!」

 信長の号令の下、大日本の家臣団が凄まじい速度で動き出した。

 天魔の内部から、予め規格化されて加工済みのミスリル鋼材や木材が次々と運び出される。権六たちオークの圧倒的な筋力で基礎が打ち込まれ、五郎左の土木技術と猿の陣頭指揮により、わずか半日にして、海岸線に鉄壁の『一夜要塞』が組み上がった。

 しかし、魔王大陸の住人たちが、侵入者の蛮行を黙って見過ごすはずもなかった。

『――グォォォォォォォォォォォッ!!』

 突如、血色の空を切り裂くような禍々しい咆哮が響き渡った。

 一夜要塞の向こう、赤黒い荒野の地平線から、分厚い土煙を上げて『何か』が猛烈な速度で接近してくる。

「御館様! 敵襲です! 数は……およそ一万! 魔獣の群れと、先頭には見たこともない重装甲の魔族が!」

 見張り台の蘭丸が鋭い声を上げる。

 接近してくる魔王軍の先陣。

 その先頭を駆けるのは、身の丈三メートルを超える巨大な黒鹿毛の魔獣に跨がり、全身を漆黒の超重装甲で包んだ異形の魔将であった。

 兜の隙間からは赤い隻眼がギラつき、その手には、巨大な岩山すらも粉砕しそうな身の丈をゆうに超える『轟槌ごうつい』が握られている。

「我は魔王軍四天王が一角、ドラク! 不可侵の大地に踏み入る愚かな人間どもよ、このドラクの槌の錆にしてくれるわァァッ!」

 魔将ドラクの咆哮と共に、一万の魔獣の群れが一斉に要塞へと殺到する。

「チッ、挨拶代わりにしては派手な歓迎じゃねぇか。権六のオヤジ! 俺たち若手で一番槍をもらうぜ!」

「おう! オヤジ(猿)の顔に泥は塗らねェ! 行くぞ市松!」

「ヒャッハー! 酒のツマミにゃ最高だぜェ!」

 キール市松フリントが、要塞の門を開け放ち、自軍の獣人部隊を率いて真っ向から飛び出していった。十文字槍と大斧が旋風を巻き起こし、先陣を切ってきた魔獣たちを次々と血祭りにあげていく。

「雑魚どもが、調子に乗るなァッ!」

 魔将ドラクが巨大な黒鹿毛から跳躍し、隕石のような速度で虎と市松の頭上へと落下してきた。

「ヤベェッ!?」

 二人は咄嗟に武器を交差させて防御姿勢をとる。

 ドゴォォォォォォォンッ!!!

 ドラクの轟槌が振り下ろされた瞬間、大地がすり鉢状に陥没し、凄まじい衝撃波が虎と市松を数十メートル後方へと吹き飛ばした。

「がはッ……! な、なんちゅう馬鹿力だ……ッ!」

「おまけに、あの漆黒の鎧……俺の斧がかすりもしなかったぜ……」

 血を吐きながら立ち上がる二人の前に、ドラクが悠然と歩み寄る。

「フン。我が生涯、ただの一度も傷を負ったことはない。この『黒曜魔装』は、あらゆる物理的衝撃と魔法を完全に無効化するのだからな」

 ドラクは傲慢に笑い、再び轟槌を振り上げた。

 その様子を要塞の天守から見下ろしていた信長は、目を細めた。

「ただの一度も傷を負ったことがない、か。……あの圧倒的な武威と防御力、まるで『蜻蛉切とんぼぎり』を振るう本多平八郎忠勝だな」

「御館様、いかがなさいますか。佐吉殿の『魔導旋風砲ガトリング』では、あの黒曜魔装は撃ち抜けません」

 金柑ルーギスが冷静に戦況を分析する。

「力には力、といくのも一興だが。官兵衛、半兵衛」

 信長が声をかけると、影から二人の天才軍師が進み出た。

「ハッ。すでに手は打ってあります」

 官兵衛クロードが杖を突き、隻眼を細める。

「鎧が硬いなら、中身を揺さぶればいい。半兵衛殿」

「ええ。風は、どんな隙間にも入り込みますからね」

 半兵衛ハルが両手を天に掲げると、魔王大陸の荒れ狂う瘴気の風が、彼の意のままに旋回を始めた。

『――真空の刃よ、装甲の隙間を縫い、内なる臓腑を震わせよ』

 半兵衛の放った不可視の風の魔法が、ドラクの周囲の大気を急激に操作し、鎧の内部の気圧を異常なまでに低下させた。

「ぐ、ぬぉォッ!? な、なんだこれは……息が……ッ!」

 無敵を誇っていたドラクの動きが、突如として鈍る。外部からの攻撃を弾く鎧も、内部の気圧変化や酸欠までは防げない。

「今だ! 五郎左、準備はいいか!」

 信長が要塞のバルコニーから叫ぶ。

「おうよォ! こいつは天魔の主機(天使の心臓)から直接マナを引っ張る、とっておきのバカ兵器だぜ!」

 五郎左が要塞の屋上にセッティングしたのは、二本の長大なミスリル鋼のレールで構成された、異形の巨大砲。

 魔力螺旋陣をさらに進化させ、雷属性の魔力を極限まで高めて電磁誘導の力で弾丸を音速の数倍で射出する超兵器――『魔導電磁砲レールガン』であった。

「佐吉、出力最大! 目標、あの黒いカブトムシだ!」

「雷圧臨界。射線クリア。いつでも撃てます」

 信長は自ら『魔導電磁砲』の照準器を覗き込み、もがき苦しむ魔将ドラクの巨大な胴体に狙いを定めた。

「ただの一度も傷を負ったことがないだと? ならば、俺が貴様に『最初の傷』を刻んでやる。光栄に思え」

 信長が、引き金を引く。

 ――ピシャァァァァァァァァンッ!!!!

 落雷のような轟音と共に、要塞の屋上から青白い閃光の極太のレーザーが一直線に放たれた。

 音速を遥かに超える魔力の徹甲弾。それは、一万の魔獣の群れを一直線に消し飛ばし、ドラクが咄嗟に盾代わりに構えた巨大な轟槌を紙屑のように粉砕。

 さらに、絶対の防御を誇っていた漆黒の『黒曜魔装』の胸部を完全に貫通し、ドラクの巨体を遥か後方の岩山まで吹き飛ばして叩きつけた。

「ガ、ハァァァァッ……!!」

 岩山にめり込んだドラクは、砕け散った鎧の胸から大量の血を吹き出し、その場に崩れ落ちた。

 一撃。たった一撃での、絶対的魔将の完全敗北であった。

     * * *

 砂埃が晴れた荒野。

 信長は蘭丸を従え、血まみれになって膝をつくドラクの前にゆっくりと歩み寄った。

「……殺せ。この無敵のドラクが、一合も交えずに敗れるとは……。もはや、生きる恥を晒す気はない……」

 ドラクは、砕けた鎧の隙間から荒い息を吐きながら、死を覚悟して首を差し出した。

「フン。一度負けたくらいで死にたがるなど、底が知れるな。貴様のその異常なまでのタフさと武威、たった一発の筒で殺すには惜しい」

 信長は、ドラクの顎を軍配で跳ね上げた。

「無傷の伝説は今日で終わりだ。だが、これからは俺の盾となり、俺の鉾として、この魔王大陸を切り裂く最前線に立て。……貴様には今日から『平八郎へいはちろう』の名をやる。俺の元で、真の最強を証明してみせろ」

「……平、八郎。俺が、最強を……」

 ドラク――平八郎の赤い隻眼に、失いかけていた戦士の炎が再び、それもかつてないほどの熱量で燃え上がった。

 圧倒的な力と、それ以上に底知れぬ覇王の器。

 魔王に絶対の忠誠を誓っていたはずの狂戦士は、ゆっくりと巨体を屈め、織田信長の前にその身を投げ出した。

「この平八郎の命と武……これより、御館様のために振るわせていただきます!」

 魔王大陸上陸早々、敵の最精鋭を粉砕し、さらには最強の魔将を『本多平八郎忠勝』に擬えて配下に組み込んだ信長。

 虎、市松という若き猛将に加え、絶対的な武の化身・平八郎を手に入れた大日本の軍事力は、もはやとどまるところを知らない。

「さあ、案内しろ平八郎。この大陸の最深部、魔王の玉座へと続く道をな。俺の天下布武の、最後の仕上げだ」

 血色の空の下、第六天魔王と最強の家臣団の足音が、魔王大陸の深淵に向かって重々しく響き始めた。


ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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