第46話 お前の主人は
「…ねぇ、もしかして、スタインが東堂さんのお願いっていうか…命令を聞くのって…」
「ああ。前主人が花蓮に近付くのが恐いんだ。それに、逆らったときに、また…殺そうとするんじゃないかって」
スタインはそう呟くと、自分の手を力強く握りしめる。
「俺が原因で、また花蓮が危険な目に遭うのは嫌だ」
スタインは歯を食いしばると、ギリギリと音を立てる。
「スタイン…」
「いや、でも今も昔と同じようにするとは限らねーぜ」
涼太は持っていたスマホで何か検索をすると、画面を3人に見せる。
「これを見てみろ。東堂さんはこの5年間はコンサートに、リサイタル、それから海外公演にテレビ出演、常人では考えられないくらいに、鬼のようにスケジュールが詰まっている。言い換えれば、それだけ有名ってことだ。だから、もう花蓮に手出しはしないんじゃないか?」
「確かに…そうだよ、涼太の言う通り。スタインの考え過ぎかも。今回の件だって、私よりスタインの方に執着してたみたいだし。だから、もうそんなにしんぱ……ふわぁ〜あ。なんだか眠くなってきちゃった…」
「そういえば、行きはほとんど寝られなかったもんな。俺も眠いな」
花蓮と涼太があくびをすると、あっという間に2人共眠りについた。
そして、2人が寝入ってからバリウスはスタインを見る。
「スタイン。この後、前主人の所へ行きこれら要望の品を渡した後は、どうするんだ」
「どうするって、俺とバリウスそれぞれ主人の家に戻って、またいつも通り過ごすだけだ」
「過去、あれほど君に執着していた前主人が、今後、花蓮様に何もしないとでも?」
「…はっ、なんだ、バリウス…お前の主人は涼太だろ。急に花蓮のことを気にかける必要はない、そうだろ」
「…そうだね。余計な口出しをした、忘れてもらっていい」
そう言うと、バリウスは寝ている花蓮に視線をうつし、穏やかな顔で見つめ続けていた。




