第38話 魔法をかけた
「…として…ぼく…ま…す!」
扉の向こうの騒がしさに、部屋の中央しかも床の上で寝ていたスタインは目が覚めた。
「スタイン!!!」
勢いよく扉が開けられ、扉の端がポロポロと砕け落ちる。
スタインは、少し顎を引き顔を上げて扉の方を見る。
「…おい、俺の部屋を壊すつもりか?」
「そんなこと、どうだっていいでしょう!!」
目を大きく開け荒い息で入ってきたバリウスは、いつも綺麗に整えられている髪の毛が、今は無造作にあちこちにハネている。
「どうして!こんなことになっているんですか!!?スタイン、君が幽閉されているなんて、どうしてだ!?いや、そもそも、未だかつてこの国で幽閉の処罰を受けた者などいない!それなのに、どうして君が!?」
「はは、俺が光栄なる第一号ですよ。歴史に名を刻んだな」
「そんな、ふざけた答えを聞きたいわけではないよ!」
バリウスは、部屋の中央で床に寝転んだままのスタインの真上に来て見下ろすと、静かな口調で話し出す。
「…君を尋ねようとしたら、君の部屋の前にいる護衛に、何度も何度も押し返された。…この部屋には罪人がいて、罪が償われるまでは、いかなる人とも接触を許さないと。…スタイン、僕がいない間に、何があった?」
「何がって、まあ…色々あった。……で、バリウスは新しい主人は、どうだったんだ?いい人だ…」
そのとき、頬にポタッと何かが当たった。
スタインは、驚いて目を見開いて真上を見ると、悔しそうな顔をし、歯を食いしばりながら、必死に涙が溢れるのを堪えるバリウスと目が合った。
「バリ…ウス…」
いつも冷静で淡々としているバリウスの初めて見る表情に、スタインは動揺する。
「君は、この国で初めて出来た友人だ。クソ真面目だと言われて距離を置かれることが多かった僕に、普通に話しかけて来てくれたのは君が初めてだった。僕にとっては、君が大事な友人なんだ。だから、何か困っているなら、助けになりたい」
「バリウス……。…分かった、話すよ、だから」
スタインは、わざとじとっとした目でバリウスを見つめる。
「起き上がるから、俺から少し離れてくれませんかねー?」
「ああ、ごめん」
バリウスが離れると、スタインは後頭部をかきながら、ゆっくりと起き上がる。
「ドン引くぜ?初めての友人がこれからする話」
「引くも何も、実際起きたことなら、もう変えようがない事実じゃないか。話したところで、何も害はないだろう?」
「おま…そういうところだぞ?友達できない理由!ストレート過ぎるんだよ」
スタインが呆れた顔をすると、バリウスはキョトンとした顔をする。
「まあ、いいんだけどさ、そこがバリウスのいい所だし。——で、俺が幽閉されている理由なんだが」
スタインは天井を見上げると、小さく息を吐き出す。
「主人に魔法をかけて洗脳した」




