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楽器王子〜楽器の中に宿るは王子様!?〜  作者: めんだCoda
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34/49

第34話 3人目の主人の1つ目の願い

 花蓮が帰る前にもう一度会おうと約束した俺は、今日も主人の東堂麗香に部屋を出ていけと言われた後に、いつもの場所へと向かった。


「花蓮!!」


 今日は、花蓮はレッスン室部屋のある建物の外で待っていてくれていた。


「スタイン!」


 落ち合った後、今日もいつものように公園を歩き回って、たわいもない話をして過ごした。


「日本へ戻ったら、もうこっちには来ることはないのか?」


「うん、そうだね…。たぶん、すぐには難しいと思う…寂しいね…」


「ああ…寂しい。花蓮がいなくなった後は、本当、詩人じゃないけどさ、世界から色がなくなるな…」


「スタイン…」


 2人はしばらくの間抱き合った後、ゆっくりと離れた。

 いつものように公園から出ると、近くの横断歩道の前に行く。


「花蓮…日本に帰っても元気で。いつになるか分からないけど、いつか俺自身がまた日本に行くことができたら、必ず花蓮に会いに行くから!だから…これからも、笑顔で、それから、絶対にピアノを弾き続けていて欲しい。そうでないと、俺は君を探し出せない。だから、これだけは、必ず約束して欲しい」


「うん…分かった。ピアノは続ける。私もまたスタインと絶対に会いたいから…」


「ありがとう、花蓮」


 お互いの手を握りしめて見つめ合った後、いつものように花蓮は横断歩道を渡っていく。

 明るい暖かな陽射しに照らされる花蓮の笑顔が、いつもより眩しく見える。


 ——ドン!!!


 いつもと同じ別れ方のはずだった。


 目の前で花蓮が、すさまじいスピードの白い車に突っ込まれるのを見るまでは。


「キャーーーーーーー!!!」


 その場に居合わせた大勢の人々が一斉に叫び声をあげ、現場はパニックに陥る。


 花蓮は横断歩道から十数メートル離れた所に、血だらけで横たわり、足や腕は4本とも普通曲がらない方向を向いていた。


 誰かが救急車を呼び、それに俺も慌てて乗り込み病院へ向かったが、そこで医師から言われた言葉は、


「おそらく、もう先は長くないです。残りの時間を、大切に過ごしてください」


 意識不明で無数の管に繋がれた花蓮は、今の医学をもってしても、このまま生きながらえさせることは難しかった。


 そして、花蓮に追突した白い車は現場から逃走していて、まだ犯人も捕まっていないということは、帰る間際に警察からの話で知った。


 こんなときでも、俺は主人の東堂麗香の元へ帰らなければならないのが、苦しかった。花蓮のそばにい続けても、結局、主人の演奏のチャージがなければ、俺は生きていけないからだ。


 いつの間にか辺りが暗くなり夜になっていて、俺は静かに主人の家に帰宅すると、珍しく主人が階段の上の方で手すりに寄りかかって待っていた。


「今日は、帰りが随分と遅かったわね」


「……驚きました。俺のことに関心があったとは」


「あはっ。興味関心なら、最初からあったわよ」


 東堂麗香が階段から降りてくると、俺の前に立ち、今まで見せたことがない、満面の笑みを見せる。


「ねえ、キスして」


「……はい?」


「1つ目の願い、決めたの。今ここでキスして」

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