第30話 スタインの過去
——今より十数年前、楽器の国にて——
「スタイン、もうすぐまたチャージ満タンになるんだって?また新しい主人の所に行っちゃうのかー」
ポコポコ、フワフワと浮いている大量のシャボン玉に囲まれた真ん中で、スタインとバリウスは足を大の字に広げ、リラックスして床に座っている。
「ああ、そうなんだよ、よく知ってるな。さすが情報通のバリウス!」
ニコッと笑うスタインの顔は、まだあどけない少年ぽさが残っていた。
そしてスタインのその笑顔は、オーロラ色で作られた建物に全く見劣りせず、さすが楽器の国で最もイケメンと言われるだけはあった。
「やっぱさー、ピアノは弾いてる人多いから、チャージ速度早いんだわ。でもさ、バリウスのヴァイオリンも、俺と同じくらいじゃね?バリウスもそろそろだろ、召喚されんの」
「うん、そうだよ。あともう数週間たてば、また人間世界へ、かな。スタインは、今度行ったら、何人目の主人になるの?」
「あー、えーと、3人目?か?だった気がする。俺たち王子として人間界にいけるのは、15歳からで、俺もバリウスも今18歳じゃん?人数なんて、まだまだこれからだろ」
「そっか。まあ、そうだよね。今度の主人の人も優しいといいね」
「まーなー。あ、そうだ、2番目の主人の人に教えてもらった、りんごうさぎ。今度、バリウスに作ってあげるな!」
「りんごうさぎ?なに?それ?ドルチェとか?」
「いやいや、違う違う。うさぎの形にしたフルーツだよ。あー、そっか、俺とバリウスは、前回に召喚された国が違ったんだっけか。ま、国が違えば食べ物も違うし、分からないよなー」
「そうですね。まあ、次に僕らが召喚されるときには、前回召喚された国には絶対行けない規則になっているので、逆にいえば次に召喚された国によっては、もしかしたらスタインもドルチェの奥深さに感銘を受けるかもしれないよ」
「ははっ。そうだな。まあ、だから、俺は次は日本て国で呼ばれることはないってことなんだよなー。あー、残念だなー」
「前から言ってたよね、スタイン。そんなに日本て国良かったの?」
「うん、良かった。たまたま主人が優しい人だったってのもあるかもしれないけど、人も気候も食べ物も、全てが俺にとっては居心地良かった。できたらまたあの国に召喚されたいなー」
「いつかはまたチャンスが来るよ」
「うん、そうだな…っと、そろそろマジでチャージやべーな。いつ召喚されてもいいように、俺準備するわ」
「分かった。そしたら僕ももう自分の部屋に帰るよ。またいつか、あとで」
「おう!」
立ち上がったスタインとバリウスは、互いの片手同士でタッチをした後、手を強く握り笑う。
バリウスが部屋から出ていった後、スタインは部屋中のシャボン玉を見つめる。
そのシャボン玉1つ1つそれぞ!の中に、ピアノを演奏している人がうつっている。
「次に俺が召喚されて行く所は、この無数のシャボン玉の中のうちのどれかかー…」
スタインはシャボン玉をゆっくり覗き込み中の人を見ていると、機械音が鳴り響く。
「お、チャージ満タンしたか」
スタインは服を整えると、部屋の中央に向かって歩いて行った。




