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楽器王子〜楽器の中に宿るは王子様!?〜  作者: めんだCoda
花蓮の過去

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第28話 召喚されたんじゃないのか?

「なっ…!バリウス、何考えてるんだよ!無理に決まってるだろ!だいたい、楽器の国にいる親父と、どうやって会話しろっていうんだ!?」


「そうだな、とりあえずスタインが列車の上にでも立って、存在アピールすればいいんじゃないかな」


「…はあ…!?上って…危ないじゃねーか。それに、存在アピールなんかしたら…」


 スタインは顔をしかめて、バリウスから視線を逸らす。


「したら、国王はもっとお怒りになる、と思っているんだろう?スタイン。だが、激しい怒りで、国王は再度稲妻を走らせるだろう。その稲妻の光と合わせて僕が魔法を使えば、おそらく乗客の目をくらませられるはずだ」


「…っ、それは…確かにそうかもしれないが…」


「国王のお怒りの件に関しては、脱してこちらに勝手に来てしまった君が悪い。隠れず、まずは顔を見せた方がいいと思う」


「……分かってるよ…」


 スタインとバリウスの会話を黙って聞いていた涼太だが、バリウスの話した内容を聞いて思わず口を開く。


「おい…なんだよ…?脱したとか、勝手に来たとか…、スタインは花蓮の演奏に導かれて召喚されたんだろう??…違うのか…?」


 涼太の真剣な表情に、スタインは苦しそうな表情を浮かべ、唇を噛み締め黙り込む。


「おい!スタイン!何か言えよ…!!」


 スタインの襟元を掴み、手に力をこめる涼太。

 すると、バリウスが涼太の肩にそっと手を置いた。


「涼太様、詳しいことは後ほどお話いたします。それよりも、今は魔法での花蓮様の治療を進めましょう」


「そう…だな…」


 バリウスの落ち着いた顔を見て、涼太はスタインから手を離し引き下がった。


「スタイン、準備はいいですか」


「ああ。列車の上に行って、親父に謝ってくるよ。その間、花蓮をよろしく頼む」


 スタインは抱えた花蓮を涼太に引き継ぐと、顔を引き締め窓の外を見つめる。

 外はまだ真っ暗で豪雨と共に、時折りゴロゴロと低く雷鳴が響いていた。


「うっし。いってくるわ!」


 嵐のせいで砕け散り割れた窓ガラスから身を出し、列車の上へとよじ登っていくスタイン。


「気をつけろよ!!」


 涼太が声をかけると、スタインが振り返り、ニッと笑う。


 雨で滑る列車を必死に掴みながら、やっと上へ登りきったスタイン。

 嵐により普段よりスピードを落としているとはいえ、走行し続ける列車にしがみついているのは、なかなかの重労働だ。


「ふう…。じゃー…いくか」


 スタインはバランスに気を付けながら、ゆっくりと列車の上で立ち上がると、じっと斜め上を見上げる。


 真っ黒な雲の中でゴロゴロと不気味に光っていた雷鳴が、スタインが立ち上がった途端、バリバリバリ!という轟音と共に、海に1つの稲妻を落とした。


「…ははっ、親父、最高に怒ってるな」


 稲妻に、思わずしゃがんだスタインだったが、ゆっくりと立ち上がり、再度上を見上げる。


 その間も、稲妻は時間を置くことなく、激しく落ちまくる。


「親父!勝手に抜け出して悪かった!!」


 スタインは真っ直ぐに上を見上げながら、声を張る。


「だけど、まだ願いが1つ残っている以上、俺は花蓮の元をまだ去るつもりはない!!だから——」


 そこまで話した途端、耳をつんざくほどのバリバリバリという雷鳴と共に、目の前が真っ白になるほどの光に包まれる。


「……イン!…タイン!」


 スタインは誰かに体をゆすられているのを感じ、ゆっくりと目を開ける。

 ポツポツと空から降り続く雨が、顔に当たり弾ける。


「スタイン!!」


 雨でびっしょり濡れたバリウスが、心配そうな顔で覗き込んでいた。


「スタイン!大丈夫ですか!?」


「ああー…どうだった…?うまくいったか…?」


「あぁ!スタインのおかげで、うまくいったよ。花蓮様の傷は治り、今は下でお茶を飲んでいるよ」


「そうか……良かった…」


 スタインはゆっくりと目を閉じた後、もう一度目を開けると、あの真っ暗な雲は消え失せ、空は綺麗な水色となっていた。細かい雨はまだパラついていたが、穏やかな晴天になっているのは確かだった。


「…親父は相当怒っていたはずだが、なんでこんな青空になってるんだ…?」


「さあ…僕にも国王の考えていることは分からないが、スタインが顔を見せて謝ったことで、少しは安堵というか、気持ちに区切りがついたんじゃないか」


「ははっ、あんな盛大な、俺を気絶させるほどの雷を落としておいて、安堵はないだろ」


「スタイン、2人で楽器の国に戻ったら、僕も一緒に国王の所へ行くから、そのときにまた国王に精一杯謝ろう」


「そうだな。そのときは、精一杯俺の援護をしろよ」


「はいはい」


 そう言って、スタインとバリウスは互いを見ながら笑い合った。

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