第27話 花蓮を救うための協力者
スタインは少し荒くなった呼吸音をなんとか抑え、花蓮に何も悟られまいと平静を装う。
そんなスタインに、涼太は静かに言葉を続ける。
「それだけじゃない。島の唯一の病院の医師がこれから出張らしい。だから、俺たちが夜に着いたところで、花蓮は医者に診てもらえない」
「は…?怪我人がいると、事前に連絡いってもか…!?」
「ああ、それでも無理らしい。もともと、のどかな観光地ということもあって、病院も1つしかない。それも町医者くらいの規模だ。大きい怪我や病気の患者はドクターヘリで本土へ運ぶため、医者もその1人以外いないらしい」
「……あのときと、何も変わってないんだな」
「あのとき…?スタイン、お前海生島にいたことがあるのか?」
涼太からの問いにスタインは一瞬沈黙し、自分の腕の中に抱き抱えられた花蓮を、節目がちで見つめる。
「…ある…あのときも、俺のせいだった…そして、今回も俺のせいだ。俺は……花蓮にとっては王子なんかじゃなく、ただの疫病神かもな」
「……?スタインお前、何のことを言ってるんだ…?疫病神?それに、花蓮と昔会ったことがあるのか…?」
「会ったことがあるどころじゃない、俺と花蓮は——」
「スタイン!!」
いつも紳士的で穏やかなバリウスが、珍しく声を荒げる。
「…スタイン、今はそんな悠長に話をしている場合ではないだろう。花蓮様の怪我をどうするか、それを決めないといけない」
「……ああ、分かってる…」
静かに見つめ合うスタインとバリウスに、涼太は困惑する。
すると、バリウスが涼太の前で跪き頭を下げた。
「涼太様、僕が涼太様に今から申しあげることは、従順関係を踏まえれば、大変失礼なことは重々承知しております。ですが…」
バリウスはゆっくりと顔をあげ、涼太を真っ直ぐに見つめる。
「花蓮様を助けるのが、今一番最優先されることと、僕は考えます」
「…なるほどな。花蓮の傷を治す、ということを俺の1つめの願いにして欲しいということだな」
「…はい。現状、花蓮様は意識もはっきりせず、また傷だらけの口でご自身で願うことは、困難かと思われます」
「分かった。それに関しては、俺もバリウスと同じ考えだ。大丈夫だ、花蓮の怪我の治療と回復に俺は願いを使ってくれ」
「はい、ありがとうございます」
「な……!おい、ちょっと待て!」
スタインが声を張り上げ、慌てた様子で周囲を見渡した後に、涼太とバリウスに向かって囁く。
「そうしてもらえるのはありがたいが、魔法をここで使うのか…?同じこの車両には、俺たち意外にざっと10人ほど人が乗っているんだぞ?見られたら、騒ぎになる」
確かに、他の乗客は花蓮の状況を、悲惨そうな目でチラチラ見ながら、心配そうな顔をしていた。
涼太もスタインと同じ考えで、どうしたらいいかと問うように、バリウスの方を振り返る。
「それについては、僕も考えていた。僕らの魔法が主人以外の人に見られてしまうのは、好ましくない。だが、それを解決する術は1つ…あると考えている。そして僕が考えている方法には、スタインの協力が必要だ」
「俺の協力?なんだ?俺らには、記憶消去の魔法は使えないぞ」
「分かっている。そして、スタイン以外にも、もう1人協力して欲しい方がいる」
「…おい…方って、お前まさか…」
「そうだ、我ら楽器の国の王、スタインのお父上だ」




