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パフェットvsアレックス

だいぶ間空いちゃいましたね⋯⋯。京都旅行とかに行ってたせいであまり執筆出来ませんでした。あとどうも気分が乗らず⋯⋯。次はもっと早く投稿できるようにします。

 人間軍は、混乱の最中にいた。当初圧倒的な戦力差で楽勝だと思っていた兵士が大半だった中で、いざ戦が始まってみれば突然巨大な手が現れて目の前で仲間達が握り潰され、半数が死亡。さらに右翼側では魔族の鬼が暴れ回り、今もなお被害が拡大していると伝令の兵が告げていた。


「おい、これ大丈夫なのか? まさか、負けるなんてこと⋯⋯」


「ば、馬鹿なこと言うなよ。俺たちには将軍がいるし、あの『異界の勇者』だって居るじゃねえか。負けるはずがねぇって!」


「でも、さっき誰かが『異界の勇者』が倒れているのを見たって聞いたぜ?」


「それ、本当かよ!? じゃあやっぱり俺たち⋯⋯」


 戦場に漂う嫌な空気に、ついつい弱気なことを口走ってしまう兵士たち。その中の1人の首が、突然音も立てずに飛んでいく。空に舞う仲間の首を見て口を開き呆然とする兵士たち。そんな彼らの視線の先には、鞘に剣を収めたばかりの『天剣将軍』、シャルル・アレックスその人が居た。


「う~ん、カッコイイこのボクの部下に、弱音を吐くような奴はいないはずだよね? お喋りしている暇があるなら、このボクを視線に焼き付けたらどうだい? そうすれば不安なんて吹っ飛ぶはずさ。だって、ボクはカッコイイから!!」


 ふっと格好つけて髪を掻き上げるアレックス。その姿はとてもさっき部下の首を問答無用ではねた人物とは思えない。しかし、アレックスのその言葉で、ネガティブなことを言う兵士はいなくなったのは確かだった。


「さ~て、じゃあそろそろ反撃といこうか。やられっぱなしはかっこわるいしね。⋯⋯君たち、準備はいいかい?」


「「もちろんデス、マスター」」


 アレックスの呼びかけに応える、無感情な声。アレックスの背後にいつの間にか控えていた彼女たちは、皆一様に下半身が魔族、上半身が人間という異形の姿をしていた。そして、下半身の魔族の種族こそ違えど、彼女たちの顔は皆一様に等しく、同じ顔をしていた。


「キメラ部隊、進軍だ! 他のモブたちも進軍開始!! 皆、このカッコイイボクに続けぇ!!」


 アレックスを先頭に、人間軍の左翼側に居た兵士たちが一斉に魔族軍に攻勢をしかける。対峙する魔族軍は、混乱していた人間軍とは違い迎撃する準備は万全であった。魔術による攻撃で人間軍の兵士たちの数を着実に減らしていく。


 しかし、アレックスとその後ろに控えるキメラ部隊を見た魔族軍に明らかに動揺が走る。その隙を逃さず、一瞬で前線に詰め寄り魔族の首をはねたアレックスは、さらに魔族を切ろうと剣を振り上げたところで⋯⋯その腕が空中で何かに絡まり動かなくなる。


「オレさまのファンに手を出すナンテ、お前悪い奴ダナ!! ぶっ殺ス!!」


 直後飛来した糸を手刀で切り裂いたアレックスは、手に絡まった糸を振り払い、声が聞こえた方へと視線を向ける。そして、そこに立つパフェットの姿を見たアレックスは驚きで目を見開く。


「⋯⋯わぁお。まさか、こんなところで『オリジナル』に出会えるなんてね。噂で聞いていたパフェット・スパイダーの外見からもしかしてとは思っていたけれど」


「何じろじろ見てんダ? 人間。まさか、オレさまに見惚れたカ? まあ、オレさまは可愛いからな!! 夢中になるのもしょうが無いナ!!」


「そんなまさか。ボクがボク以外に見惚れるなんてあり得ない。ところで、君に見せたいモノがあるんだ。ちょっと見てくれないかな? きっと気に入ると思うんだ」


 アレックスはニヤリと意味深な笑みを浮かべ、すっと横に移動する。その後ろに居るのは、もちろんアレックスが連れてきたキメラ部隊だ。その顔を見たパフェットは思わず「えっ!?」と驚きの声を上げる。なんと、キメラ部隊の顔は、パフェットの顔と全く同じだったのだ。


「驚いただろ? 彼女たちの顔は全て同じ人物のモノだ。この顔、君は一番よく知っているはずだよね? そう、この顔は君の顔さ。魔族の力を人間に利用できないかと考えたボクの父さんが、出来損ないだったボクの妹を実験第一号に用いた。その実験台一号には逃げられてしまったけれど、その時のデータを元に父さんはこのキメラ部隊を創り上げたのさ。これがどういうことか分かるかい? つまり⋯⋯」


「えい」


「ぶほぉっ!?」


 キメラ部隊について得意げにペラペラと語っていたアレックスの顔面に、パフェットは魔術をぶち込んだ。アレックスはその攻撃をもろにくらい、情けない声と共に吹き飛ばされ、盛大に鼻血を吹き散らした。


「お、お前ぇぇぇ!? 今すっごく大事な話してる途中だろ!! 普通攻撃するか!? あり得ないだろ!!」


「お前、話ナガイ。オレさま飽きタ。確かにオレさまと同じ顔がいっぱいなのは驚いたケレド、だからどうシタって感じダシ。それに、オレさまは過去なんかより今が大事ダカラナ!!」


 鼻を手で抑えながら、怒りの形相で喚き散らすアレックス。対するパフェットはそんなアレックスの様子を全く気にかけることもなく、既にキメラ部隊に攻撃の手を向けていた。


 下半身が馬の魔族⋯⋯ケンタウロス族のキメラが強烈な蹴りを放ってきたのを寸前でかわし、すれ違いざまに糸を絡める。そして、上空から襲いかかってきた下半身が鳥のキメラに糸で拘束した馬のキメラを投げつける。空中でぶつかった二体をそのまま鋼鉄の糸で貫き、静かに息の根を止めた。


 また、パフェットは自身の周囲に糸を張り巡らせ、アレックスとキメラ部隊をその中に閉じ込める。こうすることで相手の動きを阻害すると同時に、部下に戦闘の余波が飛ばないようにという配慮からであった。パフェットは自分の部下を『親衛隊』と呼んで可愛がるくらい部下思いであり、部下もまたパフェットのことを慕っている。それ故に、一瞬でパフェットの意図を察した部下達は、周りに群がる弓兵などを積極的に攻撃していった。


「そっちが剣を使うナラ、こっちも使ってミルカ!!」


 部下が周りで暴れている様子を満足げに見つつ、パフェットはにいっといたずらっぽく笑う。そして、蜘蛛の下半身の形を変化させ、2本足で立つ人間の身体に近い姿に変化した。蜘蛛の名残である6本の腕には、魔術で生成した剣が握られている。


「キャハハハハ!!」


 前方に糸を射出したパフェットは、高速で糸を巻き上げその勢いで加速、回転も加えて6本の剣ですれ違いざまにキメラ部隊を切り刻む。久しぶりの戦闘スタイルが楽しいのか、さっきからパフェットの顔からは笑みが絶えない。


「クソぉ!! このボクの顔に傷を付けて、ただで済むと思うな!! この出来損ないがぁぁぁ!!」


 そんなパフェットと対称的なのがアレックスだ。自慢の顔を傷つけられた上、大事な実験体であるキメラ部隊がいとも容易く倒されていることに激怒したアレックスは、怒りで顔を歪ませながらパフェットに斬りかかった。


「うおっ!?」


「ははは、ボクの剣に切れないものはない!!」


 パフェットの正面に立ち、横薙ぎに剣を振るうアレックス。その一撃でパフェットの剣は折れ、アレックスの表情に余裕が戻る。さらにアレックスは返す刃で目にも止まらぬ一閃。パフェットの腕を2本切り落とすことに成功した。


 慌てて糸を吐きながら後方に跳びずさるパフェット。アレックスはあえて追撃は行わず、剣を肩に担いで余裕の態度を見せる。


「ふふふ、どうだい? これで分かっただろ、ボクの実力が。ボクが与えられた恩恵『天剣』は、あらゆるモノを切り裂くことの出来る力なのさ。世界一かっこいいボクに相応しい、かっこよくて強い力だと思わないかい?」


「うーん? 確かに強いとは思うケレド、世界一かっこいいのはお前なんかじゃないゾ? シルバの方が断然カッコイイ!!」


「な、なんだと!? ボクよりかっこいい奴なんているはずないだろ!! そいつは一体どんな奴なんだ!?」


 自分のことでも無いのに、得意げに無い胸を張るパフェット。そして自分のかっこよさを否定されたアレックスは、動揺しつつパフェットに問いかける。


「シルバはシルバだ!! オレさまと同じ四天王で、最高に優しくてカッコイイゴブリンだゾ!!」


「なん⋯⋯だと? このボクが、ゴブリンなんかよりもかっこよくないって言いたいのかお前は!! 許すまじ⋯⋯! 許すまじ許すまじ許すまじぃぃぃ!!!」


 怒りの限界を超えたアレックスは、鼻息荒くパフェットに斬りかかる。しかし、怒りで精細を欠いた攻撃など、パフェットにとっては文字通り格好の餌食であった。


「こ、これは⋯⋯!? いつの間に網を!?」


「お前と無駄な会話してる間ダナ。お前、強いくせに隙多スギ。あと思考パターン分かりやすくて超チョロいナ」


 透明な糸で出来た網に絡まり身動きの取れないアレックスに、パフェットはゆっくりと近づいていく。アレックスは、近づいてくるパフェットが今から獲物をどう料理してやろうかと見定めているように見えた。その様子に恐怖を覚えたアレックスは、慌ててキメラ部隊に助けを求める。


「お、おい!! 何ぼーっとしてるんだキメラ部隊!! ボクを助けろ!!」


「ソレは無理なんじゃ無いカ? だって、さっき洗脳魔術をかけておいたからナ。ヴィオレッタほどじゃ無いけれど、オレさまも魔術の平行発動は得意なんダ」


 えっへん! とパフェットがまた胸を張ったところで、アレックスはようやく自分が危機的な状況にあることを理解したようだ。恥もプライドもかなぐり捨てて、慌ててパフェットに命乞いを始めた。


「ぼ、ボクはこんなところで死んでいい人間じゃない!! そうだ!! お前にボクの財宝をやるよ!! だから助けてくれ!!」


「オレさまはファンの声援があればそれで十分ダ」


「じゃ、じゃあボクの地位をあげるよ!!」


「オレさま、魔王さま以外の下につく気はないナ」


「部下は全員殺してくれて構わない!! だから、ボクの命だけはぁ!!」


「もちろん部下も皆殺しダ。ひとりぼっちじゃないから安心シロ」


 パフェットに命乞いが通じないことを悟ったアレックスは、今度はパフェットの情に訴えることにした。相手に泣き落としが通じるとはとても思えなかったが、追い詰められたアレックスには他に方法は無かったのだ。


「ぼ、ボクはお前の実の兄だぞ!? ボクの父はもう死んだ。だからお前にとってボクは唯一の肉親だ!! お前は家族を殺すって言うのか!?」


「オレさまがお前の妹って話、そもそも信じられないンだけれどナ。だってお前可愛くないジャン」


「本当だ!! 信じてくれよぉ!! このボクのかっこよさに免じて、どうか!!」


「ウーン⋯⋯。マ、信じてもいいかもナ」


「本当か!? じゃあ、ボクを助けて⋯⋯」


「だからといって、殺さない理由はないケレド。第一、そっちが勝手にオレさまのこと捨てたくせに助けろとか、身勝手過ぎないカ? その話が本当なら、ますます殺意しか湧かないナ」


「まままま、待ってくれって!! 悪かった、悪かったからぁぁぁ!! 命だけは助けてくれよぉぉぉ!!」


「ソレじゃあ⋯⋯」


「嫌だぁぁぁ!! 死にたくないぃぃぃぃ!!!!」


「バイバイ、お兄ちゃん(・・・・・)


 一切の躊躇なく振り下ろされた剣は、アレックスの首をあっさりと切り落とした。地面に転がるアレックスの顔は、鼻水と涙に塗れ、とてもじゃないがかっこよさとはほど遠い表情であったことは言うまでもないだろう。


 

 こうして、三代将軍の1人、シャルル・アレックスはあっさりとパフェット・スパイダーに破れた。その結果、戦力を欠いた人間軍はますます窮地に立たされることとなるのであった。

 


 

次回、ラブ・ハートvsヴィオレッタです。

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