幕間2 熱の言い訳
幕間2
9話目の温泉ドボン!その後です。
あのシーンの後、2人がどうしてたのか、気になって気になって仕方ないので書きました!
ルリア視点です☆
湯けむりがもうもうと立ちのぼる場所から、すこし離れた場所。
地中より湧き出た湯が沢の水と混ざりこみ、暖かい湯溜まりとなっている。
大きな岩石に囲まれ、今はテオと二人きりだ。
あんなにむせび泣いてしまったから、なんだか照れくさくて顔を見る事ができない。
そんな静穏に包まれた時間を動かすかのように、人の足音が近づいてくる。
気配の主がこちらに辿り着くよりも先に、テオは濡れたシャツのまま立ち上がった。
「いいから、ルリアはここにいろ。そのまま湯につかっていろ」
そんな風に言われ、ルリアは頷くしかできなかった。
(テオ、体……透けてみえてるよ……)
「殿下、こちらにいらっしゃいましたか。」
「ああ、ここで体を清めている。着替えは2着分あるか?ここで受け取る」
テオは、ルリアへの視線の動線を遮るように立ちはだかり着替えを受け取る。
「では、殿下、我々も念のため体を清めて参ります」
その騎士は、最低限の報告をし、その場を離れていった。
テオは振り返ると、ルリアに着替えを手渡し、また背中を向けた。
「俺は、見ないからさっさと着替えるんだ。風邪をひいたら面倒だろ?」
ぶっきらぼうな言葉じりとは裏腹に、声色は陽だまりのように柔らかだ。
ルリアもテオに背を向け、肌に張り付いた濡れた下着を脱ぎ、側にある岩に引っかけた。
(早く乾くといいけど……。)
テオから手渡された、真新しいシャツに袖を通す。一瞬、テオの匂いがふわっと鼻を掠めた気がしてドキドキする。
男性用のシャツは大きく、小柄なルリアがそれを纏うと膝上まで隠れた。
先程の匂いとあいまって、大きすぎるシャツは、テオに抱きしめられているように思わせる。それを考えたら、体の奥が熱くなった。
「テオ、着替えたよ。テオも着替えて」
振り向いたテオは、碧色の瞳を一瞬ゆらがせ、ルリアのもとへ近づくと、高貴な生まれの王子であることを忘れたかのように自然に片膝をつけ、跪き、ルリアの袖口に手をかけた。
「これじゃあ動きにくいだろ?」
そう言いながら、ルリアの腕を隠していた袖口を丁寧にゆっくりと捲り上げていく――
触れる指先のかすかな震えに気づき、ルリアは言葉にできない感情に包まれた。
「テオ、耳、赤いよ。」
「……俺は熱い湯に弱いんだよ。」
「テオ、ありがとう」
「……おまえが無事で良かったよ」
「うん。」
たどたどしく紡がれた二人だけの時間も、優しくほどけていく。
テオはルリアに背を向けると、手早く新しい衣服へと着替え始めた。濡れたシャツを脱ぎ捨てる無駄のない動作や、男性らしい広い背中に、ルリアはまた少し胸が熱くなる。
テオが最後のボタンを留め終えた、まさにその時。
岩の向こうから「殿下、お待たせいたしました。体も清まり、天幕の方も整いました」と騎士たちの声が響いた。
「ああ、今行く」
テオは応えながらすっと立ち上がり、騎士らしい凛とした表情に戻る。だけど、ルリアに向ける碧色の瞳だけは、さきほどと変わらない陽だまりのような暖かさを宿したままだった。




