3 資本について 4 モノの見直し・片付けの本質
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投資のやり方は前節の通りで、極めてシンプルだ。
とはいえ、やり方を把握したと同時に、君はこう思ったかもしれない。余剰資金はどうやって生み出せばいいのか。余剰であるかどうか、どう判断すればいいのか、と。
その点について触れていこう。
ふたつ前の節では、資産形成における働き方の話をした。そこでは得られる資産、資金について、長期的視点で獲得方法を考えた。
一方、投資の継続可能性の明暗は、日々の生活の中、つまり短期的行動の連続から生じてくる。それゆえ、日常生活でのお金との付き合い方、使い方について、私の考えを伝えたい。
私が思うに、大切なことは二つ。見える化すること、足るを知ること。
君の普段の生活では、月単位で何円、年単位で何円の固定費、変動費がかかっているか、正確に計算したことがあるだろうか?
私は恥ずかしながら、お金のことを真剣に考え始めたのは最近、つみたてNISAが始まる前くらいで、それ以前は、いわゆる家計簿を真面目につけたことがなかった。そしていざつけてみると、月額、年額で思った以上の固定費があり、それに気付かなかったためか、変動費も相当あると分かった。
ここでいう固定費とは、確実に一定額ないし、ほぼ一定の額が必要なもの全てを指す。
例を挙げよう。住宅ローン、保険、通信費、娯楽用サブスクリプション、ガソリン代、固定資産税、何かしらの会費、歯科定期受診費、ビタミン剤、洗剤の類・・・等々、挙げればキリがない。
とにかく、定期的に毎月ないし毎年、確実に銀行口座から引き落とされているもの、支払っているもの、クレジットカードの明細に計上されているものを固定費とする。
変動費は、固定費以外の全てになる。外食の回数等によって増減のある食費を、自炊分を固定費、外食分を変動費にする、あるいは全てで変動費にする、などの細かな塩梅は君が決めていい。毎年確実にこの時期には何万円までの旅行をする、といった場合、それは固定費でいいだろう。
変動費については、固定費を算出した後、直近1年でいいので、給与との差から割り出してみよう。
いずれにせよ、一度書き出してみないと話にならないので、ExcelやNumbersを開いて、この文章から離れて手を動かすことだ。
書き出し尽くすまで、次を読み進めるべきではない。
この作業はとても、とっても疲れるだろうが、仮に丸一日以上かけてでもこなすべき、君自身のために必要なことだ。
今やらないと、絶対に後でもやらない。
どうだろう? 毎月、毎年の固定費の合計、毎月の大まかな変動費が見える化できただろうか?
できたなら、次の説明に入ろう。
生活に大切なこと、もっと広く言及するなら君の人生に大切な考えの一つとして、足るを知ることを覚えてほしい。
固定費、変動費を書き出しながら、項目によっては、本当に必要かどうかも同時に考えたのではないだろうか? 少なからず、これは要らないかも、と思ったモノがあるのでは? 役割の被っているモノすらあったのでは? しかし実際、君はそれにお金をかけてきた。
お金をかけるべきか否かを、君の中ではっきり区別できれば話は簡単だが、中々難しい。
なぜ難しいか。それは端的に言うなら、君が君を測る物差しを君の中に設定していないから。真の意味で君の夢のため、つまり等身大の君自身を正しく捉え、理想の君との差異を埋めるための行動が、できていないからだ。
視点をずらして言い換えると、君が意識的にも無意識的にも持っている、他人と比較してしまう気持ちが、君とモノとの適切な距離を曖昧にさせている。
君の魅力は、君が理想の君に近付くにつれ、次第に君の内側から体現されるものであって、君が所有している”商品”と言い換え可能なモノによって測るべきではない。君は君自身のために生きているのであり、そうであるなら、必要十分な生活水準および、その生活に必要なモノは必然的に定まる。
もっと分かりやすく言うなら、今現在だけの君に対する他者の評価、そのためにかけるお金は、全て見栄の範疇に収まり、ほとんど無駄だ。
加えて、見栄には際限がなく、そして他のモノとの釣り合いという潜在的な圧力をも孕んでいるために、一度水準を上げ始めると、たとえ一つのモノからでも、君は雪だるま式にモノに資産を注ぎ込み始めることになる。ちょっと高いけれど頑張って買ったネックレスに、持っている服が釣り合わない気がして、服も、さらには靴やバッグもランクを上げていく、といったふうに。
実は私の説明は、暗に一つの生活スタイルの提案でもある。ミニマリズムのことだ。
なんでもかんでもモノ(有形無形を問わず)を無くせと言いたい訳ではない。しかし、足るを知り、夢に向かう等身大の君自身に必要なモノだけを追求できたなら、自然と生活にはミニマリズム的様式が反映されているだろう。
私はお金のことを考え始めたあたりから、それ以前はその日暮らしと言える即物的感覚で生きていたことに気付き、同時に、将来への見通しの甘さ、過去の受動的な態度に対する後悔の念を覚えた。そして家計の整理の傍ら、必要無さそうなモノを少しずつ手放し始めると、等身大の自分にとって必要なモノとそうでないモノが、段々理解できるようになった。
モノが減ったことで、空間が広くなり、モノの選択の時間や手間が減り、より見える化は加速した。ミニマリストと言えるほどではないけれど、必要十分かつ私にとって真に有益なものを選んでいく感覚を、生活にかなり取り込めたように思う。
少し話を逸らすが、モノの見直し(捨て活)と、片付けについて、ここで言及しておきたい。
どういう基準でモノを手放せばいいのか、そして、片付けの本質とは何か、についてだ。
普段、君の住環境は、君の主観で片付いているだろうか?
普段何気なく使っているもの、特定の用事や季節ごとに、たまに使うもの。
モノにも色々あるが、それらひとつひとつと真剣に向き合ったことがあるだろうか?
君に必要でないものは手放そう、と書いたが、具体的には次のことに着目すればいい。
まず、重複しているものは基本的に一つでいい。キッチンや文房具では特に、お気に入りのひとつだけで足りるモノが重なりがちだ。
次に、一年使っていないなら、さすがに要らない。もし手放した後、やっぱり必要になったら、反省してその時に買えばいいと割り切ろう。手放したという経験の方が、買い直しの費用よりもメリットが大きい。
それから、収納用品をむやみに増やさないこと。モノを減らし始めると気づくだろうが、最終的には、収納用品の処分に一番困ることになる。
迷うならとりあえず一時保留でもいいが、いずれはモノの選別にも慣れて、迷う程度のものは大体不要だと気づける。
モノが減ったなら、それだけ片付けのハードルも低くなる。
そしてその片付けの本質は、モノが本来あるべき場所にあること、これに尽きる。
手元に残ったそのお気に入りに、定位置をあげよう。逆に言えば、片付かないのは、すべてのモノに対して”いつもここ”という指定がないからだ。
だから、片付けをするときは、漠然と”部屋全体”や”家全体”を捉えるのではなく、目の前にあるまさに”ソレ”が、本来どこにあるべきかを考えなければならない。
ひとつひとつのモノと真剣に向き合う作業の積み重ねが、君と、総体としてのモノとの距離を、改めてはっきりさせる機会となり、次第に君の住環境は整っていくだろう。
モノの居場所を作り、モノに居場所を遵守させる作業を、整理整頓と言う。
捨て活、片付けのアドバイスをいくつか加えておく。
ひとつ。捨てることより、何を残すかに意識を向けた方が、作業は捗るし、気持ちも楽だ。
ひとつ。モノはそれが内包する君の過去を呼び起こし、時に、正しく未来へと向かう足枷になると意識しよう(サンクコスト効果)。
ひとつ。毎日一個でいいから、できるだけ決まった時間に、目につくものから手に取って”ソレ”の要不要、居場所を考えること。捨て活、片付けは、習慣化してしまえば勝ちだ。
最終的には、お気に入りのものだけが、いつもあるべき場所にある、そういう状態になっていく(ただし災害時の備蓄等、特定の用途のために必要な例外もある)。
その状態では、片付けの手間も時間も減り、掃き掃除や拭き掃除が簡単になり、住環境の快適さが保ちやすくなる。
話を戻そう。
足るを知り、見える化する。それにより生じた、等身大の君に不要なモノ全てに相当するお金が、すなわち余剰資金のタネである。
余剰資金と判断するタイミングについては、いわゆる生活防衛資金について一言説明が必要になる。
大きい出費の際は、基本的に投資信託を必要時に必要なだけ切り崩す方針でよいが、即時的に必要になりうる現金の確保分を、生活防衛資金という。怪我や病気で一時的に働けなくなった時などのためのお金である。
生活費の半年から一年分とされることが多いようだが、正直に言ってそこまで必要か疑問がある。傷病手当金等の社会保障の存在を考えると、個人的には大型家電の買い替え費程度から、生活費2,3ヶ月分でよいと思う。
一般的な月給制を想定して書くが、給与が振り込まれたら、生活防衛資金と、次の給与振込前に確実に引き落とされる額(おそらく現金を使う機会は殆ど無いだろうから、クレジットカードの利用状況とほぼ一致するはず)を残す。このタイミングでの残額が毎月の余剰資金であり、即座に投資信託に回してよい。むしろ回そう。
いずれにせよ、余剰資金の捻出には、前提として固定費と変動費への十分な理解が必要であることは、言うまでもない。
家計の見直しとそれに付随するモノ(有形無形を問わず)の見直し(捨て活)及び片付けは、非常に困難な作業だけれど、君を大きく躍進させる第一歩になると、確約する。




