5 君の形 4 感情のマネジメント
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情報、情報源との適切な距離の測り方は、人間関係のそれと似ている。違うとすれば、前者は君の自発的な行動のみで決められるが、後者は相手側も君に対して同じことをしている点だ。
人間関係の構築は、関係する人物の数が増せばそれだけ複雑になるし、面倒の種を生む。
人々の複雑怪奇な関わりの中で様々な負荷が君にのしかかり、時にはいつの間にか君自身をうまく保てなくなることもあるだろう。
そうならないために、そして、君が等身大の君を正しく捉え、ありのままの君を肯定して夢に向かわせることができるよう、この節では精神を安定させる方法について考えたい。
精神の安定、その逆の最たる感情は怒りだろう。不安や悲しみも精神の不安定さを生じるが、以降の考え方はそれら感情にも転用可能なため、ひとまずこの場では怒りに注目してみる。
怒りは君の生活を、人生を狂わせる。当然、日常において怒りは少ないに越したことはない。どうすれば、君は怒りを減らせるだろう? コントロールできるだろう?
アンガーマネジメントという方法論を知っているだろうか。その手法の要点を私なりに抽出し、別の知見を加えて考察しつつ、提示したい。
アンガーマネジメントを書籍等で学ぶと、その実践にはいくつもの手法を用いることが提案されるが、本質的に意識すべきは次の9点に纏められると考える。
まず、①怒りが湧いた瞬間、グッと堪え、一呼吸おいて考える時間を持つ。
次に怒りを誘発した事柄について、②事実と君の想像を分け、事実のみに注目する。③君の裁量、行動で変えられる問題か否か判断する。④君が相手に対して有する権利と、君の相手に対する要求を区別する。⑤その事柄にどう対応すべきか、具体的な言葉を使い検討する。⑥自分や相手の、性格や性質に言及しない。
余裕があれば②-⑥の思考と並行して、あるいは怒りの後で一段落したら、⑦怒りをレベル付けし、どんな怒りか言葉で表現する。⑧怒りを後押しした要素を考える。
これらの前提として、日頃から、⑨君が社会に対して無意識に適応しているルールは、あくまで君のルールであり、他者には他者のルールがあると受容する。
この9点だ。
それぞれに対して、もう少し説明を加えよう。
①怒りが湧いた瞬間、グッと堪え、一呼吸おいて考える時間を持つ。
怒りの沸点をなんとかやり過ごし、理性が表に立つまで4-6秒とされている。反射的に声を荒げたり手を出したくなる衝動を抑えるのは困難を極めるだろうが、そういった時に即座に実行できる、特定の動作やイメージを持っておくといい。
強く目を瞑る、手を握る、視点をぼかす、真っ白な空間をイメージするなどして、心の中で6秒数えよう。衝動的な反応(声を荒げる、手をあげるなど)は必ず後悔に繋がる。
②事実と君の想像を分け、事実のみに注目する。
言葉にせよ、状況にせよ、真実は一つであって、解釈を挟むと事態は複雑になる。
トゲのある言い方をされた、と君が感じたとして、言葉になった文章は真実であるが、言い方にトゲがあるかどうかは君の想像ではないだろうか? 相手は他のことに気を取られていたり、体調が悪かったのかもしれない。
③君の裁量、行動で変えられる問題か否か判断する。
君が動いても変えられない、大して変わらないことなら、関わるのは損だ。
例えば、公共の場で、見知らぬ人のポイ捨てや、電車内での大声での電話といった、ルール違反と思える行動に怒りを覚えたとしよう。君がすべきことは、その場から離れること。
君が関わって改善される問題でも、君が労力を割くべき問題でもないと捨て置いて諦めよう。それらはきっと社会全体といった、君の手に余る大きな問題の一部であり、君の善を浪費する場面ではない。
物理的に距離を置けないなら、心の距離を最大化しよう。
④君が相手に対して有する権利と、君の相手に対する要求を区別する。
君が相手に対して、普遍的に有している権利を、君は把握できているだろうか? 普遍的にとは、相手も同様に、その権利を君が相手に対して有していると認識している、という意味だ。
そこに該当しない君の主張は、全て君の欲求になり、相手が応じてくれるとは限らない。
口に出すかどうかはともかく、この二つは明確に区別しなければならない。
⑤その事柄にどう対応すべきか、具体的な言葉を使い検討する。
怒りを誘発した事柄がなんであれ、それが既に生じたことは受け入れるしかない。であれば、君が考えるべきは次にすべきことのはずだ。
原因の追求も必要だが、それは落ち着いた後にしよう。「なんでもっと早く言わなかったの?」と言っても事態は改善しない。
そして、問題を解決するためには、具体的な数字を用いて、あるいは具体的な行動の決定により、通過すべき直近の目標を設定しよう。曖昧な設定は、未来の怒りの種になりうる。
⑥自分や相手の、性格や性質に言及しない。
原因の追求と重なる部分があるが、怒りの場面では、生じた事柄それ事態に注目すべきだ。君あるいは相手の性格がどうだから、とその場で言及しても、やはり事態は改善しない。
相手の性格、性質への言及は、良好なコミュニケーションと相反する。
また、君自身の性格、性質に向き合い始めると、君は過去を呪い未来を悲観する際限のない負のループに嵌ってしまう。
繰り返すが、怒りの場面で対応すべきは、今まさに問題となっている、実際に生じた、事実としての現象それ自体および、その解決法の検討である。
⑦怒りをレベル付けし、どんな怒りか言葉で表現する。
その怒りはどの程度の強さで、どんな質のものだろう? 10段階で9の煮えたぎるような、10段階で3のじんわりと染みるような、10段階で5のチクチク刺すような・・・。
表現を繰り返すことで、君はどういった事柄に、どういう怒りをどの程度感じるか、傾向が把握できる。そして、怒りの瞬間にそれができるようになれば、無意識かつ不必要に怒りの度合いを高める可能性を減らせる。
逆に、全ての怒りを”なんかムカつく”としか表現できないと、君の怒りは画一化されて、マネジメントできなくなる。
⑧怒りを後押しした要素を考える。
怒りの瞬間には、怒りそのものだけが君の内面を満たして感じられるかもしれない。
けれど大抵の場合、その背景には、別の問題や気掛かり、思い、悩み、感情といった要素の堆積がある。そして、実際にはそれら背景の要素こそが、君にとって真に解決すべき事柄であることはよくある。
怒りに身を任せず、本当に向き合うべきそれら内的な要素を探し出し、それらへの対処を考えよう。
⑨君が社会に対して無意識に適応しているルールは、あくまで君のルールであり、他者には他者のルールがあると受容する。
これまでの人生で、君は十分思い知ったことと思う。誰も彼も、大なり小なり自分ルールを持っていると。
けれど怒りの場面では、特に普段接しているが故に内面を分かったつもりになっている相手では尚更、そのことを忘れてしまう。そして、君自身もルールを持っている、ということも。
⑦でも書いたが、日頃の怒りの場面を参考に、君の怒りが誘発される場面での、君のルールの適用状況を整理しよう。そして、それが他者、特定の誰かにとってはどうか、その人のルールは何かも推察してみよう。
その相手と接する際の、よい指標が増やせることだろう。
最後に一言添えておくけれど、怒りが湧くこと自体は問題ではない。怒りが湧いた時、君に不利益になる対応をしてしまうことが問題なのだ。怒りが湧いたこと自体を、自責する必要はない。
冒頭で触れたように、怒りに注目して、そのマネジメントの心得を書いてきた。
しかし実は、これらの考え方は他の感情にも大なり小なり適応可能である。哀しみ、喜び、憂い、虚ろさ、高揚、安心・・・。日頃からそれら感情と向き合う時間を持つことで、君の精神は数段高いレベルでの安定を得られるだろう。
恥ずかしながら私は、これを書いている時点では手法を知った段階に過ぎない。鋭意実行、内省中である。
君が読む頃には成果が現れていることを願ってやまない。




