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4 家庭をもつ 3 子供との関わり方

4-3


 君のライフプランは、子供の誕生によって大幅な修正を必要とするかもしれない。

 私は君の子育てを手伝うつもりで、そのためにも資産形成に励み始めたと既に伝えたが、そうは言っても君の子供は私の子供ではないし、親の苦労というものを君は君の感性を通して感じることになる。


 子供は物理的に手がかかり、君の想像を超える奔放さで日々を生き、そして急速な精神の発達を、君や周りの人間との関係性の中で経験する。


 正直に言って、君たち姉妹を育てる中で、私は多くの苦痛を経験してきた。

 君たちがそれぞれに持つ、聡明さ、自意識の強さ、独占欲、執着心、好奇心、独創性、ADHD的要素、ASD的要素、察しの良さ、姑息さ、身体的成長の早さと遅さ、思慮深さ、素直さ、器用さ・・・そういったものが私たち親の感情、エゴ、金銭的状況、仕事、心身の脆さ、時間のなさと複雑に絡まって、絶妙に噛み合わない不和を生じていたように思う。少なくともこれを書いている時点までを振り返れば。

 元来の私の性質として、それとなく自覚していたものの、私自身が子供という存在が苦手、はっきり言うなら好きでないという側面を、君たちに少なからず当てはめてしまったことも一因であり、申し訳ないし、不甲斐ないことだ。

 ただ自己弁護するようだが、私たち親は、もっと言えば君たちの母親がその主体ではあるが、君たちとの良好な関係のために腐心してきた。それが実っているかどうか、現時点で私には判断しかねるけれど。


 とはいえこれまでの試行錯誤、経験から、おそらく子育てにプラスにはたらくであろう内容で、アドバイスできることもある。


 まず、子供が言葉を覚え始めてから、小学校入学頃までのことから書いていく。

 何はともあれ念頭に置いてほしいのは、子供との接し方は肯定を基本として、無意識の否定をしないよう注意しなければならない、ということ。

 肯定的な表現で言葉をかけられ、接されることで、子供は自分自身という存在を肯定的に認識し、それは自信や精神的な安定に繋がる。

 難しいことに、一見肯定的であったり、肯定でも否定でもなさそうな声かけが、否定的な要素を含みうる。具体的には、子供がしたことに対して、別の提案をする、疑問を投げかけるといった反応は、子供の表現に対する否定の意味が暗に含まれるため、否定と殆ど同義であると認識しておこう。


 逆に、積極的にやってほしいのは、子供の言葉を繰り返すこと、具体的に褒めること、そして一緒にいて楽しいと伝わる表情でいること。

 言葉を繰り返すと、子供は君が話を聞いてくれていると思える。具体的に褒めることで、どういう言動が望ましいか、自然と学習する。そして目は口ほどに物を言うとあるように、子供は言葉だけから君の心境を探っているわけではない。

 特に、具体的な言葉を使う癖は、褒める時だけでなく指示をする時にも有用だから、早めに身につけてもらいたい。

 例えば「ちゃんと座りなさい」と伝えたとして、そもそも子供は何が”ちゃんと”なのかわからない。大人ですら「この資料ちゃんと纏めておいて」と言われたら困るだろう。

 ちゃんと、もっと、ちょうど、ちょっと、適当に、こういった”程度”を表す言葉は、つい口にしてしまいがちだ。

 具体的に。そして、一気に伝えると混乱しかねないから、一つずつ伝えること。「椅子にお尻をつけて」「まっすぐ机の方を向いて」「背中を伸ばして」「両手を机の上に出して」


 子供が好ましくない言動をした時には、どうすればいいだろう?

 子供が危険に晒されていない状況であれば、それは無視でいい。むしろ、明確に無視すべきですらある。

 子供は君や周りの大人の反応があれば、なんだって嬉しいと思ってしまう。なぜならそれは、自分に興味があると解釈できるから。

 好ましくない言動に反応してしまうと、子供はそれが君の気を引ける、手っ取り早く簡単な方法だと学習してしまう。


 どんなに些細なことでもいいから、良いことだけに着目して、すかさず具体的に褒める。

 悪いこと、好ましくないことは無視する。

 それを繰り返すうちに、子供は良い言動を選択的に学習するサイクルに入れる。


 ついでに言うなら、どんなに苛立っても、君は大人で、子供は子供なのだから、大声を出したり、手をあげてしまったら君の負けだ。

 後の節で感情のマネジメントについて書いているが、子供相手の場合、君は子供の成長に対して多大な責任を負っているために、自身の感情の適正さをあっさり見失いかねない。


 肯定的かつ具体的な言葉で伝え、良いところは具体的に褒め、好ましくない言動に反応せず、明るい表情で過ごす。

 子供の望ましい言動を、どんどん強化していこう。

 次第に子供は自己肯定感が高まり、自信や積極性を身につけられるだろう。

 それはその子が大きくなった時、その子の夢や可能性を広げることや、次の章で触れる”箱庭づくり”にも繋がっていく。


 補足的に付け加えるが、子供との関わりに困難を覚えるようであれば、小児精神科や小児も対象の心療内科を受診し、話を聞いてもらったり、プログラムを紹介してもらうのも選択肢の一つになる。

 実際、私と妻は君たちを連れて受診し、ケアプログラムを受けた。十分改善されたかはともかく、子育ての方向性が示されたことで精神的な負担が減り、気を付けるべき点を知ったことで、適切な接し方を意識できるようになった(十分に実践できるようになった、とまでは言えないが)。


 少し時間を進めよう。


 子供はどんどん世界に適応していくが、時に、世界との繋がりの速度が早すぎて、心配になるかもしれない。時期としては、小学生になる前後からしばらくの間、そうなりがちだ。

 世の中に広まって日が浅く、情報密度が高すぎ、そして世界と繋がりすぎる、そういった技術や情報源、システム、デバイスに子供が手を伸ばし、夢中になり始めると、親はそれらを取り上げたくなるものだ。

 例えばオンラインゲーム、スマートフォン(2025年時点では携帯端末の覇権)。

 子供からこういったモノを引き剥がしたい衝動は、おそらく、君が十分にソレを理解していないため、あるいは、子供がソレから得る情報に耐えられないのではと不安に思うために生じる。

 子供が君の知らないところで何か良くない事柄と繋がって、いつの間にか深みに嵌るという、悪い想像も膨らんでいるかもしれない。


 不必要に不安を覚えるべきではない。むしろ君が取るべき行動は、十分にソレを理解し、率先して子供達に世界との繋がり方、ソレの使い方を教えること、一緒にやってあげることだ。

 そうすれば、子供はソレを介した世界との距離感を君を通して学べるし、君はある程度、子供とソレの関係性を制御できる。


 ところで君の心配の背景には、君が子供に対して、君自身の子供時代を重ねすぎている可能性はないだろうか?

 君が大人になる頃に初めて手にしたモノ、あるいはまだ手にしたことがないモノを、子供がこんなにも幼いうちから触っている、そのことに違和感を感じるとしたら、一度冷静になった方がいい。

 急激にあらゆる技術が発展している近現代において、新しいモノと子供の距離に対する親の憂いは常に存在してきた。例えば私と君たちで言えばスマートフォン、君たちの祖父母と私で言えばパソコンやガラケー、君たちの曽祖父母と祖父母で言えば電話やポケベルだろうか? それ以前の時代でも、情報端末に限らずこういった関係は存在した。そして未来では、全く想像もつかないような何かがソレになっているはずだ。

 君の子供は君ではない。子供が過ごしているのは君の子供時代ではなく、変化し続けている”まさに今”であって、君はそのまさに今という社会背景を含めて、子供の行動、成長を捉えないといけない。


 ついでに言うなら、自分が歩んできた人生を参照して、子供の人生を想像したり、特定の方向に誘導するのはやめよう。

 時代はどんどん変わり、生活様式や文化だけでなく、常識すらアップデートされ続けるし、繰り返すが、そもそも君の子供は君ではない。

 君がすべきは、環境を含めて子供という個を捉え、”繋がりすぎて”深みに嵌らないよう、一緒にその環境にいてあげることだ。人生のある時点で君が存在した環境を持ち出して、全く別物である今の環境を生きる子供に指示するのは、得策でないとわかるだろう。

 もし何かを伝えるなら、なるべく普遍的なことがいい(例えば私が苦心しつつ書いているこの文章は、ある程度普遍化されていると思う。そう思いたい)。


 小学校高学年、中学校以後は、次第に思春期が訪れ、子供は”子供”を脱し始める。

 積極的にコミュニケーションをとろう。

 育てられる対象ではなく、対等な家族の一員として、お互いの苦楽を分かち合える関係を築いてほしい。

 そのためにも、小学校前半頃までは子供の望ましい言動を強化するサイクルを作り、その後は子供が世界と繋がる架け橋として、子供と同じ環境に身を置いて、すぐそばで見守ってほしい。

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