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追放された特異点:意識を失うと最強の神の力が俺を支配する。誰も知らない、この体こそが世界を救う鍵であることを  作者: Riang Perdana
第一章 ヘブリー星の王女を救おうとしたら、なぜか異世界に飛ばされて記憶まで失っていた件
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第一章 第四部 ―― ロスト・リアリティ次元

ゆっくりと意識が浮上する。


全身にのしかかるような重さを感じながら、俺は静かに目を開いた。


そして最初に目に飛び込んできたのは見知らぬ部屋ではなかった。


両手首と両足首を拘束する冷たい金属の感触だった。


――拘束されている。


だが、それはただの手枷ではない。


黒ずんだ金属から目に見えない圧力が流れ出し、体内の力を容赦なく押さえ込んでいた。


身体を動かそうとすればするほど、力が抜けていく。


まるで生命力そのものを吸い取られているようだった。


荒い呼吸を整えながら周囲を見回す。


異様な部屋だった。


中央には大きなベッドが置かれている。


白いシーツの上には無数の赤い薔薇の花びらが散りばめられ、ハートの形を描いていた。


部屋の四隅では赤い蝋燭が静かに揺らめいている。


暖かな光を放っているはずなのに、その光景はどこか不気味だった。


濃厚な薔薇の香りが空気を満たし、息苦しささえ感じる。


まるで恋人たちのための部屋。


だが同時に――


悪夢の牢獄でもあった。


その時。


廊下の向こうから足音が聞こえてきた。


俺の身体が強張る。


考えるまでもない。


あの女だ。


ゆっくりと扉が開く。


カチャ――


蝶番の音が妙に大きく耳に響いた。


心臓が速く脈打つ。


あの女の顔を思い浮かべるだけで胸の奥がざわつく。


恐怖だけではない。


もっと嫌な何か。


言葉にできない不吉な予感。


女は部屋へ入ってきた。


そして俺の姿を見るなり、嬉しそうに微笑んだ。


「あなたぁ……やっと起きてくれたのね」


彼女は椅子を持ってきて俺の正面へ置く。


優雅な仕草で腰掛けると、俺たちは向かい合った。


俺は再び拘束から逃れようと力を込めた。


鎖が激しく鳴る。


だが無意味だった。


謎の力による拘束はびくともしない。


「お前は何者なんだ」


「俺に何をするつもりだ?」


「それに……俺に何が起きた?」


女は薄く微笑むだけだった。


そして。


ゆっくりと顔を近づけてくる。


吐息が触れそうなほど近くまで。


「私はあなたの妻よ、あなた」


「まさか忘れてしまったの?」


俺の心臓が止まりかけた。


「……は?」


あまりにも突飛な言葉だった。


記憶を失っているとはいえ、本当に大切な存在なら何かしらの感情が残っているはずだ。


だが。


何も感じない。


親しみも安心感もない。


あるのは警戒心だけ。


もし本当に妻なら――


なぜ俺は囚人のように拘束されている?


「妻だって?」


「妻が夫をこんな風に扱うのか?」


俺は睨みつける。


すると女はますます嬉しそうに笑った。


白い指先が俺の腹部へ触れる。


そして胸元をなぞり、首元までゆっくりと這い上がってきた。


「あなたが悪いのよ」


「いつも私から離れていこうとするんだもの」


口調はあまりにも自然だった。


まるで自分の行為が正しいと信じて疑わないかのように。


「愛する夫があんなに素敵なんだもの」


「妻が嫉妬するのは当然でしょう?」


さらに顔が近づく。


息遣いまで感じられる距離。


俺は反射的に顔を背けた。


おかしい。


何もかもがおかしい。


胸の中の違和感はどんどん膨らんでいく。


この女は誰だ。


俺は何を忘れている。


「なら教えてくれ」


「俺の名前は?」


「そして、お前の名前は?」


少しでも記憶を取り戻すために問いかける。


女は顎に手を添え、脚を組んだ。


「んー、そうねぇ」


わざとらしく考える仕草。


そして。


「あなたの名前はリュウ・セレスティアル」


「そして私の名前は――」


彼女は再び身を寄せる。


唇が耳元に触れそうな距離で囁いた。


「ヴォラ」


その瞬間。


俺の目が大きく見開かれた。


「っ……!」


激痛が頭を貫く。


反射的に頭を押さえた。


封印されていた記憶の欠片が突如として脳裏に浮かび上がる。


◇ ◇ ◇


紫色の髪をまとめた少女。


紫色のドレスを着た彼女は酷く怯えていた。


三人の少年に囲まれ、いじめられている。


身体は震え。


瞳には生気がない。


俺は考えるより先に走り出していた。


「おい!」


「女の子をいじめるなんて最低だろ!」


三人の少年が振り向く。


「ははっ!」


「見ろよ、この貧乏人!」


「死にたいのか?」


「こいつを庇うっていうなら、よく見てみろよ」


そのうちの一人が少女の髪を乱暴に引っ張る。


「くそっ……!」


俺は迷わず突っ込んだ。


◇ ◇ ◇


そこで記憶は途切れた。


闇。


空白。


何も見えない。


「はぁっ……」


荒く息を吐く。


「何か思い出した?」


ヴォラの微笑みは変わらない。


まるですべてを知っているかのような笑み。


あれは何だ。


どうしてあの記憶が――


思い出そうとすればするほど頭痛が酷くなる。


その時だった。


ドォォォンッ!!


轟音が建物全体を揺らした。


床まで震えるほどの衝撃。


ヴォラが扉へ視線を向ける。


そして再び俺を見る。


背筋が寒くなる笑顔だった。


「ねぇ、あなた」


「少し待ちきれなくなっちゃったわ」


そう言った次の瞬間。


彼女は突然俺の膝の上へ跨った。


「この時をずっと待っていたの」


「だから――始めましょう?」


紫の瞳には狂気じみた執着が宿っていた。


俺は慌てて抵抗する。


どれだけ美人だろうと関係ない。


こんな状況で平然としていられる男などいない。


彼女から放たれる気配はあまりにも異常だった。


圧倒的な力。


底知れない狂気。


そして何より、俺は彼女を知らない。


ドォォォンッ!!


二度目の爆発音。


今度はさらに大きかった。


幸いにも、それが全てを中断させる。


「チッ……」


ヴォラが不機嫌そうに舌打ちした。


「誰よ……邪魔をするのは」


彼女は俺の膝から降りる。


そして立ち上がった。


「あなた、少し待っていてね」


「祭壇で何が起きているのか見てくるわ」


薄い笑みを残し、部屋を出ていく。


扉が閉まった。


――今だ。


俺は全力で拘束を引きちぎろうとする。


だが駄目だ。


びくともしない。


くそっ――


その時だった。


窓の向こうに人影が現れる。


俺は息を呑んだ。


赤い光の中から現れたその姿は、まるで伝説から舞い降りた女神のようだった。


淡い銀色の長髪。


赤い光を受けて幻想的に輝いている。


整った顔立ち。


どこか掴みどころのない神秘的な微笑み。


澄み切った桃色の瞳が真っ直ぐ俺を見つめていた。


鋭い眼差しなのに、不思議と安心感を与えてくれる。


彼女は豪華な金の装飾が施された真紅の衣装を身に纏っていた。


東洋風の意匠を取り入れた優雅な服装。


花の模様が美しく刺繍されている。


同色の大きな帽子がその姿をより高貴に見せていた。


美しい。


だが一目で分かる。


この女もまた普通ではない。


彼女は音もなく窓を開けて部屋へ侵入した。


俺は呆然と見つめる。


「……誰だ?」


彼女はすぐに俺の口元へ指を添えた。


静かに。


という合図。


そして迷うことなく拘束具へ手を向ける。


真紅のオーラが掌から溢れ出した。


次の瞬間――


バキィッ!!


手枷と足枷が粉々に砕け散る。


「急いで」


「ここから脱出するわよ」


彼女は俺の手を掴み、そのまま窓へ向かって走った。


だが。


脱出しようとした瞬間。


廊下から足音が聞こえる。


ヴォラが戻ってきた。


銀髪の女性は迷わなかった。


俺の手を引き、窓から飛び出す。


そして俺たちは大聖堂から逃げ出した。


◇ ◇ ◇


ヴォラが部屋へ戻る。


扉を開いた瞬間。


その笑顔が凍り付いた。


視線が室内を見渡す。


誰もいない。


ずっと求め続けていた男が消えている。


やがて彼女の目は開かれた窓へ向いた。


理解する。


逃げられた。


「……くそが」


轟ッ!!


膨大な魔力が部屋を埋め尽くした。


バァァン!!


鏡が次々に砕け散る。


薔薇の花びらが暴風のような衝撃波に巻き上げられた。


「どうして……」


「どうしていつも誰かが私たちの時間を邪魔するの……?」


怒りに満ちた声。


そして次の瞬間。


「ああああああッ!!」


「エリシアァァァァ!!」


「殺してやる……!!」


ついに理性の糸が切れた。


ヴォラは窓辺へ歩み寄る。


その先に見えたのは――


銀髪の女と共に逃げていく愛する男の姿。


ヴォラはゆっくりと笑った。


その笑みはもはや人間のものではない。


狂気そのものだった。


「そう……」


「追いかけっこがしたいのね?」


「いいわ」


「もしあなたが私の傍にいてくれないなら――」


彼女の瞳が禍々しく輝く。


「絶望がどういうものか、たっぷり教えてあげる」

「この物語をここまで続けてこられたのは、ひとえに皆さんの応援のおかげです。もし各話を楽しんでいただけましたら、ぜひブックマークと評価をお願いします。こうした皆さんのあたたかいサポートが、次のお話を書くための大きな励みになります。この物語の旅路に寄り添ってくださり、本当にありがとうございます!」

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