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追放された特異点:意識を失うと最強の神の力が俺を支配する。誰も知らない、この体こそが世界を救う鍵であることを  作者: Riang Perdana
第一章 ヘブリー星の王女を救おうとしたら、なぜか異世界に飛ばされて記憶まで失っていた件
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第一章 第三部 ―― 最も大切な人の失踪

この世界には、ヘヴリー(HeavLy)と呼ばれる惑星が存在する。


そこは人類が文明を築き、繁栄してきた世界だった。


だが――


平和とは、決して無償で与えられるものではない。


人類は太古の昔から、《アベレント(Abberents)》と呼ばれる恐るべき存在たちと共存してきた。


その姿は実に様々だ。


山のような巨体を持つ獣。


漆黒の影に包まれた人型の怪物。


そして、理解を超えた異形の存在たち。


彼らが現れる場所には、必ず破壊と死が訪れた。


それでも人類は屈しなかった。


偉大なる王――マーリン王の統治の下、人類は強固な王国を築き上げた。


さらに巨大な魔力障壁を生み出し、アベレントから民を守るための結界として運用した。


王立魔法学院では優秀な騎士や魔導師たちが育成され、人類の未来を守るため命を懸けて戦い続けていた。


そして百年もの間――


平和は保たれていた。


だが。


その平穏は、たった一夜で崩壊する。


何の前触れもなく。


アベレントたちが再び侵攻を開始したのだ。


しかも今回の彼らは、かつてとは比較にならないほど強大だった。


都市は次々と陥落する。


人類の防衛線は崩壊する。


最後の希望だった王国軍さえ、一人、また一人と戦場で命を落としていった。


そして――


マーリン王までもが、SS級アベレントとの戦いで命を落とした。


絶望が世界を覆う。


誰もが人類滅亡の未来を覚悟した。


そんな中。


かろうじて残された希望があった。


マーリン王の一人娘。


エヴリン・グレイス。


まだ十三歳でありながら、その魔力は既に王国最強。


いや――


生前のマーリン王でさえ到達できなかった領域に達していた。


そして同じ頃。


もう一人の存在が注目を集めていた。


リュウ・セレスティアル。


権力も地位も持たない平民出身の少年。


にもかかわらず、常識では説明できないほどの力を有していた。


人類が滅亡の淵に立たされていることを悟った二人は、共に戦うことを選ぶ。


押し寄せるアベレントの大群。


終わりの見えない戦い。


絶望的な戦況。


それでも――


二人は勝利した。


世界を救ったのだ。


その日から。


エヴリン・グレイスとリュウ・セレスティアル。


二人の名は人類を救った伝説として語り継がれることになる。


そして。


幾多の戦いを共に乗り越える中で――


二人の絆は、誰にも断ち切れないほど強く結ばれていった。


◇ ◇ ◇


夜の闇に包まれた森。


湿った草原の上に、一人の少女が倒れていた。


静かな夜風が木々を揺らし、葉擦れの音だけが森の静寂を満たしている。


やがて。


少女の瞼が微かに震えた。


ゆっくりと目を開く。


「……ここは……?」


エヴリンは頭を押さえながら周囲を見渡した。


呼吸が乱れている。


見覚えのない森だった。


どこを見ても知らない景色ばかり。


しかし――


次の瞬間。


彼女の瞳が大きく見開かれる。


一つの記憶が脳裏を駆け抜けた。


紫色の髪。


深紫のドレス。


底知れぬ神秘を宿した瞳。


あの女。


忘れかけていた記憶が一気に蘇る。


◇ ◇ ◇


「エヴリン」


「もしあなたがヘヴリーの女神なら、その守護者としての力を私に見せてちょうだい」


王城のバルコニー。


そこに紫髪の女性は静かに立っていた。


紫水晶のような瞳には感情の色がほとんど見えない。


「……どういう意味?」


エヴリンは怪訝そうに眉をひそめる。


女性は小さく笑った。


そして。


「――目覚めなさい」


その瞬間。


城の中庭が激しく震動した。


石畳に無数の亀裂が走る。


次の瞬間。


地中から一体のB級アベレントが姿を現した。


「なっ――!?」


エヴリンの目が見開かれる。


「どうして……!?」


「結界内でアベレントが出現するなんて……!」


心臓が大きく脈打つ。


王国を覆う魔法障壁は、人類領域への侵入を防ぐ絶対防衛結界のはずだった。


それなのに。


この女は。


人類が百年もの間不可能だと信じてきた法則を、あっさりと覆してみせたのだ。


「あなた、一体何者なの!?」


エヴリンが叫ぶ。


しかし女性は穏やかな表情を崩さなかった。


「私が誰なのかなんて、知る必要はないわ」


そう言った瞬間。


アベレントは跡形もなく消滅した。


まるで最初から存在しなかったかのように。


「ただね」


「私は無駄な騒ぎを起こしたくないの」


「だから少しだけ機会をあげるわ」


女性は薄く微笑む。


そして。


「もし私が――」


「すべての元凶だと言ったら?」


その笑顔を見た瞬間。


周囲の空気が凍り付いたように感じた。


エヴリンの身体が強張る。


その言葉は。


彼女の心の奥底に刻まれた傷を直接抉った。


四年前の大戦。


父の死。


焼け落ちる街。


民たちの悲鳴。


燃え盛る炎の海。


そして数え切れない犠牲者たち。


忘れられるはずがない。


「じゃあ……!」


「四年前のアベレント侵攻は、あなたが引き起こしたというの!?」


拳が震えるほど強く握られる。


青い瞳に怒りが宿った。


女性は肩をすくめる。


「さあ?」


「どうかしらね」


挑発するような笑み。


その直後――


彼女の姿が掻き消えた。


あまりにも速い。


だがエヴリンは迷わない。


即座にバルコニーから飛び降りる。


そして追跡を開始した。


二人の速度は限界を超えて加速していく。


森を越え。


山を越え。


やがて《禁断の森》へ辿り着いた。


それでもエヴリンは止まらない。


目標はただ一つ。


あの女を捕まえること。


たとえ何が待っていようとも。


追えば追うほど。


人類領域から離れていく。


それでも構わなかった。


そして――


紫色の巨大な障壁が彼女の前に現れる。


エヴリンは躊躇しない。


そのまま突き進んだ。


障壁を突破した瞬間――


意識が遠のいていく。


視界が暗く染まる。


そして。


その先の記憶は。


完全に失われた。


◇ ◇ ◇


「くっ……」


エヴリンは小さく頭を振った。


蘇った記憶によって呼吸が乱れる。


「最悪ね……」


「あの女を捕まえられなかった……」


胸の奥に苛立ちが広がる。


悔しさと後悔が入り混じり、心を重くしていた。


その時だった。


遠くから足音が聞こえてくる。


鎧がぶつかり合う金属音。


数は一つではない。


どんどん増えていく。


エヴリンはすぐに立ち上がった。


やがて。


木々の向こうから数十名の王国兵たちが姿を現す。


彼らはエヴリンを見るなり叫んだ。


「エヴリン王女殿下だ!」


歓声が上がる。


兵士たちは駆け寄り、一斉に跪いた。


「エヴリン王女殿下!」


「ようやくお見つけいたしました!」


その声には安堵が滲んでいた。


エヴリンは小さく頷く。


だが――


何かが足りない。


胸の奥に妙な違和感があった。


誰かがいない。


本来なら。


今この場にいるはずの人物が。


リュウ・セレスティアル。


彼女にとって最も大切な存在。


最初は別の場所を探しているのだろうと思った。


深く考えてはいなかった。


しかし。


一人の兵士が何気なく口にした言葉が。


彼女の世界を凍り付かせる。


「殿下」


「リュウ様はご一緒ではないのですか?」


兵士は森の奥へ視線を向けた。


まるで今にもリュウが現れると信じているかのように。


エヴリンは眉をひそめる。


「……どういうこと?」


困惑した声が漏れた。


兵士は慌てて説明する。


「ご報告いたします」


「実はリュウ・セレスティアル様は、我々より先に禁断の森へ捜索に向かわれました」


「我々は別方面を探索しておりましたので……」


「てっきり殿下はリュウ様によって保護されたものだと……」


その言葉は。


どんな攻撃よりも強くエヴリンを打ちのめした。


血の気が引く。


呼吸が苦しい。


耳鳴りがする。


世界が止まったようだった。


嫌な予感が心を支配していく。


恐怖。


不安。


そして――


再び大切な人を失うかもしれないという絶望。


「違う……」


エヴリンの声は震えていた。


「私は……」


「リュウと一緒じゃなかった……」


兵士たちは顔を見合わせる。


一方で。


エヴリンの脳裏には最悪の可能性が浮かび始めていた。


まさか――


あの女が。


リュウを連れ去ったの?


その考えが浮かんだ瞬間。


恐怖が理性を押し潰していく。


「みんな!!」


エヴリンの叫びが森に響き渡った。


「今すぐリュウを捜して!!」


「きっとまだ遠くへは行っていないはずよ!!」


「はっ!!」


兵士たちは即座に行動を開始した。


王国軍は各方面へ散開する。


禁断の森の隅々まで捜索するために。


リュウを見つけ出すために。


そして――


エヴリンだけが、その場に立ち尽くしていた。


手が震える。


止めようとしても止まらない。


虚ろな瞳は森の奥を見つめていた。


夜風が吹く。


冷たい風が心の奥まで突き刺さる。


四年前。


父を失ったあの日。


胸を締め付けたあの恐怖。


それが再び蘇る。


そして彼女は。


人生で二度目となる恐怖に襲われていた。


――最も大切な人を失うかもしれないという恐怖に。

「この物語をここまで続けてこられたのは、ひとえに皆さんの応援のおかげです。もし各話を楽しんでいただけましたら、ぜひブックマークと評価をお願いします。こうした皆さんのあたたかいサポートが、次のお話を書くための大きな励みになります。この物語の旅路に寄り添ってくださり、本当にありがとうございます!」

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