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追放された特異点:意識を失うと最強の神の力が俺を支配する。誰も知らない、この体こそが世界を救う鍵であることを  作者: Riang Perdana
第一章 ヘブリー星の王女を救おうとしたら、なぜか異世界に飛ばされて記憶まで失っていた件
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第一章 第20部 ヴォラ外伝(5)

私はヴェリスタの指先を強く握りしめていた。


まるで、その手だけが、闇へ沈みかけた私の魂を繋ぎ止める唯一の錨であるかのように。


生まれて初めて、胸の奥に「目的」が芽生えていた。


ただ生き延びるためではない。


ただ耐えるためでもない。


支配するため。


この世界に、自分の存在を刻みつけるため。


いつも私を縛っていた恐怖は、胸の内で燃え上がる熱に焼き尽くされ、跡形もなく消えていた。


けれど――。


その歪んだ高揚の隙間から、一人の少年の面影が静かに浮かび上がる。


リュウ。


その名前を思い浮かべた瞬間、胸の奥が鋭く痛んだ。


冷たく、そして優しく。


まるで失った季節を思い出させる刃のように。


私たちはもう、まったく違う場所に立っている。


互いに手を伸ばしても届かないほど遠い場所に。


私は俯き、長い紫の髪を垂らして瞳を隠した。


「何を考えているの?」


静寂を破ったのはヴェリスタだった。


その声は柔らかい。


けれど背筋を這い上がるような響きを帯びている。


「迷いでも芽生えたのかしら?」


「……リュウのことを、思い出していただけ……」


夜風に消えそうな声で、私はそう呟いた。


ヴェリスタはしばらく黙り込む。


やがて口元に、意味深な微笑が浮かんだ。


「リュウ……」


その名前をゆっくり舌の上で転がす。


まるで、その響きそのものを味わうように。


「星のペンダントをつけた、あの優しい少年のことかしら?」


私は息を呑んだ。


瞳が大きく見開かれる。


「ど、どうして……彼のことを知っているの……?」


ヴェリスタは腕を組み、暗い空の彼方を見上げた。


「世界なんて思っているよりずっと狭いものよ、ヴォラ。」


静かな声が夜へ溶けていく。


「あなたと出会う前に、一度だけあの子と顔を合わせたことがあるの。」


そして小さく笑う。


「可哀想な子……。とても脆い運命を背負っているわ。」


彼女がゆっくりと近づく。


美しい顔がすぐ目の前まで迫る。


肌から漂うジャスミンの香り。


その甘い香りに、Aberrantたちが這い回った湿った土の匂いが混ざり合う。


「恋しいの?」


蒼い瞳が私を射抜いた。


「そこまで想っているの? 胸が震えるほどに。」


私は恥ずかしそうに小さく頷いた。


するとヴェリスタは突然笑い出した。


最初は静かに。


やがて夜空を揺らすほど大きく。


その笑い声に反応するように、周囲のAberrantたちがざわめき始める。


「本当に可愛いわ。」


涙を拭いながら、彼女はなおも笑う。


「あなたたちは大人になる手前なのね。だから感情がこんなにも美しくて、こんなにも哀しい。」


彼女は私の顎を指先で持ち上げた。


氷のように冷たい指先。


「でも……もし彼を完全に自分のものにできるとしたら?」


私は息を止める。


「二度と離れない。」


「二度と失わない。」


「ずっと隣にいて、永遠にあなたのものになる。」


「……そんなこと、本当にできるの?」


震える声で尋ねた。


ヴェリスタは微笑む。


「もちろんよ。」


「ただし、私は手を貸さない。力はもう与えたでしょう?」


彼女の指が私の頬をなぞる。


「欲しいものは、自分の手で掴みなさい。」


「……どうすればいいの?」


その問いを待っていたかのように、ヴェリスタの瞳が妖しく輝いた。


「血と魂よ、ヴォラ。」


「ゼフィリオン近郊の村で開かれる誕生日の宴。それがあなたの舞台。」


彼女の声は甘い。


けれど底知れない闇を孕んでいる。


「Aberrantたちが命を刈り取れば、その生命エネルギーはあなたに集まる。」


「魂が多ければ多いほど、呼び出せるAberrantは強くなる。」


彼女は夜空へ指を伸ばした。


「その力で、自分だけの次元を織り上げなさい。」


「あなただけの世界を。」


「そこにはあなたと、私と、そして彼だけがいる。」


私は息を呑んだ。


「その世界では、あなたが神になるの。」


「リュウを閉じ込めれば、彼は二度とあなたのもとを離れられない。」


ヴェリスタの瞳が細められる。


「ただし条件が一つ。」


「彼を捕まえたら、必ず私を呼びなさい。」


「私が彼の力を封じるわ。」


「封じる……?」


「どうして……?」


彼女の表情から微笑が消えた。


「あなたから離れられなくするためよ。」


その瞬間。


私の中で、何かが静かに壊れた。


人間であり続けようとしていた最後の良心。


それがゆっくりと霧のように消えていく。


代わりに胸を満たしたのは、狂おしいほどの執着だった。


もう善悪なんてどうでもいい。


正義も。


罪も。


私が欲しいものはただ一つ。


リュウ。


そして、二人だけの世界。


死の上に築かれる私たちの楽園。


「あはははははっ!!」


ヴェリスタの笑い声が夜空へ響き渡る。


「目覚めなさい、ヴォラ!」


「私の最高傑作が何を成し遂げるのか、この世界に見せつけてあげなさい!」


――翌日。


照りつける太陽は容赦なく大地を焼いていた。


けれど私の心は、真冬のように冷え切っている。


ゼフィリオン近郊の村。


役人の子供の誕生日を祝う祭りが開かれていた。


色とりどりの飾り。


響き渡る笑い声。


走り回る子供たち。


その光景は、かつて私が決して手に入れられなかった幸福そのものだった。


『覚えておきなさい、ヴォラ。』


脳裏にヴェリスタの声が蘇る。


『人工の世界は、大量の死の上にしか生まれない。』


私はゆっくりと目を閉じた。


涙が頬を伝う。


「……ごめんなさい、お父さん……お母さん……」


――もう、十分だ。


残っていた情けも。


迷いも。


優しさも。


すべて捨てる。


この世界が私を壊したのなら。


今度は私が世界を壊す。


私は静かに口を開いた。


「……Aberrants、目覚めなさい。」


次の瞬間。


大地が激しく震えた。


轟音とともに地面が裂け、紫黒い亀裂が大地を走る。


その深淵から這い出してきたのは、黒い棘に覆われた異形たち。


闇そのものが形を持ったような怪物。


悪夢が現実へと滲み出したかのようだった。


遠くの影の中。


ヴェリスタが静かに手を掲げる。


村を覆っていた結界が、まるで巨大な槌で叩き砕かれたガラスのように音を立てて割れた。


無数の光の破片が空へ舞い上がる。


私はその光景を見つめながら、冷え切った声で命じる。


「……全員、殺して。」


Aberrantたちが一斉に地を蹴った。


腐臭を帯びた吐息が風を裂く。


祝福の声は悲鳴へ変わった。


笑顔は絶望に塗り潰された。


子供たちの泣き声。


大人たちの叫び。


崩れ落ちる建物。


赤く染まる大地。


私はただ静かに、その光景を見つめていた。


もう戻れない。


もう二度と。


かつてリュウと笑っていた、あの頃のヴォラには。


今日、この瞬間。


私は完全に別の存在へと変わってしまったのだから。

「この物語をここまで続けてこられたのは、ひとえに皆さんの応援のおかげです。もし各話を楽しんでいただけましたら、ぜひブックマークと評価をお願いします。こうした皆さんのあたたかいサポートが、次のお話を書くための大きな励みになります。この物語の旅路に寄り添ってくださり、本当にありがとうございます!」

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