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追放された特異点:意識を失うと最強の神の力が俺を支配する。誰も知らない、この体こそが世界を救う鍵であることを  作者: Riang Perdana
第一章 ヘブリー星の王女を救おうとしたら、なぜか異世界に飛ばされて記憶まで失っていた件
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第一章 第十三部――ロスト・リアリティ次元(10)


虚無の中から――


闇がゆっくりとリュウの掌へと集まり始めた。


それはまるで、長い眠りから目覚めた心臓の鼓動のように静かに脈打っていた。


やがてその闇は瞬く間に凝縮し、一振りの戦鎌を形作る。


それは単なる武器ではない。


闇そのものの延長。


存在そのものだった。


湾曲した刃は、人の理では理解できない歪な幾何を描いている。濃密な紫のオーラが刃の隙間から滲み出し、生きた霧のようにゆっくりと呼吸を繰り返していた。


周囲の空気が微かに軋む。


その鎌がそこに存在するだけで、目の前に立つ者の運命の糸すら断ち切られてしまうかのようだった。


(第三者視点)


Aberrantが動いた。


巨体が地を踏みしめるたび、大地が激しく揺れる。


衝撃は四方へ走り、地面に巨大な亀裂を刻んでいく。


次の瞬間。


その巨躯はすでにリュウの眼前にあった。


岩塊のような拳が真っ直ぐに突き出される。


空気が悲鳴を上げる。


――BAM!!


衝突の余波が地面を抉り、巨大なクレーターを生み出した。


土砂と岩片が空高く舞い上がる。


だが――


そこにリュウの姿はない。


痕跡すら残っていない。


影もない。


彼はすでに人の視覚を超えた領域へと到達していた。


Aberrantが怒号を上げる。


その咆哮は次元全体を震わせた。


拳。


腕の薙ぎ払い。


暴力的な一撃。


止まることなく繰り返される猛攻。


しかし。


何一つ届かない。


リュウは死の連撃の中を舞っていた。


その姿は現れては消える幻影。


一度の呼吸の間に、そこにいて、次の瞬間には消えている。


まるで重力そのものが、彼に触れることを許されていないかのようだった。


怪物は苛立ちに唸る。


次の瞬間、その巨体が空へ跳躍した。


黒雲を突き破り、巨大な流星となってリュウへ落下する。


轟音。


衝撃。


大地が再び爆発した。


地面がめくれ上がり、濃密な土煙が戦場を飲み込む。


だが。


その煙の中心から、一つの影が天へと駆け上がった。


リュウ。


音すら立てずに宙を回転し、そのままAberrantの背へと静かに降り立つ。


漆黒の瞳。


感情のない視線。


身体から流れ出る紫の霧が、周囲の光を呑み込んでいく。


遠くで。


ヴォラが目を見開いた。


――これが……本当の力……?


リュウはゆっくりと鎌を持ち上げる。


ヒュン――


ただ一度の振り。


だが、その刃の周囲で世界そのものが歪んだ。


空間が湾曲し、斬撃の軌跡に沿って漆黒の裂け目が生まれる。


まるで虚無そのものが光を喰らっているかのように。


瞬間――


Aberrantの首が宙を舞った。


紫色の血飛沫が空へ散り、有毒な雨のように地面へ降り注ぐ。


だが。


怪物は倒れない。


首を失った巨体はなおも動いていた。


リュウは一瞬たりとも隙を見せない。


後方へ跳ぶ。


黒い瞳に紫の光が走る。


そして――


彼は消えた。


シュン。


シュン。


シュン。


シュン。


幾重もの斬撃音が四方八方から響く。


紫の閃光が空間を縫い、複雑な軌跡を描きながら消えていく。


Aberrantの身体には、瞬く間に無数の傷が刻まれていった。


そして。


リュウが再び姿を現す。


流れるような回転。


下段から振り上げられる鎌。


――ズバァァァッ!!


巨体が真っ二つに裂けた。


二つに分かれた肉体は逆方向へ吹き飛び、やがて紫の粒子となって風の中へ溶けていく。


静寂。


リュウは立ち尽くしていた。


虚ろな瞳。


冷たい表情。


すべての感情が闇に呑まれてしまったかのようだった。


だが。


ヴォラの口元がゆっくりと吊り上がる。


「あら……面白いわね」


裂かれたAberrantの肉体が震え始める。


肉片が独りでに動き出し、見えない力に引かれるように再び結合していく。


赤い瞳が灯る。


いや。


先ほどよりもさらに強く。


「GRRRRRRAAAAAAA!!」


凄まじい咆哮が次元全体を揺るがした。


世界中に満ちていた紫のエネルギーが怪物へと吸い込まれていく。


肉体が膨張する。


五メートル。


六メートル。


七メートル。


鋭い棘が全身から突き出し、生きた鎧のような外殻を形成していく。


さらにその右手には、紫のオーラが凝縮し、一振りの巨大な鎌を生み出した。


SSランクAberrant。


今度は。


走らなかった。


その巨体が消える。


そして――


次の瞬間には、リュウの背後に現れていた。


巨大な鎌が振り下ろされる。


首を断ち切る一撃。


リュウが振り向く。


手の中の鎌が掲げられた。


――BOOOOOOM!!


二つの刃が激突する。


衝撃波が全方位へ爆発した。


木々は根こそぎ吹き飛び。


地面には巨大な蜘蛛の巣状の亀裂が走る。


大気が咆哮する。


衝突。


衝突。


衝突。


紫の火花が乱れ飛ぶ。


二人の速度は、もはや常人の目では追えない。


その戦いは。


破壊の交響曲へと変わっていた。


幾度目かの衝突の最中。


リュウの瞳がわずかに揺れる。


漆黒が薄れていく。


少しずつ。


少しずつ。


本来の青い瞳が戻っていった。


意識が帰ってくる。


(リュウ視点)


――何だ……?


――今、何が起きた……?


心臓が激しく脈打つ。


視界が揺らいだ。


ほんの一瞬。


たった一瞬。


だが。


この戦いでは、その一秒が生死を分ける。


気づいた時には、怪物はすでに目の前にいた。


巨大な鎌が振り下ろされる。


「くっ――!!」


――BOOOOOM!!


直撃。


胸部に凄まじい衝撃が叩き込まれる。


身体が宙を舞った。


世界が回転する。


空。


大地。


森。


すべてが混ざり合う。


何度も地面を転がり、岩を砕きながら吹き飛ばされ、巨大な岩塊へ激突してようやく止まった。


血を吐く。


熱い液体が額から頬へと流れていく。


全身が砕けそうだった。


息をするたび、鋭い痛みが骨の奥まで走る。


まるで何千本もの刃が内側から肉を切り裂いているようだった。


その時。


森の奥からサトおじさんが姿を現した。


足が止まる。


目を見開く。


彼の視線は、力なく横たわるエリシアへ。


SSランクAberrantへ。


そして、満身創痍のリュウへと移っていく。


膝が崩れた。


老人はその場に座り込む。


涙だけが静かに流れていた。


後から来た住民や若者たちも、その場で凍り付く。


口を両手で覆う者。


唇を噛み締め、震える者。


誰も言葉を発することができなかった。


(リュウ視点)


「エリシア! お姉ちゃん、お願い、目を覚まして!」


その声は。


あまりにも必死で。


あまりにも恐怖に満ちていた。


その叫びは、痛みに霞む俺の意識を貫いた。


その叫びは、痛みに霞む俺の意識を貫いた。


俺は無理やり目を開ける。


視界はまだぼやけている。


だが。


見えた。


みんながいる。


全員。


そこに。


怪物がゆっくりと住民たちへ顔を向ける。


巨大な鎌が空気を裂きながら回転し、不気味な風切り音が首筋を凍らせた。


奴は。


全員を殺すつもりだ。


駄目だ。


そんなことは。


絶対に。


俺は歯を食いしばる。


震える両腕で身体を支える。


筋肉が悲鳴を上げる。


骨が砕けそうだ。


無理やり立ち上がる。


脚が激しく震える。


息を吸うだけで肺にガラス片が突き刺さるようだった。


そして。


再び膝をつく。


痛い。


耐えられないほどに。


その間にも怪物は走り出していた。


重い足音が地面を揺らしながら、住民たちへ迫っていく。


一人の少年が、迫り来る怪物など目にも入らず、エリシアの元へ駆け出した。


――くそっ……!!


アドレナリンが痛みを塗り潰す。


壊れた筋肉を無理やり動かす。


俺は立ち上がった。


そして走る。


先に辿り着かなければならない。


あいつらを守らなければならない。


たとえこの身体が再び塵となって砕け散るとしても。


俺は――


もう二度と、誰も失わない。

「この物語をここまで続けてこられたのは、ひとえに皆さんの応援のおかげです。もし各話を楽しんでいただけましたら、ぜひブックマークと評価をお願いします。こうした皆さんのあたたかいサポートが、次のお話を書くための大きな励みになります。この物語の旅路に寄り添ってくださり、本当にありがとうございます!」

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