不完全な神の目と赤い情動(後半)
この作品はAIによる文章生成を使用しています。
「……それで、いいのよ……」
薄れゆく視界の端で、烈華は幸太が自分から背を向けて走り出すのを見た。
これで自分の誇りは守った。自分の選択に後悔はない。だが、その直後。
「なっ……!?」
ふわり、と浮遊感。
幸太はただ逃げ出したのではなかった。自身を追うアントの群れを烈華から引き離すように誘導し、最短のステップでその包囲網を掻い潜ると、彼女の体を強引に抱き上げたのだ。
「は……? あんた、何やって……っ!」
「逃げるなど非効率だ。最善の解決策は、ここにある」
腕の中でお姫様抱っこされたまま困惑する烈華を、幸太は藍色の瞳で見下ろす。
その瞳には、恐怖も、焦りもない。ただ一点の狂いもない「解」を見つめる者の光があった。
「はあ!? 今こんな時に何を――んむっ!?」
烈華の抗議は、強引に重ねられた幸太の唇によって塞がれた。
(なっ……ななな、何してんのよあんたぁぁ!?)
「ん……っ、ん、んう……っ!?」
烈華の抗議の声は、幸太の唇によって無慈悲に塞がれた。
お姫様抱っこのまま、幸太の腕が烈華の背中と膝裏をさらに強く、逃がさないよう抱え込む。 逃げようとする彼女の身体は、彼の胸板に隙間なく押し当てられ、さらに深く、抉るように食らいつかれた。
驚きで弛緩した唇の隙間に、幸太の舌が滑り込んだ。
熱く湿った感触が自身の舌を捉え、強引に絡め取られる。 逃げ場のない口内へと注ぎ込まれる、高純度な「糖分」を含んだ唾液。
それは烈華にとって、自らの炎を爆発させるための、最高に甘美な点火剤だった。
(あつい、あついよ……っ、何、これ……っ!)
全身の血が沸騰し、脳裏が真っ白に塗りつぶされるような感覚が体に走る。
初めて知る「男」の味と、心臓を直接掴まれるような強引な抱擁。
そのあまりの密着感と、血管を焼き切らんばかりに流れ込む熱量。烈華の下腹部はじゅくじゅくと湿りを帯びるように疼き、経験したことのない衝動に全身が粟立つ。
「ん、んうぅ……っ、ん、はぁ……ッ!!」
烈華の誇り高き理性は、脳を直接蹂躙する圧倒的な「甘み」の前に、無残にも瓦解した。
最初は拒絶していたはずの舌が、次第に自分から、より濃密な糖分を、より深い繋がりを求めて卑しくのたうち始める。
烈華は自分でも無意識のうちに幸太の首に腕を回し、まるで飢えた獣のように、彼の口内を貪り、自ら舌を絡めとりにいった。誇りも羞恥も、彼から注ぎ込まれる全能感の前では、溶けて消えるノイズでしかなかった。
烈華を操る乙女のプライドは、たった一度の濃厚な「供給」によって、跡形もなく燃やし尽くされていた。
「……供給完了だ」
幸太が無機質な声と共に、名残惜しさなど微塵も感じさせない速度で唇を引き剥がす。
だが、極上の快楽に脳を焼かれた烈華は、離れていく幸太の熱を反射的に追いかけ、とろけた瞳のまま、だらしなく舌先を伸ばして空を舐めた。自分を完成させる「核」を失いたくないと、本能が悲鳴を上げていた。
「あ……、は、ぁ……っ」
脳細胞が強制的に再起動される。
霧散しかけていた意識が、暴力的なまでの糖分によって極限まで研ぎ澄まされる。視界が急激にクリアになり、烈華の網膜に、見たこともない『青いグリッド』が浮かび上がった。
『……リンク確立。朱鷺沢、僕の視界を共有する。まずは、正面と左右から来る個体を焼け』
幸太の思考が、神経回路に直接「上書き」される。烈華の網膜に、彼女自身の意思とは無関係に、アントを仕留めるための『殺害ルート』が強制表示された。
烈華は驚愕した。幸太の視界を通すと、あれほど脅威だったアントの動きが、まるで止まっているかのように予測できる。
「……何よ、これ。体が、熱い……! 負ける気が、これっぽっちもしないわ!」
脳を焼くような糖分が、烈華の四肢の末端まで熱い脈動を送り込む。
幸太にお姫様抱っこで抱えられたまま、烈華は震える腕を真っ直ぐ前方に伸ばし、その掌を殺到する異形たちへと向けた。
その掌からは、先程までとは比較にならないほど純白に近い「極高熱の炎」が噴き出した。
幸太が指し示す『未来の軌跡』。烈華はその青色の線を掌でなぞるように、迷いなく炎を繰り出す。
「邪魔よ、消えなさい――!!」
普段は直線状に炎を走らせることしか出来なかった彼女の異能が、今は意思を持った紅蓮の蛇のようにうねり、的確に、そして無慈悲にアントを抉り取っていく。
『……動くな。そのまま三秒、熱量を一点に凝縮しろ』
幸太の静かな声が、脳内のノイズをすべて塗りつぶした。
目前には、仲間の死骸を乗り越えて殺到するアントの群れ。その数、二十体以上。
普通なら恐怖で炎をバラ撒いてしまう局面だが、幸太の腕の中にいる烈華に迷いはなかった。
「……っ、分かってるわよ! 溜めればいいんでしょ、溜めれば!」
烈華は歯を食いしばり、全身から溢れでそうな純白の炎を、その掌の中に無理やり押し込めた。
あまりの高熱に、周囲の空気が陽炎のように歪み、視界が白濁する。
アントたちが獲物との距離を詰め、その鋭い顎が幸太たちに届く、あと数センチという刹那。
すべての異形が、ゲートを背にして一直線に重なった。
『――今だ。放て』
「焼き尽くせぇぇぇッ!!」
一閃。
高濃度ブーストを受けた烈華の火炎は、屋上の空気を一瞬で真空に変えた。
放たれた一撃は、群がっていたアントたちを炭化させる暇さえ与えず、分子レベルで消滅させ、空間の歪みごと異界の門を焼き切った。
静寂が戻った屋上で、まだ空気に残る熱だけが現実を物語る。
幸太に抱かれたまま、烈華は肩で息を吐きながら、自分の体内に残る「甘すぎる余韻」に震えていた。
「……信じられない。今の、私……?」
自らの掌を見つめる烈華。
その頬は、戦いの熱だけでなく、幸太から注ぎ込まれた普段とは比べるべくもないエネルギーへの「興奮」と、甘く心地良い初めてのキスの感触で、林檎のように朱く染まっていた。
それだけではない。
血管を駆け巡る二十パーセントの天才糖――その暴力的なまでの糖分が、彼女の脳にある快感中枢を容赦なく蹂躙していた。8パーセントのラムネでは決して届かない、魂の底から突き上げてくるような全能感と陶酔。
「あ……っ、は、ぁ……」
烈華の瞳は、熱を帯びた涙で潤み、とろけたように幸太を見上げている。
指先ひとつ動かすだけで世界を焼き尽くせるような力への昂ぶり。そして、それを自分に与えた少年の、まだ唇に残る熱。その二つが混ざり合い、彼女は抗いがたい快感の渦に飲み込まれていた。
烈華の誇り高い意識が、幸太の存在という「究極の甘美」に、じわりと侵食され始めていた。
切りの良い所まで1日1話更新していきます。




