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鎖の刻―魔剣の過去『生きる約束』

心の奥底に沈んだ記憶が、今――

鎖を引き千切って、顔を出す。


繋がれていたのは、運命か。それとも、絶望か――

それは、彼の魂に巻きついた『鎖』の記憶。

『生きる約束』


背が伸び、身体付きが変化する。

鍛え抜かれ、しなやかでありながらも鋼のような筋肉が悲鳴を上げる程、『訓練』は過酷を極めて行く。

反対に、研究員との会話の受け応え、文字の読み書き、暗号文の解読方法や書き方、あらゆる単位を覚えた処で、『教育』は終了した。

余計な知識は与えず、研究員達の意のままに行動出来れば、問題ない…といった考えらしい。


ある夜…疲れ果て眠っていると…不穏な気配を感じて、目を覚ました。

その瞬間に、首輪の制御装置が作動して身動きが取れなくなった。

全身に走る痛みと痺れ…オレはもんどり打って床へと転がり落ちる。

訳が分からずに、混乱しながらも…転がり落ちた床から、14に覆い被さるている研究員の白衣が見えた。

「っ!」

研究所には、女性株は14のただ1株…理由は明白だった。

オレは、痛み、痺れる身体を無理矢理に奮い立たせ、立ち上がる。

後から拒絶反応が出るかも知れない…そんな恐れすら忘れて、その研究員の首を掴み、14から引き剥がすと

思い切り鉄格子へと投げつけた。

痺れで感覚が掴めない…ブチ殺してやりたいが…今は無理そうだ。

派手な音が響き、鉄格子に備えつけられているアラームが鳴る。

数株の走る足音が聞こえる中で、オレはベッドに座り、薄い毛布を身体に巻き付けるように佇む14の側に寄った。

カタカタと震えている14の青ざめた顔を見ると、胃のあたりがギュッと締め付けられるような、痛みを感じる…。

喉の奥が引き攣り、声が出しにくいが、そんな事を気にしてる場合ではない。オレは14に声をかけた。

「…だ、大丈夫か?」

14も制御装置を使われて、痺れている様子ではあるが…意識はしっかりしている。オレの問いに、眼で頷く。

駆け付けた研究員達が、鉄格子に頭を打ちつけ、もんどり打つ男を捕獲した。


そのまま室内から出ようとする研究員達の背後から、オレは声を掛ける。

「…今度、ま、また、14に何かしてみろ…オ、オレは、命と引き換えても、貴様らを、こ、殺す。」

抑えきれぬまま、痺れの影響もあり、吃音になってしまったが…それがより殺気を含む言葉になった。

研究員達は一斉に息を飲み、鼻白む。

「…以後、このような不始末がないように徹底しよう。残った君達は、大切なsubject…馬鹿な理由で失う訳にはいかないからな。」

そう言葉を残して奴等は戻って行った。

残されたオレは、多少痺れが残っていたが…14の髪を撫でながら

「大丈夫だ…もうこんな目には合わせない。オレが、必ず守るから…」

「…うん。」

14は小さく答えると、涙を浮かべながら…オレの服の裾をギュッと握りしめた。


14の黒髪が、背中に流れる頃…『訓練』は対人戦を含むようになる。

ハオルチアは『葉力』と言う特別な能力を持って産まれるらしい。

オレ達みたいな培養株は、その『葉力』遺伝子を、人工的に植え付けられていた。中には、後から組み換え遺伝子を移植し、経過観察されてる奴もいる。

オレと14は培養中に施された『葉力』のみで、まだ大掛かりな移植は施されては居なかった。

オレ達の『葉力』は、『武器顕現』と呼ばれているモノで…任意で凡ゆる武器を形創る事が出来る。他にも同じ『葉力』を使える奴がいる。

恐らくだが…攻撃特化の『葉力』を研究しているのではないかと、オレは考えていた。


その日は…『武器顕現』を客に披露する為の大事な日だと、研究員達が話して居るのを聞いた。

そして、その見世物に…オレと14が指名された。


まずは、14との対人戦。

研究員が指示する武器を『葉力』によって顕現させながら、戦う。戦闘力を測る…と言うよりは、より素早く、正確に顕現させられるか…を競うらしい。


草木も生えぬ荒地…カラカラに渇いた大地。風が吹くたびに、砂埃が巻き上がり、14の長い髪が揺れる。

そこでオレ達は、指示されるまま、片手剣を打ち突け合い、細剣で刺し斬り結び、短剣で距離を測りながら、矛槍を振り回す。

意識を手元に集中すれば、トリコームがキラキラと舞い集まり、武器へと姿を変える。その速さは、オレと14ほぼ同格で、研究所では一二を争っている…だから、見世物として選ばれてしまったのだろう。と、同時に…素早く『武器顕現』を行えるから、組み換え遺伝子を移植する手術を受けずに済んでいる…とも言えるだろう。

オレが知る限り、後から組み換え遺伝子の移植手術を受けて、生きている奴は居ない…経過観察中の奴等もいずれは、生きたまま肉体が崩れて、そのうちに死ぬだろう…。

『武器顕現』を素早く、正確に行うのは、オレ達の生命線…常に一二を争っている状況で居なければならない。


指示は荒地に備え付けられた、拡張機からアナウンスが流れてくる。かなりデカい音量なので、聴き逃す心配は無さそうだ。


何処から、その客とやらが見てるのか知らないが…今すぐこの手にする槍で刺し殺してやりたい。

そんな言葉が口から漏れ出ると、14が高らかに笑った。

「あはっ!それは、名案だねっ!」

「今から、奴等を皆殺しにしてやるか?」

「それは、愉快だねっ!

でも、今はこうして13と遊んでいるのが、1番楽しいっ!」

14が武器変更アナウンスに敏感に反応して、武器を変える。両手持ちのクレイモア。銀色が眩しいくらいに綺麗な剣だ。

オレのクレイモアは鈍く黒ずんでいる。

「ほら、ほら、足元が疎かになってるよっ!」

14は、両手剣を軽々と扱う。オレも負けじと、片手剣のように扱いながら斬りかかる。

「あははっ!やっぱり強いね!」

14は笑いながら、剣を討ち付け、斬りかかってくる。

普段は、大人しい女だが…武器を顕現させると性格が豹変する。

笑いながら、楽しそうに殺し合う。

そうだ…コレは、試合では無い。殺し合いなんだ。

また新たな指示が降る。

エストック…突武器だ。14が1番得意としている武器…オレとは違い、しなやかで柔軟性のある軽い身体だから、突くスピードが半端ない。

オレは防戦一方になるが…突かれたら最後だ。傷を負ったら…用済みだと廃棄処分になりかねない。

二人で生き残る為には、全力で戦うしかない。手を抜いて見破られても、不味いだろう。

全力で戦い続け、負かさずに、引き分けるしかない…。

オレは14のエストックを避けながら、機会を伺い、手に持つエストックを跳ね飛ばした。

カラン…と渇いた音を響かせ、地面にエストックが落ちた瞬間に、終了の合図が鳴った。

「あ〜あ、また、勝てなかった…」

14が残念そうに呟くが、顔には笑みが浮かんでいる。

「勝っても、負けても…駄目だ。全力を保って、引き分け続けないとな。」

「うん、奴等が欲しがる『力』ってやつを手に入れるまで…だね。」

「そうだ。それを手にして…奴等を皆殺しにする。必ず、オレが終わらせるから…」

「一緒に生きようね!」

14がエストックを拾いあげ、その切先をオレに向けた。

側から見たら…次は必ず勝つ!と宣戦布告してるように見えるだろう。

「ああ、生き残る!それがオレ達の戦いだ。」

14の宣戦布告を受けるように、オレもまた、切先を14のエストックにカチンと重ねる。

金属が触れ合う、微かな音色。その渇いた音は…荒地に吹く風の音に掻き消された。


時には、キャラたちと共に笑い、

時には、共に憤り――

彼らが抱える想いに、どこかで共鳴してもらえたなら。

ゆるやかに、この世界観を満喫して頂けたなら。

それが、私にとって、何よりの幸いです。


――読んでくださって、本当にありがとうございました。


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