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動乱の刻―歪む運命『白夜』

世界は、静かに脈打っている――

芽吹き、歪み、そして命は交差する。

今、ひとつの「刻」が動き出す。

『白夜』


野営の準備も終わり、焚火の周りに

皆が集まり、各々が寛ぐ。

竜車酔いと、マリンの冷たい言葉に落ち込み気味の白帝城は、今度は魔剣に揶揄われている。


雫の側には、すっかり懐いたラプティス4匹が集まっている。先程までマリンと手分けして湖の水を汲み、濡らした布で埃に塗れたラプティスの身体を拭ってやっていたのだ。

4匹のラプティスには個体差があり、それぞれ色が違う。雫が全てに呼び名を付けて、可愛がっている。


全身が煉瓦色で、腹だけが薄茶色、一番身体が大きく、車体を牽引している個体には、『ラプちゃん』と名付けた。

九尾の相棒は、薄茶に腹色がクリーム色、割と細身で『ティス』という名を。

魔剣の相棒は、珈琲色に腹色が煉瓦色。ガッチリ体格。名を『ギギ』

最後に、ラプティスの主食の生野菜や、かさ張る野営用の荷物を運ぶ役割りをしている『ポノ』は、苔色に薄茶の腹色をしている。

性格もそれぞれ違い、雫の一番のお気に入りは『ラプちゃん』みたいだ。

とても甘え上手で、「キュイ、キュイ〜」と甲高い可愛い声で鳴くのが、実に愛らしい。


食事風景も可愛かった…。

個々にキャベツを丸ごと渡すと、一斉に「キュイ!」と鳴く。「いただきまーす!」と言ってるみたいで、微笑ましい。

器用に小さな両手を使い、一枚づつキャベツの葉を毟って食べる。それを見て、ハムスターの食事風景を思い出してしまった…。

爬虫類だよね?食べ方が、ハムスターみたいって…違和感の塊だけれども。

何にしても、可愛いから良し!

こんなに大人しくて、仕草も愛らしいのに…何で白帝城は怖がるんだろう?でも、鱗が…とか、眼が…とか、爬虫類はちょっと生理的に無理って人は、私が居た世界にも沢山居たし…。

こればっかりは好みの問題かなぁ?


ほのぼのとした気分で、雫とラプティスが戯れってるのを眺めている時に、

突如、異変を感じた。

ピクリと耳が反応する。…何の音だろう…足音かっ!?

「何か、来たっ!」

ラプティスも反応して、ギギが「ギュッ!ギュッ!」と鳴く。異変を知らせる警戒音みたいものかも知れない。


白帝城がゆらりと立ち上がり、

「誰かが、結界を取り除こうとしているな…破れる事は無いが、どうする?相手は株だ…数株は居るだろう。」

「野盗か?」

九尾が白帝城を見上げて尋ねるが、

白帝城は首を横に振る。

「そこまでは、分からない。が、武器を持ってるのは間違いないようだ。」

魔剣が立ち上がり、愛剣を顕現させた。

「野盗だろうが、何だろうが…放置は出来んな。やるぞ…」

「仕方ない…やるか。白帝城は此処で守ってくれ。俺と魔剣で出る。」

九尾が嫌そうにしながら、立ち上がり「で、どっちの方向?」と白帝城に尋ねた。

白帝城の結界は、図らずも広めに張っているらしく…敵らしき株達は目視出来ない。

私は、白帝城の答えを待たずに走り出した。

「こっち!」

「…流石に、耳、いーねぇ!」と九尾が冷やかしながら走り出す。魔剣も私の後を追ってきた。


100mは走ったか…。湖の畔に生える木々の合間を抜けると、やっと結界に阻まれた人物達を目視する事が出来た。

てか、コレ結界広過ぎでしょっ!

それにしても、こんな先の音が拾えるとは…私凄いな!まぁ、静かだから…音が拾い易いってのもあるけれど。

真っ黒いフードを頭から被り、見るからに怪しい人物が五株、手に持つ剣で白帝城の結界を切り付けている。今の結界は、物理無効になってるらしいから、無駄な足掻きだ。


「いくぞっ!」

魔剣が、愛剣を抜き五株組へと突っ込んで行った。

「また先走る…全く…輪は危ないから、木の上に避難しとけよ。」

私は、九尾が指差す木に駆け上り、枝の上から魔剣達を見守る事にする。

怪しい株達は、走り寄る魔剣に慄くように距離を取った。

魔剣が結界を抜け、斬りかかる。

ガギンッ!と剣が撃ち合わさる音が周囲に響く。

魔剣の背後から斬りかかろうとした人物を、九尾が蹴り飛ばした。相手は吹っ飛び、木の幹に強か身体を打ちつける。相手は気を失ったらしく、ぐったりと動かなくなった。

残る四株が、魔剣と九尾を取り囲んだ、その時…。


「やっと、見つけましたわっ!」

何処からともなく、少し甲高い女性の声が聞こえてきた。

え…何?

私はキョロキョロと辺りを見回して

声の主を探すと、少し先に小高い丘があり、その上に女性が佇んでいる。

長い銀髪がヴェールのように、月光に照らされて揺れている。

「再会を邪魔だてするとは、不届者めらがっ!!」

女性が、腰に差し込んであった扇子を

バッと開いた。

あ、何か…ヤバイ?

嫌な直感が走る。それは、九尾も感じたみたいで、魔剣と自分に一瞬で防御膜を展開させている。

女性が、キラキラとトリコームを撒き散らしながら、優雅に扇子を仰ぐと、旋風が巻き起こり、周囲を蹴散らしながら九尾と魔剣に迫って来た!


これは…旋風と言うより、竜巻だっ!私も風に巻き込まれぬように、枝に思い切り爪を食い込ませてしがみつく。

竜巻は、唸りながら周囲に自生している草花を根こそぎ空へ巻き上げる。

「九尾ーっ!魔剣っー!」

あんなの喰らったら、ひとたまりも無い!私はギュッと眼を閉じて、二人の名前を叫んだ。


ビュウビュウと唸るような風の音が止み、私は最悪を脳裏に浮かべながら眼を開ける。二人が吹き飛ばされてたら…どうすれば良いんだろうか…。

恐々と、二人の姿を探す。

すると、

「九尾!魔剣!」

二人は腰を抜かしたように、地面にへたり込んでいるのを見つけた!

私は枝から飛び降りる。駆け寄ろうとして、直ぐに立ち止まった。…視野に、丘から女性が駆け寄って来ているのが見たから。

「え?」

女性は、一目散に駆け寄ると、そのままの勢いで座り込む九尾の胸に飛び込んだ!

「えっ!?」

九尾と魔剣が、唖然としながら声を揃える。

「やっと、見つけましたわ!

九尾様をお見かけしたと、話を聞いて…ずっと探していたんですのよっ!私を忘れたとは、言わせませんからっ!」

女性が、九尾の胸ぐらを掴んで、限界まで顔を寄せる。

「おまっ…白夜かっ!?」

九尾が慌てふためきながら、顔を仰け反らせ逃げようとする。

え…何、コレ?

「貴方の、『許嫁』ですっ!!」

女性は、意地でも離すものかと、ギリギリと胸ぐらを握り締めた。

「…はい?」

九尾が、呆然と。

私と魔剣は呆気に取られて…。

何やら、面倒ごとに巻き込まれた気がして、魔剣と視線を交わし合った。


「読んでくださり、ありがとうございました。」

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