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真眼の魔技師と太古の魔導書  作者: 直岩
第一章 真眼の覚醒
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第11話 ベルク・ローガス

 放課後、俺達はベルクさんに呼び出されるまま保管庫の前に来ていた。俺とリーナ、芽依の三人が到着すると、すでにリカ姉がにいた。

 

 「あら、遅かったじゃない。人を呼び出しといて遅刻するなんていい度胸ねレン」

 

 「なんで俺にだけ言うんだよ。大体、遅くなったのはしょうがないだろ、授業受けてんだから」

 

 今日は、練習場で魔法を使った後、片付けをして疲れてたので授業を受けていた。

 

 「受けてたって…全部寝てた気がするのだけど」

 

 うん。訂正しよう。午後の授業はほぼ、寝ていた。寝てると先生に魔法を撃たれるわけだが、最近ではその衝撃にも慣れたのか、なかなか起きてくれないと林田先生が嘆いていたらしい。

 

 「うーん…貴方にとってはやった授業でしょうけど、寝てると他の子達に良くない影響を与えそうねぇ。受けるのならせめて寝ないようにしてちょうだい」

 

 リカ姉に注意される。眠いものは仕方がないのだと、言いたいところではあるが、

 

 「気を付けるよ」

 

 と、生返事。だがそれを聞いたリカ姉がこんな事を言い出した。

 

 「うーん、ただ注意しただけじゃなんだし……そうね。この後、皆でご飯行きましょうか、もちろんレンの奢りで」

 

 「えっ」

 

 「賛成ー!」

 

 「なんで俺が」

 

 「私、ラーメンがいいなぁ」

 

 「ラーメンかぁ。たまにはいいわね。リーナちゃんも何か希望ある?」

 

 「いや、だから」

 

 「入り口で騒いでないで行かないと。早く済めばそれだけ早く帰れるのだし。あ、…それじゃあ私もラーメンで」

 

 「……一人、五百円までだからな」

 

 もうこの際、奢るのは仕方ない。

 家の近所の定食屋ならラーメンもあったはず。そこだったらまだいいか。あそこ安いし。

 

 「ふっふん、女の子にそれじゃ足りないよ? だから二千円までがいいなぁ。デザートも欲しいし」

 

 ここぞとばかりに何か言い出す芽依。

 

 「はあ?どれだけ食べる気なんだよ?そんな事言ってると太く――いえ何も言ってないっ痛、すみませんっ!」

 

 

 なんだかんだで、一人千円までに値上げさせられてしまった。なかなか痛い出費だと頭を抱えているとリーナが一言。

 

 「どうでもいいのだけど。早く行かない?」

 

 

 

 

 ◇

 

 「ベルクー?言われた通り来たわよ」

 

 「お嬢様。それに皆さま方も、よくお越しくださいました。では早速ですがこちらへ」

 

 俺達は、先日来た場所へと案内された。前回来た時とは違い、色々な機械が置かれている。中でも見た目も、変わっているのは中央の箱。無地だった黒い箱には幾つもの魔方陣が描かれ、箱を囲む様に巨大な装置が置かれていた。

 

 「うわー…なんか物々しい雰囲気だね」

 

 「確かになぁ。高そうな機械とかいっぱいあるし。あの魔方陣もすげえな」

 

 「あれは『解封』の魔法を掛け合わせているの。でも一回あれで試したと思うんだけど……」

 

 「ええ。このままでは前回試したときと同じで効力は打ち消されてしまうでしょう。……ですが今回は違います。レン様、この装置に向かって今日撃った魔法をもう一度使ってほしいのです」

 

 「あの、魔法を? あんなもん何に使うんですか?」

 

 あれはただ、魔力を許容量を越えて使う事で、溢れさせただけなんだが。

 

 「……なるほど。確かにレンの魔力は、普通の人と違う感じがしたわ。前に来たときに言っていた変化ってもしかして?」

 

 「ええ。恐らくですがレン様がこの近くで魔法を使った影響かと思われます

 。調べたところ反応があった数回には、近くの第1練習場であなた方が訓練を行っていました」

 

 確かに、暴発とはいかずとも大きな魔力を、第1練習場で使った記憶があるな。

 

 「ふうん。んじゃ、一発」

 

 「ち、ちょっと待ちなさいって。何が出てくるか分からないし、準備するから」

 

 そう言ってリカ姉は魔法を使い、俺たちの周りに魔力で作られた結界を作った。

 

 「ふうっ、これでもし何かあっても、怪我くらいですむんじゃないかしらね」

 

 怪我だけって、なにそれ危ないのか。

 

 「ちょっと止めたくなってきたんだけど」

 

 「いいから早くやってよレンくん。ご飯遅くなっちゃう」

 

 「はあ…じゃあやるけど。今日のようなヤツで本当にいいのかベルクさん?」

 

 「ええ、お願いします」

 

 念のために確認したが良いようだ。あんまり意味が無いと思うんだけど。

 

 俺は魔力を集中させ、『火球』の魔方陣を装置の中心へ出現させる。練習場でやったように魔方陣の許容量を越える魔力を注ぎ込むと、魔方陣が軋み始めた。

 

 すると、同調するように箱に描かれた魔方陣が明滅している。

 

 「おお、これで……」

 

 「ベルク?貴方ちょっと様子がいつもと……?」

 

 「リカさん、私、嫌な予感がするの」

 

 「奇遇ね、芽依ちゃん。私もよ。……レン!ちょっと一回止めなさい!」

 

 大きな声でリカ姉が止めろと言うが、もう魔方陣には亀裂が入っていて止めようにも止めることが出来ない状態になっている。

 

 「あー、無理だリカ姉。もう暴発する」

 

 ずがぁっぁぁぁん!!

 

 言った瞬間、魔方陣が壊れ、中に蓄積されていた膨大な魔力が爆発音と共に溢れだした。

 

 その時、エリアーナが声をあげた。

 

 「ベルク!?何を――」

 

 「ふふっ、ふははは」

 

 溢れた魔力が装置に吸収された瞬間、ベルクさんが『箱』に向かって笑いながら走り出した。

 

 何をするのかと思ったときにはベルクさんは、箱に近づいて強引に、蓋をこじ開けようとしていた。

 

 「おい、リーナ、なんか分からんけど、これでいいのか!?」

 

 「わ、分からないわよっ!こんな強引なやり方……一体何を考えているのベルクは!?」

 

 混乱している俺達を余所に、ベルク・ローガスは、力を解放し続けて、『箱』を、開こうとしている。

 

 「ああああっ!!これで、どうだイルファウスト・ラグネイトォォォ!! 貴様の遺産は―私が貰い受けるゥゥ!」

 

 「イルファウスト・ラグネイトですって!?それの遺産!?……じゃあこれは、この『箱』の中身は――」

 

 イルファウスト・ラグネイト。その名前と遺産という言葉。イリアーナが、この意味に気付いた時にはもう遅かった。

 

 

 

 パキン

 

 

 

 乾いた音と共に光が溢れだした。

 

 

 光が収まったかと思うと、そこには蓋が開けられた『空の箱』と、恍惚の笑みを浮かべて佇むベルク・ローガスの姿がそこにあった。その手にはなにか『小さな箱』を、持っている。

 

 ベルクはこちらへ顔を向け、頭を下げた。

 

 「ベルク……?」

 

 「……ああ。ありがとうございます皆様方。これで私は――」

 

 

 

 

 ――貴方を、エリアーナ・レクスを越えられる。

 

 

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