第10話 『箱』
その日の放課後。リカ姉から許可を貰ったとの事で、俺達はエリアーナの執事であるベルク・ローガスさんと会うことになった。
「へえ。保管庫の奥ってこんな風になってるのか」
「私も初めて入るよ!教材とか取りに倉庫まで入ったことあったけど、奥の方は行ったことすら無かったもん」
「ほら、あんまり騒がないの二人とも」
そう言って注意するのは理事長であるリカ姉である。なんか知らないが俺達だけでは心配だと言う事で着いてきたのである。
「あんまり騒ぐとベルクに迷惑だから、少し声を落としてよ」
保管庫の鍵を持って、先頭を歩いていたエリアーナは唇に人差し指を当てている。 どうやら静かにしろと言うことらしい。
「いえ、構いませんよ。お嬢様」
言いながら、保管庫の方から男の人が歩いて来た。
「ベルク?別にここまでにわざわざ来なくてもこちらから行ったのに」
そういえば、一度、リーナに魔法を打たれたときに無事だった。
「私の方も解析が行き詰まっていまして。気分転換になるかと思いまして」
執事というだけあり、礼儀作法や歩き方等、お手本の様な動作をする。
「ベルク。この人達に箱を見せても良いかしら?」
「……ええ。もちろん大丈夫です。ただ、ちょっと計測機器などで散らかっていますので、少々お待ちくださいませ」
そういってベルクさんは箱があると言う奥の部屋へ戻って行った。
「さすがに、急すぎたんじゃないのか?」
「お昼の後、リカさんに許可もらった後に、報告がてら聞いたはずなんだけどね。放課後言ってもいいかって。そしたら何時でも良いと言っていたわ」
「そうなのか?じゃあ忙し過ぎて忘れてたんかね」
見た目には、40代前半といった感じに見えたんだが、実際の年齢はもっといってたりするんだろうか。
「本当に忘れてただけだったら、今度から、ベルクお爺ちゃんと呼んであげるわ」
「それは止めてあげて」
◇
「これが言って箱なんだ。箱って言うよりも棺桶とかみたい」
「芽依、あんまり触ったりしないように。何が起こるか解らないんだから」
数分後、通された部屋には数々の計測器が並び、中心には箱と呼ばれるものが置いてあった。
芽依はちょっと、興奮してるのか駆け寄って触ろうとしていたがエリアーナに止められていた。
「……箱、ね」
「どうしたのレン、具合でも悪い?」
芽依と比べ、その場で箱を見つめているレンが気になったのか、リカーナが声を声を掛ける。
「ん、あーいや。別に具合は悪くないけどさ」
「あ、普段見ない計測器とかいっぱいあるから、実は興奮しているんでしょう」
「俺は別に機械オタクとかじゃないっての。なあ、それよりもさあの箱って……」
ちょっとした疑問をリカ姉にしてみようかと思ったんだが。
「ちょっと芽依ー?貴女ねぇ」
「あはは、ごめんなさいってば」
「高嶋様、その計測器には触れないでくださいませ」
「あーあ芽依ちゃん、計測器に触って怒られてるわ」
箱の方を見ると、テンション高く騒いでいる芽依と、それを注意していリーナとベルクの姿が見てとれた。リカ姉はそれを見て呆れた顔をしている。あいつは、全く。
「もう、十分見たでしょ?これ以上はベルクの邪魔しちゃうから出ましょう?ね、芽依、良い子だから近付かないで、ほら」
「ぶー、良いじゃないちょっとくらい触ってみても」
「だから、何があるか解らないんだから、ちょっとした刺激で危ないものでも出てきちゃう事だってあり得るだから」
「むぅ、レンくんも、近くで見ないのー?」
「良いから、戻ってこい。あんまりベルクさんを困らせんなっての」
「ああー!レンくんまでそんなこと言うし」
「お嬢様のお友だちは、思っていた以上に賑やかですね」
「本当に邪魔しちゃって悪いわね――ほら、芽依、帰るわよ」
「あ、帰るから、服を引っ張らないでー!?もう、自分で歩くってば!」
芽依を引っ張って部屋を一足先に出ていく二人。俺たちも、ベルクさんに挨拶をして後に続いた。
「そういえば、レン」
「何?」
「さっき何か言おうとしてた?」
「ん?ああ、いや何でもないよ」
「そう?なら良いけど。あ、芽依ちゃん、後で説教だからね?」
「えっ」
「それは良いわね。リカさん、私も参加します」
「ええっ、ちょっとレンくーん、助けてー!?」
「騒いでたお前が悪い」
「レンくんまで!?あれ、味方がいないっ!?」
触るなと言われたのに触ったり、計測器をいじったりしてるから怒られるんだと思うんだが。
そんな風に騒いでいる三人を見ながら、俺はさっき見たモノについて考えていた。
あの部屋の中心にあったモノを皆は『箱』もしくは『棺』と言っていた
確かに見た目は黒い箱だ。長方形で人や何かが入っている箱や棺の様な外見ではあった。
だが、どうしてか俺には本の様なものにも見えていた――




