第六話 盗賊団?武器の試運転にはちょうどいいか
「やあ、君たちが護衛を引き受けてくれた冒険者かい? よろしく頼むよ」
交易都市ルミナスへ向かう商業馬車の御者台で、親切そうな商人のおじさんが笑顔で頭を下げた。
僕たちはギルドで「ルミナス行きの商業馬車護衛」という好都合な依頼を見つけ、旅費と食事代を稼ぐついでに馬車へ同行させてもらっていた。
「任せてくれおっちゃん! 俺たちの装備と腕なら、どんな魔物が来ても一散だからよ!」
翔が新調した『赤鉄のグレートソード』をポンと叩いて胸を張る。
馬車に揺られながら街道を進むこと数刻。鬱蒼とした森の立ち木に囲まれた一本道に入ったところで、突如として
馬が嘶き、足を止めた。
「ひ、ヒヒーンッ!?」
「うわっ、なんだ!?」
ガサガサッ、と草むらが揺れ、街道の前後に斧や弓を持ったガラの悪い男たち数十人が飛び出してきた。
「ハッハァ! 運のいいことだ、金目のものを運ぶ商人様じゃねえか!」
「おいおい、ガキどもと女まで連れてやがるぜ。武器を捨てて身包み剥がれな!」
下衆な笑いを浮かべる男たちの中心から、一際デカい体躯をした男が巨大なバトルアックスを担ぎながら歩み出て
きた。
「ひぇっ……あ、あの顔……間違いない! 指名手配中の盗賊団『黒狼』の頭目、ドガだ! 懸賞金が金
貨20枚もかかっている大物ですよ……!」
商人が顔を青くして震え上がる。
((き、金貨20枚!? まじかよ、いきなり高額懸賞金首のイベント発生とかラノベのテンプレすぎるだろ……!
フッ、だが今の僕たちの敵ではないな……!))
「みんな、配置について! 商人さんと馬車を守りながら迎撃だ!」
僕の指示に、全員が素早く反応する。
「へっ、金貨20枚の賞金首か! 俺たちの新しい武器の試運転には丁度いいぜ!」
翔が先陣を切って飛び出し、赤鉄の大剣に火の魔力を叩き込む。
「ファイア・ブレイド!」
ズバッ!と一閃された炎の斬撃が、盗賊たちの前衛をまとめて吹き飛ばした。
「なっ……なんだあのガキの火力は!?」
「隙だらけよっ!」
困惑する盗賊の背後へ、風の魔力を纏った楓が影のように滑り込み、双短剣で武器を次々と弾き飛ばす。
後方から弓を構えようとした盗賊たちには、涼が素顔のまま冷ややかに『氷の礫』と『雷撃』を放って一瞬で無力
化。あかねが突進してくる巨漢の男たちを土魔力の拳で叩きのめし、ゆりが回復と防御の光で馬車を護衛する。
「……影……縛り……」
美緒の漆黒のローブが翻り、伸びた影が逃げ出そうとした盗賊たちの足を地面に縫い付けた。
「クソがぁッ! ガキどもが調子に乗りやがってぇぇッ!」
手下が次々と倒され、激昂したリーダーのドガが、激しい闘気を纏って僕へ向かって斧を振り下ろしてきた。
((おっと、リーダーのお出ましだ。ここは……普通の高校生っぽくギリギリでかわしつつ、裏で僕の全属性魔力
を指先に込めて斧の柄にチョンと触れて破壊……と!))
僕が最小限の動きで斧をかわし、すれ違いざまに目立たないよう魔力を込めた指で触れると――
パキィィンッ!!
「な、なにぃ!? 俺の愛斧が割れた……!?」
衝撃で体制を崩したドガの首元に、僕は『鋼鉄のロングソード』の峰を叩き込んだ。
――ドサッ!
「……ふう。全員、制圧完了だね」
「す、すごすぎる……! あっと言う間にあの『黒狼』を壊滅させちゃうなんて……!」
商人が目を丸くして感動に打ち震えている。
手枷で縛り上げられた盗賊たちを見下ろしながら、翔がニッと笑って僕の肩を叩いた。
「へへっ、優! ナイスアシスト! これでルミナスに着いたら金貨20枚の懸賞金ゲットだな!」
「(……クックック、僕の陰のアシスト(全属性パルサー)に誰も気づいていないようだな……これぞ隠れ最強の醍
醐味……!)うん、みんなの連携のおかげだよ!」
思いがけない大金(懸賞金)と護衛実績を手に入れた僕たちは、意気揚々と馬車を走らせ、目的地の交易都市ルミ
ナスを目指すのだった。




