第五話 旅に向けて
異世界「アストラル」に転移して、ちょうど1週間が経過した。
最初はボロいレンタル装備でゴブリン相手におどおどしていた僕たちだったが、今では街周辺の魔物討伐や採集依
頼を効率よくこなし、冒険者としての頭角を現し始めていた。
「よしっ! 今日の報酬とこれまでの貯金を合わせたら……一人あたり金貨3枚はあるぞ!」
ギルドの酒場で依頼達成の報酬を受け取り、翔が満足そうにコインの袋をジャラリと鳴らす。
「1週間、野宿や安い宿屋で耐えてきた甲斐があったわね。これなら……」
「ああ。そろそろあのボロいレンタル装備を卒業して、ちゃんとした『マイ装備』を買えるな!」
あかねと翔が顔を見合わせてニッと笑う。
僕たちはその足で、街で一番腕が良いと評判の武具店へ向かった。
((フフフ……ついに来たぞ、RPG最大の醍醐味『装備の新調』! 普段は目立たない普通の鉄の剣を買っておいて、いざとなれば僕の全属性魔力を流し込んで神剣クラスの威力を出す……これぞ隠れ最強の美学……!))
店に並ぶ武具を前に、みんな目が輝く。
翔は火の魔力を通しやすい『赤鉄のグレートソード』、楓は風の切れ味を引き立てる『軽量の双短剣』、あかねは打撃力を高める『鋼鉄の護甲』。
涼は二属性(氷・雷)の伝導率が高い『銀の細剣』、ゆりは回復魔法の効率を上げる『陽光の木杖』、美緒は闇に溶け込みやすい『漆黒のローブ』を選んだ。
そして僕は、見た目は至ってシンプルだが耐久性に優れる『鋼鉄のロングソード』と頑丈な皮の胸当てを購入する。
「おぉ……! サビたレンタル品とは手応えが全然違うぜ……!」
「これで、遠出の準備も完璧ね」
新しい装備に身を包んだ僕たちは、出発前に冒険者ギルドへ戻り、受付の女性に「ユグドラシルの大穴」までの道のりについて相談した。
「ユグドラシルの大穴を目指すのですか……!? あそこは世界の中心ですが、ここからだと何重もの危険な地域を越えなければなりませんよ」
受付の女性は驚きつつも、羊皮紙の地図を広げて親切に途中の経路を教えてくれた。
第一の経由地:交易都市『ルミナス』
この街から数日進んだ先にある大都市。物資が豊富で、より高ランクの装備や馬車を手に入れられる。
第二の経由地:迷宮の街『バベル』
巨大な地下ダンジョンを中心に栄える街。強力な魔物が多いが、ここでレベルを上げなければユグドラシル周辺の
魔物には立ち向かえない。
第三の経由地:断崖の砦『アイゼン』
ユグドラシルを取り囲む大穴の直前に位置する最終防衛拠点。厳重な警戒が敷かれている。
「まずは西の街道を進み、交易都市ルミナスを目指すのが一般的ですね。ですが、道中の街道にも盗賊や強大な魔物が出ますので、くれぐれも気をつけてください」
「丁寧にありがとうございます!」
お礼を言い、僕たちはギルドを後にした。
夕暮れ時、街の大きな門の前に立つ7人。
一週間前、身寄りもなくパニックになっていた僕たちはもういない。自分の属性に合った新しい武器を携え、その瞳には力強い意志が宿っていた。
「……行くか、みんな」
「おう! 待ってろよユグドラシル! どんな試練だろうがブッ飛ばして、絶対に元の世界へ帰ってやる!」
翔が背中の大剣を担ぎ直し、楓やあかね、ゆり、涼も力強く頷く。美緒は僕の隣で、新調したローブの裾をキュッと握りしめた。
「(……世界の滅亡を阻止し、地球へ帰る旅。僕の秘められた全属性の力、必要な時が来るまで大切に隠しておくとしよう……クックック)……よし、出発だ!」
僕の合図とともに、7人は夕日に照らされる街道へと一歩踏み出した。
ふたつの世界を救うための、果てしなき冒険の旅が、ついにここから本格始動するのだった。
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