第三話 異世界での初依頼
冒険者ギルドの受付前に設置された、魔力を測定するための透明な水晶。
ギルド職員の女性が、僕たちに向かって優しく微笑んだ。
「それではお一人ずつ、この水晶に手をかざしてください。適性と魔力量を測定し、ギルドカードを発行します」
先陣を切った翔が豪快に手を乗せると、水晶は一瞬で燃え上がるような真っ赤な光を放つ。
「ふ、火属性の超高出力……! 素晴らしい数値です!」
「へへっ、見たか優! 俺の才能!」
続いて楓が鮮やかな緑(風)、ゆりが柔らかな茶(光)、あかねが力強い赤茶(土)の光を輝かせる。
そして涼が水晶に手を置いた瞬間、氷のような青と、バリバリと弾ける黄色い雷光が同時に水晶を満たした。
「な、なんですかこれは……!? 氷と雷の二属性同時適性!? そんな天才、めったに居ませんよ!?」
「ほう……二属性か。悪くない」
メガネのない素顔でクールに呟く涼に、周りの冒険者たちが「あのボウズ凄まじいぞ……」とどよめく。
さらに美緒が手を乗せると、水晶は光を吸い込むような漆黒に染まり、受付の女性が「や、闇属性……!?」と声を裏返らせた。
そして、最後に僕の番がやってくる。
さっきベテラン冒険者に「お前だけ髪色が変わってねえな。魔法の使えない無能か?」と言われていたこともあり、周りの荒くれ者たちが嘲笑混じりの視線を送ってきた。
「ハッ、最後の一人は黒髪のままだぜ? 落ちこぼれに何ができる――」
僕が静かに魔水晶へ手を触れた、その瞬間だった。
――ドドドドドドドッ!!!!
「なっ……何事だ!?」
魔水晶が激しく脈動し、赤、緑、青、茶、黄、黒、白……あらゆる色が目まぐるしく渦を巻き始めた。全属性の同時発現だ。
それだけにとどまらず、水晶がパキパキと音を立て、眩い光でギルド全体を覆い尽くす。
「測定不能……!? 全属性の上、魔力量がギルドの計測上限を超えています……!!」
静まり返るギルド。さっきまで僕をバカにしていた冒険者たちが、開いた口が塞がらない様子で僕を見つめている。
「優……お前、隠してただろ……」
「……ん。やっぱり優はすごい……」
「あはは……まあ、なんとなくね」
苦笑いしながら無事にカードを受け取ったものの、僕たちの手元にはお金がない。
まずは生活費を稼ぐため、初心者向けの「ゴブリン討伐」を受けることにした。
ギルドの物置きで借りたのは、刃の欠けた短剣や皮の胸当てといったボロい「レンタル装備」だ。首を傾げる僕たちを見て、親切なベテラン冒険者のおじさんが笑いながら声をかけてくれた。
「おいおい、そんな状態で依頼に行こうとしてたのか? 魔法なんてのはな、お腹の奥にある温かい塊(魔力)を意識して、身体の外に伸ばす具体的なイメージを持つことだ。炎ならメラメラ燃える炎、風なら刃を思い浮かべな」
おじさんの教え通り、翔がお腹の熱を意識してサビついた剣に流し込むと――
ズワッ……!!
「うおおおっ!? 剣が真っ赤に燃え上がった!?」
「ガハハ! 属性に合わせたイメージさえできりゃ、そんな鉄くずの武器でも魔力が纏ってちゃんと武器になるからな!」
コツを掴んだみんなも次々と魔法を発動させていく。
楓は短剣に旋風を纏わせ、ゆりは癒しの光を咲かせ、あかねは拳を土魔力で強化し、涼は『氷』と『雷』を同時に出現させておじさんを驚かせた。美緒も影を自在に伸縮させてみせる。
僕も体内の膨大な全属性魔力を意識し、ボロい短剣に流し込むと、刃が青白い光を帯びて極上の切れ味へと変貌した。
「……おいおい、全員飲み込みが早すぎるだろ……。特にボウズ、お前のその魔力、化け物じみてるぞ」
おじさんに感謝を告げ、魔法の使い方をマスターした僕たちは、初めての戦場となる深い森へと足を踏み入れた。
「キギャギャギャッ!」
木々の陰から現れた3体のゴブリン。
「みんな、配置について! 涼とゆりは後方サポート! あかねと翔が前衛、楓は側面から!」
翔の炎を纏った剣が一撃を弾き飛ばし、楓が風を追風にして背後へ回り込み、あかねの強化拳が叩き伏せる。涼の
氷と雷が動きを止め、美緒の闇が足を拘束したところを、僕が魔力を込めた短剣で一閃する。
――ドサッ。
あっけなく崩れ落ちる魔物たち。
レンタル装備での初陣だったが、僕たちの連携と秘められた力は、異世界の魔物相手にも十分に通用したのだった。
「よしっ! 初勝利だな!」
「ああ、でも油断は禁物だ。僕たちのサバイバルはまだ始まったばかりなんだから」
倒したゴブリンから素材を回収しながら、僕たちは顔を見合わせ、頼もしく頷き合った。
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