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魔法は無料じゃないですよ?  作者: 魔女見習い
第一章 厄災の魔女
5/10

3兆円の返済のあてがあるという男。頼りは教会にいる司教、実に他力本願。

毎日投稿頑張っていきます!

「私の魔術は一回1000万です」


温かい陽光がキラキラと差す青空の元、

ギィギィと座り心地の悪いロッキングチェアを揺らし、手元の新聞へと目を落とす。


自然の風を浴びながら読む活字はとても優雅な気分にさせてくれる。


メンタルも安定するし、外に出るってのも悪くないなぁ。

……これがひとりなら。


「ちょ、いっせんまん?!

俺の収入が何百回分になる……?」



ここは目の前のあたふた男性──カエサル?さんの自宅。


こじんまりとした木造の建造物に備え付けられたウッドデッキは、少々年季が入っているが手入れはされているようで。



「ちなみにお支払いの猶予は明日までにしておきます。用意出来なければ私はここを去るだけですので」

「え!明日だと?!」


……このオーバーリアクションが視界の隅にちょいちょい入り、ちと鬱陶しい。



「あ、1000万というのは単価です。

昨日私が行使した魔術は5回。

あなたは1000万ではなく5000万を用意しなくてはならないのです」


「5000ッ万ッッ!!」


そんなに唸るように頭を振っても、お金は出てこないんですよ、貧乏お兄さん。



「さて、やかましい貧乏人さんはほっといて、

見出し(トップ)にはどれだけ酷いことが書かれているか拝見です」



────

【ローマ広報 広報紙】


『歴史上最大にして最悪の被害!!

龍の侵攻と邪悪な魔女』



昨日未明、ローマ上空に突如として出現した巨大な黒影は、これまで確認されていたいかなる自然現象とも一致せず、

アレイア教会のアルメスフェスト・レギストス司教はこれを「魔物の龍による侵攻」と正式に認定した。


現場で被害にあった目撃者の証言によると、それは翼を持つ巨大な獣であり、

炎を吐き、石造建築すら瞬時に焼き崩す力を有していたと話す。


観光スポットで人気出会ったフォルズム噴水広場一帯は壊滅的な被害を受け、

複数の兵団が応戦にあたったが、戦況は困難を極めたという。



【空を覆う災厄】


市民の証言によると、

侵攻は一切の前触れなく始まったという。


「太陽が消えたと思った次の瞬間、空が紅く燃えた」

「あれは魔女の仕業としか思えない」


これらの言葉が示す通り、

その残された街の被害は“戦”というよりも超常的なチカラ──天災に近いものである。





【邪悪な魔女の関与】


前述していたがさらに深刻な情報として、

レギストス司教は今回の侵攻の背後に

『一人の魔女の存在』が関与している可能性を示唆している。


その女は黒衣をまとい、

龍を従えるように立っていたとの報告がある。


特徴は以下の通り:

•漆黒の衣装

•翡翠に近い瞳

•白髪の腰丈まで伸びた髪。

•龍と意思疎通するかのような行動


兵団は、この人物を


『龍を従える災厄の魔女』


と呼称し、最優先排除対象に指定した。





─────



「龍を従える──第三者目線ではこういう風に映っていたのですか……」


このローマ新聞の紙面を飾るのは昨日の件──竜の侵攻。


一面にデカデカと「魔女!!」と書かれ、驚天動地の事件と一目見て分かる。




「なあ!魔女」


──む。人が集中して読んでいるというのが分からないのですか。バカタレさんが。


私の眉はきっとくの字に曲がっていたと思う。


「……ローンは不可ですよ」

「ウオオオオアアアアアアアアアッッッッ!!!!!

違うぞ」



……私はノリで驚愕する人を見たことありません。



「大金を工面する唯一の方法、

この国の中心的組織であるアレイア教会、

その最高指導者にあたる──アルメスフェスト・レギストス司教を説得する。


魔女、着いてきてくれ」


「同伴は30万です」




♢♢♢♢♢



あの苫屋のような家から歩いて15分くらいでしょうか。

この男性カサエル?さんの案内で最高指導者という権力者に直談判しに行く道中、

あの戦場(ひろば)へと再び戻って来た。



「……ここを抜けた先にあるのが教会だ」


その視線を辿る先に存在する純白の建物。

遠目からでも十字のシンボルが教会の象徴であると分かる。


「あそこだけ不自然に綺麗ですね」

「運良く被害を免れていた場所もあったみたいでな」


教会はこのまま真っ直ぐ進めばたどり着くのだが、

そこまでの道程は優しくはなかった。


抉れた地面にスス塗れの建物、半壊した瓦礫など昨日の惨状を色濃く映し出し、

私たちの行く手を阻む。



「……どうして……なんでなんだよ……ッ!」

「……グス、うぇぇぇええん!!……」

「……オレなんか、オレなんかが……」


聞こえてくる悲痛な叫び。



──怒り、嘆き、嗚咽、

昨日の賑わいを夢見る者たちはここにはいない。



目の前を歩くカエルサ?……この男性に歩幅を合わせて後ろをついて行く。

少し足早になったと思えば、


「ぃた!……すみません」

急に立ち止まった目の前の彼(名前忘れました)にドン、と頭突きをしてしまった。


反射的に頭を下げて顔を見上げるも、

彼は私に目もくれずにある一点を見つめていた。

それに釣られて私も視線を動かす。




──年端もいかない少年が一人、

瓦礫の山の前で静かに佇む。

その頬を伝う一筋の光。


「……っ、おかあさん……おとうさん……ッ」



隣にいた彼はその少年の元へ歩み寄った。




「……お父さんとお母さんのことは好きかい?」

「……え?」


少年の頭にポンと手を置き、優しい口調で言葉を続ける。


「俺も両親のことが大好きだった。

……大丈夫。キミの痛みが分かる人はそばに居る。二度とこんなことは起こさせない。

この命で救えるなら、俺は戦う。


ローマに栄光あれ」


「…………」



この街に流れる風はまだ冷たい。

──でも、


「私はこの空気が嫌いです」


少年の小さく震える肩と並ぶようにしゃがみこんで、人差し指の先から魔術を発現させる。


私の変化術(ラストスペル)──霧雲結晶(ソリディファイ)


私の指先から放たれる魔術は、頭上の暗雲を瞬く間に凝固させる。

雲は縁から重く垂れ下がり、その色は次第に金属のような質感へ変わる。


続けて、



私の操作術(ラストスペル)──残骸接合(アーキテクチャ)


変化させた雲から生成される糸──雲の糸が地上に降り注ぐ。

その光景は天使の梯子と呼ばれるのに似ていた。


「わぁ……」


その光景を前にして、

陰りを落としていた少年の表情が少しばかり明るくなる。


「心配しなくていいのですよ。あなたは冷えきらない。

あとは太陽が昇るだけですから」



降り注ぐ雲の糸は瞬く間に地上の瓦礫、崩壊した街を修復していく。


昨日の記憶を頼りに瓦礫などを繋ぎ合わせていき、あの綺麗でワクワクする広場を復元していくイメージする。

昔に習った建築座学に倣い、内部の支柱を立てていき、印象的であった柱頭を残しピラスターなどの装飾、細部の構造は見慣れた魔女の国(じこく)風にアレンジする。



「!!魔女……お前……」

「シッ……変なのに絡まれますよ。

目的はお金の調達です。ならば寄り道してる暇はありません」


そう言ったものの、私が一番お節介を焼いている気がする。


でも私にも分かるから。

──心が癒えるのは、時間でしか解決出来ないのは……。



「心に空いた穴を埋めるのには本がオススメですよ」


フゥとひと仕事終えた私は、少年にそう告げて立ち上がる。

寄り道をするのはここまでです。



「……ありがとう。あの子、嬉しそうだった」


別れをつげた後、

彼は私に改めて向き合うと深々と頭を下げる。



「あの子の傷を癒せるのはあの子自身です。

私はそのお手伝いをしたまでです」


これは突き放して言ってる訳でもなく、

経験則からくる自論だ。



「……そういえば名前聞いてなかったな」

「…………」

「す、すまん。俺はカエサルだ。

──あんたの名前、聞いてもいいか?」



カエサルさんでしたか。

名前……そう言えば魔女としか呼ばれていなかったな。


「……ゲビル。ゲビル・クニャージです」




「ゲビル……そうか」


カエサルさんは私の名前を復唱すると、

何故だか笑みを浮かべた。


──そうだ、この人に伝えなくてはならない事があった。


「……カエサル──のお兄さん」

「なんだ?」



「先ほどの魔術の行使が二回──2000万追加で

7000万となります」





さて、目的の地はもう目の前だ。


これから少しずつ小話を挟んでいこうと思います。


ローマという(イギリスですが)は、古代ローマの初期の方っぽい感じで書いてます。

国力は魔女の国の10分の1以下と他国と比べても弱小なイメージです。

魔女の国は他国と比べると技術や戦闘面で抜きん出ており、ゲビルが自国と比べてしまうのも悪気がある訳ではありません。


あとゲビルは本は後ろから読むタイプです。

(新聞も同じ)


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