2:新しい国へ
「入れ」
「蜘蛛の巣アートに拷問インテリア、血のアロマに鉄格子の扉──。
ゴシック調で素敵なお部屋ですね、ありがとうございます」
「自分の身分が分かってんのか。
この”忌まわしき魔女“め!」
「そんなに怖い顔しなくても……わーわー!入りますよ入りますから!
槍がくい込んでる!怖い痛い!」
私は現在、牢という監獄にぶち込まれようとしている。
体の自由を奪われ、少ない身ぐるみを剥がれ、槍と鎧を装備した男性たちに突かれるという辱めを受けている。
どうしてこうなった。
順を追って説明しよう。
────
「うわーぉ……これが異国の風……。
初めて感じるのにどこか懐かしい! 」
Yさんの概念魔術は無事に近隣諸国を繋ぎ、
扉の先は見たこともない街が広がっていた。
先ずはパッと見リサーチ。
街の雰囲気は自然が多めかな?
建物は石造りっぽい?アーチ状や丸みを帯びてるのが特徴で、何故か所々欠けている……なんか棒状の柱多くない?
人もそこそこいて栄えてる感じする。
服装は軽装──下着?
絹や綿のような素材を活かしたシンプルイズベストって感じで、凝った服飾の軍装ワンピース姿の私がかなり浮いてるよ。
そうだなぁ、一言でいえば
なんか古めかしくて……
お金が無さそうだ。
──いやいや!
Yさんにはしっかりお金がありそうな国と伝えたんだ!
魔女の国みたいに自走式掃除機とか万能AIai傘並の利器が潜んでる可能性がまだある!
♢♢♢♢♢
「うわー!!貧困!辺境!辺鄙っ!!」
名前も判明した。ローマという国らしい。
街の人が自虐的に辺境のクソ田舎っぺ国家ローマと言っていたからだ。
自国民が言うならそうじゃん!
どうしよう……お金稼ぐのに最悪の地だ。
で、でも!先入観で何もやらないのは良くないよね!
ここがダメなら国を変えればいいだけだし。
ちょっと頑張ってみよう!
実は私には考えがあった。
…………。
「……よし、ポップも出来たっ」
『爆誕!ゲビルの魔術DEお悩み解決所!』
そう、なんでも屋開設である。
学びも技術もない私が稼ぐってなったら魔術を売るしかないからね。
ちなみにこの出来栄えの良い看板は、そこら辺の廃材を操作術でカタチどったもの。
私のセンスが光る。
ローマ人達も興味津々に(好奇な目で)こっちを見ている。
よし、ローマ国民の心に擦り寄ってやったぜ。
「さぁさぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。
私魔女ゲビルのなんでもお悩み解決屋、開店だよ〜
料金はお気持ち良い値でどぞー!」
「ま、魔女!!」
「殺せ!」
「……え?」
────
と、いうわけで。
魔女という理由で私はここにいる。
「魔女め、処刑を行うそのときまでこの牢獄で眠っていろ」
怖い顔をしたお兄さんがガチャンと牢に南京錠を掛ける。
牢獄っていう割には掘っ建て小屋に檻が入ってるだけのガバガバセキュリティ過ぎる。
私以外に囚人は誰も居なさそうだし、脱獄でもされたのかな?
まぁ、こんな小屋でも今の私には十分なんだ。
大人しく着いてきたのは家が見つかるまでの間、雨風を凌ぐ場所が欲しかったから。
「にしても、こんなので拘束したつもりかなぁ」
私の手首は現在、背中側でぐるぐる巻きに縛られているのだ。
自由は効かない、普通ならね。
《私の操作術──拘束解除》
魔術を唱えると、スルスルとひとりでに紐が解けていく。
大罪魔術の7番目にして最弱と言われる色欲だが、これほど使い勝手のいい魔術を持てて、私は最高に幸せである。
「これは亜麻糸かなぁ?拘束具がただの糸って、よっぽどお金に困ってるんだね……」
なんか全体的に警備が緩いし(監視員が一人って)、異様に魔女に怯えているしスゴい弱そうな国だ。
私一人で落とせそうなくらい。
「うがー!」
「ひっ……」
少し威嚇してやったら小鹿さんみたいになってちょっと面白い。
「試して見ようかな」
《私の操作術──完全解錠》
拘束具だった糸を鍵のようにカタチ取る。手触りフワフワの強度よわよわマスターキーの完成っ。
カチャリ……。
あーやっぱり。鍵なんてあってないようなものじゃない。
「ッ!ま、魔女め!ここ、これ以上すす好き勝手にはさせなひゅ!」
「……大丈夫ですよ。しばらくここで足を休めて、次の国に行きますから」
解錠した南京錠を次は私側から掛けてプライバシーを確保する。
……私の人生でこうして敵視されるのは少なくない。
元々ガサツで人とあいまみえない性格だからっていうのもあるし、自分から心を開くことなんてあまりない。
それにお国柄、異種族と権力争いの戦争ばっかしてるから必然敵が多いんだよね。
私も何体のウルフやゴブリンを殺したことか。
……ハァ、昔のことに思いを馳せても仕方ない。
ちょっと寝るよ。
……
…………?
うーん、なにやら外が騒がしい。
バアアァン!!!
「どわーーー!!!」
「っ!《私の操作術》──!」
一瞬の出来事だった。
牢獄もとい掘っ建て小屋が強烈な衝撃で吹き飛んだ。
咄嗟に発動した私の魔術で瓦礫の下敷きになるのは防げたが……。
「お兄さん、生きてますか?」
「あ、あぁ……」
ん……この話の通じなさそうな敵意は──
「ッ!な……なんだよ……!?」
──アイツは!!
「……ドラゴンは初めてですか?お兄さん?」




