ルクのステータス
父とガウルとの話し合いが終わり、ガウルの部屋へと戻った私たちは、明日の出発に向けて予定のすり合わせを行った。
「ディナまでは、いつもは乗り合い馬車を利用していますが、今回は馬車を貸し切りましょう。朝早いですが、大丈夫ですか?」
「えっ、馬車借りるの? 私は乗り合い馬車でも大丈夫だよ!」
「いえ、セリアさんに窮屈な思いをさせたくありませんし、ルク様も移動中バッグの中にずっと入ったままでは窮屈でしょう」
ガウルはルクの方へ穏やかな視線を向けた。
ルクもその配慮が嬉しいのか、ガウルの言葉に満足げに頷いている。
「ありがとう、ガウルお兄ちゃん! えっと、明日の出発の前に一つお願いがあるんだけど……バルカスお兄ちゃんのところへ寄ってもいいかな?」
「バルカスさんのところへ、ですか? 分かりました。先にセリアさんをバルカスさんの所へお送りしましょう」
明日のスケジュールはスムーズにまとまった。
(ガウルお兄ちゃん、さすがだなー。段取りも完璧!)
予定が決まったので「おやすみ」と挨拶をし、ガウルの部屋を後にした。
自分の部屋へと戻ると、部屋の窓から月の光が差し込んでいた。
明日の支度を整え、ふとベッドの上でくつろぐルクに視線を向けた。
彼は、私の気配を確かめるように片耳を動かす。
(そういえば、ルクのステータスってまだ確認してなかったな)
私はルクの隣に腰を下ろし、少し悪戯っぽく微笑みかけた。
「ねえ、ルク。鑑定してもいい?」
「えっ? 主、まだワイのこと鑑定してへんかったんか?」
ルクは心底驚いたような顔をして、呆れ果てたようにため息をついた。
「主はのんびり屋やな。普通、鑑定スキル持ってんねんから、聖獣と契約したら真っ先に鑑定するやろ」
「だって、勝手に鑑定したら失礼でしょ。人族のルールじゃ、相手のステータスを盗み見るようなものだし、トラブルになるって聞いたし……」
「ワイは生まれた瞬間、主のこと鑑定したけどな。まあええわ、ワイのほうが鑑定レベルは高いから全部は見れへんかもな」
「頑張ります……」
ルクは「はいはい」と適当に返しながら、私の鑑定を受け入れるという意思表示なのか、私の方を向いて座りなおしてくれた。
私は呼吸を整え、鑑定スキルを発動する。
「鑑定!」
私は思わず息を呑み、目を見開いた。
【鑑定結果】
ルク
レベル:1
体力:650
魔力:8,500
魔法属性:風、土、聖
加護:神の使徒ミカエルの寵愛
スキル:鑑定、魔力賦与、聖域の箱庭、神眼
《さすが聖獣様です。レベル1でありながら、能力値が高いです》
ナビから見ても、ルクのステータスは高いようだ。
レベル1にもかかわらず、既に体力は650もある。
姿はリスで可愛らしいが、さすが聖獣。
「ねえルク、『鑑定』以外のスキルって、どんなことが出来るの……?」
「ああ、それか。魔力賦与っちゅうのは、ワイの魔力を他人に一方的に注ぎ込んで、魔法の威力を跳ね上げるスキルや。主との間でお互いに魔力をやり取りするのとはちごーて、ワイからの強制的なブーストやな。聖域の箱庭の方は、どんなにドロドロに穢れた場所でも、ワイの周りだけは綺麗なエリアに保つ力や。あと『神眼』は、うわべの姿や評判に騙されんと、その者の魂の純度や本来の資質を見抜く力や。これがあれば、誰がホンマに信頼できるか一発でわかるっちゅうわけや」
ルクは得意そうに鼻を鳴らした。
「要は、ワイがおればどこでも安全やし、誰でも最強にできるっちゅうことや!」
「……すごすぎるよ、ルク」
私は驚きつつも、頼もしいルクの存在に胸を撫で下ろした。
そして、ステータスの中でも特に私の目を引いたのは、「神の使徒ミカエルの寵愛」という加護だった。
「ミカエル……様?」
私は独り言のようにその名を口にする。
ミカエル。
前にリズが語ってくれた、神の使徒の名前だ。
「ルクは、ミカエル様に会ったことある?」
私が尋ねると、ルクは何かを思い出すように顎に手を当てる。
「せやな、何度か会ったことあるで」
「ミカエル様って、どんな姿をしてるの?」
「んー、せやな。ミカエル様は気分屋やから、会うたびに姿がちゃうんや。ある時は羽を生やした天使の姿やし、ある時は小さな鳥の姿でワイの前に現れたこともある」
ルクはまるで近所の友達の話をするように、さらりとそう言った。
「ルクはミカエル様と会ったことがあるんだね。加護を貰うぐらいだもんね」
「ミカエル様が『世界を正しく導くために必要』とか何とか言ってた気がするな」
ルクは自信たっぷりに胸を張り、ドンと自分の胸元を叩いた。
「……そっか。ルクの主として恥ずかしくないように頑張るね」
「当たり前やろ。まぁ、主がどんだけドジ踏んでも、ワイが付いてるんやから安心しい」
ルクの満足げな表情を見て、私は思わず笑ってしまった。
聖獣としての強さを隠そうともしないその態度が、なんだかとても彼らしい気がしたからだ。
この先どんな出来事が待っていようとも、ルクと一緒ならきっと大丈夫。
ブックマーク、評価、リアクション、ありがとうございます!




