セリアは聖女!?
短めですが、お楽しみ頂けたら幸いです。
聖獣という言葉が持つ重みに、ガウルとバルカスは言葉を失っていた。
しばらくの沈黙の後、ガウルが口を開く。
「……セリアさん。ルク様が聖獣ということは、セリアさんは……『聖女』なのでしょうか?」
私は大きく首を横に振った。
「ううん、違うよ! 私は聖女じゃないよ」
私がそう答えると、テーブルの上でルクが小さく鼻を鳴らした。
「せや。わいも聖女やと思うて、卵から孵ってすぐに主のことを鑑定したんや。けど、主には聖女の称号がなかったんや」
ルクの言葉に、ガウルとバルカスがピクリと反応した。
バルカスが怪訝そうに眉をひそめる。
「……おい、今『主』と言ったか? ルク様が、この子を『主』と呼んでいるのか?」
「……契約したということでしょうか? 聖獣と契約を交わすなんて、聖女でなければ不可能なはずですが……。やはり、セリアさんは……」
二人の問い詰めるような視線に、私は目を逸らしてしまう。
ルクは小さく肩をすくめて、尻尾をふわりと揺らした。
「そんなん、わいに聞かれても知らんわ。聖獣は聖女の近くで生まれることが多いし、見つからんまま次の聖女を待つこともあるんや。ただ、今回に関して言えば……なんやろな、主が魔力が桁違いに多い上に聖魔法の適性もあるし、なんか知らんが惹かれてもうたんかもな。わいも、まさか聖女じゃなくても契約出来ると思てへんかったで。まあ、そのおかげでこんな美味いモンにありつけてるんやから、文句はないで!」
ルクの言葉に、バルカスは驚いて声を上げた。
「な、な、な……セリアお嬢ちゃんは魔力が、そんなに多いのか?!」
(あ、バルカスお兄ちゃんは、私の魔力が多いとか知らないよね。バルカスお兄ちゃんと違って、さすがガウルお兄ちゃん、セリアの魔法も見てるし何も動じてないね)
ガウルの方を見ると、ルクの言葉に頷いている。
(それにしても、ルクは私の魔力を感じることが出来たってこと? 魔力操作は、かなり上手くなったと思ったんだけどな。魔力が外に漏れてるってこと? もっと練習時間増やそうかな?)
≪セリア様の魔力操作能力は高いレベルにあります。聖獣であるルク様は、何か聖魔法の適性を見抜くような力を持っているのかもしれません。セリア様は聖魔法の適性もあり、また魔力もカンストしているため、ルク様がセリア様の魔力に惹かれてしまったのかもしれませんね≫
(でも、そうなると聖女様は困ったりしないのかな?)
≪そうですね。ルク様も見つからないまま終わることもあるということですので、あまり心配しなくてもよいかもしれません≫
ナビと王都にいると言われている聖女様について考えていると、ルクから声をかけられる。
「……ところで主は四歳やろ、レベル上げはどうするんや?」
「レベル上げ……?」
私が首を傾げると、ルクは深い深いため息を吐いた。
「あんな、スキルっていうのは鍛錬を積めば魔物を倒さんでも上がる。けどな、自分自身のレベルは別や。魔物を倒して経験を積まんと、どうしても上がらんのや」
「魔物を倒す……」
ガタッ!!
ガウルとバルカスが椅子から立ち上がる。
「ちょっと待ってください。セリアさんは確かに魔力が高いかもしれませんが、まだ四歳です!!」
「セリアお嬢ちゃんにそんな危ないことさせるなんて、反対だ!」
二人は私のことを心配してくれて、相手が聖獣ということも忘れているのか反対してくれる。
「分かってる。残酷な話やし、主も怖いと思うわ。けどな、考え方を変えてくれ。別に世界中から常に命を狙われてるわけやない。ただ、たまにアホな連中が聖獣に手を出そうとしてくることがあるんや。レベル1でも、わいもそこそこ強いから簡単に負けることはない。けどな、狙ってくる奴らもそれなりに腕の立つ冒険者が多いんや。やから、早めにそれなりのレベルまで上げとかんと、面倒なことになるんや」
「そうは、いってもな……セリアお嬢ちゃんは、まだ四歳になったばっかりだぜ」
ガウルは私を心配そうな顔で見つめる。
「ルク様といることで、セリアさんが危険な状況になることもあるというわけですね」
ガウルが責めるような目でルクをじっと見つめる。
「そんなに心配せんでも、今回は体も小さいし、すぐに見つかるとかはないと思うで。それでも早めにレベルを上げたほうがええな」
そう告げるルクの言葉を聞きながら、私は複雑な思いで胸がいっぱいになった。
聖獣を狙う者の対策に、私のレベル上げ。
考えれば考えるほど、解決すべき問題は山積みだ。
気が付くと、窓の外は少しずつオレンジ色に染まり始めていた。
(あっ、ガウルお兄ちゃんは明日にはディナに戻るよね。いつも朝早くに馬車に乗っていくし、そろそろ帰ったほうがいいよね)
ガウルは斧のメンテナンスが終わると、いつも翌日には辺境都市ディナへと戻る。
私は窓の外の夕日を見つめながら、三人に話を切り上げるように声をかける。
「……そろそろ、帰らないと。パパとママが心配するから」
私が席を立つと、ガウルもそれに続くように立ち上がった。
「そうですね。セリアさん、宿に戻りましょう」
「おぅ、気を付けろよ。また今度話そう」
「バルカスお兄ちゃん、またね」
鍛冶屋を出て、ガウルと二人で並んで歩く。夕暮れ時の静かな道を歩きながら、ガウルが少し躊躇うように切り出した。
「セリアさん。……夕食が終わったら、少しだけ僕の部屋に来てくれませんか? ……話しておきたいことがあるんです」
私は小さく頷き、分かったと返事をした。
それから宿に着くまで、私とガウルは一言も話すことなく、静かに家路を急いだ。




