文化祭(下)
「はい。次の方入っていいですよ」
「楽しみだね」
「中暗いから手を繋ごうか」
「・・・では、次の方もう少し待ってくださいね」
文化祭が始まり、俺たちクラスの「ホラーハウス」は繁盛していた。
普通の学生が考えた物より段違いで完成度がいいからな。
さっきから中からの悲鳴が止まない。
入ってくる客は興味本位やホラー好き、イチャイチャしたいカップルばかりだが、
中に入るとそんな感情は吹き飛び。
悲鳴を上げ逃げ惑うしまつだ。
彼女を置いて出口に一目散する彼氏もいた。
まったく。
いくら怖くても彼女を置いて出るなんてダメ男だな。
置いていかれた彼女を連れ戻す仕事は俺なんだぞ?
俺は人の女に手を出さない主義だから。
やりたくないんだがな・・・。
あ、ほらまた一人ででてきた彼氏がいた。
・・・・・・はぁ~。
「麗香。ちょっと中入ってくる」
「またなの。だらしない男ばっかりね」
「あ~めんどくせ・・・」
俺は中に入り、置き去りになった彼女を探しに出た。
「まったく。怖いんだったら最初から入るなっての・・・」
独り言をブツブツ言いながらどんどん奥へと進んでいった。
「いくら怖くて気持ち悪いからって、本物じゃねんだから・・・ったく・・」
『ヘヘ。また一組ダメにしてやったぜ』
『カップルなんてなくなればいいんだ』
『さあて、次の獲物はどこだ』
「・・・・・・」
壁越しからアホ共の声が聞こえる。
どうやら、こいつら(男子のほほ全員)が全力で脅かしている。
・・・わからんでもないがな。
だがな、いくらこうしてダメにしても、お前らに彼女が出来る確立があがる訳ではないんだがな。
だって、俺がこうして探しに行って見つけて出口に案内するだけで、
その彼女達が俺に惚れてしまうんだからな。
まったく。無駄な仕事増やさないでくれ。
さて、どこで置き去りにされたのかな・・・っと。
いたいた。
中間地点くらいの所で蹲っている女性を見つけた。
「大丈夫ですか」
「・・・ッヒ!?」
「ああ、驚かないで下さい。出口まで案内しますから」
「あ、ありがとう」
俺は女性に手を差し伸べた。
「立てますか?」
「あ、は、はい」
誰でもやる行動だが、俺がやるだけで。
・・・ほら、落ちた。
この女性も俺の魅力に惑わされてしまった可愛そうな子羊だな。
女性の手を繋いで出口まで案内した。
「はい。もう大丈夫ですよ」
「あ、ありがとう」
出口の外で彼氏が待っていた。
「ご、ごめん。先に逃げ出して・・・」
「・・・・・・」
「では、自分はこれで」
これから起こる事を想定してその場を離れた。
あのカップル今日で終わりだな・・・。
「では、閻魔様。どこから周りますか?」
文化祭が始まって生徒と一般の人達が入り乱れている。
でも、皆楽しそうにしている。
「そうですね・・・」
口元に人差し指を当てながら考える白黒。
たくさんの出店があり決められないようでいる。
「ではまずは、どんな店があるか見て周りましょうか」
「わかりました」
白黒の指示に従い、手を握って褥は歩き出した。
「それにしてもすごい人の数ですね」
「そうですね」
出店を見て周りながら歩く。
「しっかり手を握っていて下さいね」
「はい!」
褥の手を強く握る。
「(ああ、幸せだ)」
「そこの美人のお姉さん!」
店から声が聞こえた。
辺りを見渡したがそれらしい女性はいない。
「・・・余か?」
「そうそう!」
そう言って出店の生徒がこちらに来た。
「よかったらこれやっていきませんか?」
その生徒が出している出店を見た。
「射的か」
「どうです?いい物ありますよ」
出店の中を見るとたくさんのぬいぐるみが飾ってあった。
「ふむ。悪いが余には必要ない」
「え~、そんな事言わないで一回だけでいいですから!」
そう言われても本当にほしい物がない。
ここは断っておこう。
「お譲ちゃんは何かほしい物ないかい?」
隣にいた白黒にその生徒は話しかけた。
「そうですね・・・」
白黒さんは景品であるぬいぐるみを眺めた。
「・・・・・・あ」
小さく呟いた。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ。・・・あのぬいぐるみが可愛かったので」
「どれです?」
「あれです」
白黒が指を指した先を見てみた。
「・・・あの大きな白い熊のぬいぐるみですか?」
「はい。あ、でもほしいってわけではないですよ!ただ可愛いなぁ~って思っただけで」
「わかりました。君、銃を貸してくれ」
「はい!まいどあり~♪」
「え、いいんですか?」
「もちろんです。閻魔様は楽しむためにここに来たのですから、遠慮なさらないで下さい」
「ありがとうございます!」
「(・・・守りたいこの笑顔・・・)」
「さて、ここが伴崎さんの学校ですか・・・」
アンドロイドは伴崎に財布を届けに学校の正門までやって来た。
「・・・これが文化祭・・・」
辺りには人・人・人。
「どこにいるんでしょか」
中に入り伴崎を探す。
「すげ~何だあの美人・・・」
「外人さんかな・・・」
「背が高くてスタイルもいいなんて、羨ましいなぁ~」
「どこかのメイドさんかしら?」
辺りから声が聞こえる。
伴崎の周りにいる人達は美人ばかりである。
このアンドロイドも例外ではない。
しかし、その言葉一切気にしていない。
理由は簡単だ。
彼女は自身を美人だと認識していないからだ。
仮に認識していてもそれが何の役に立つか、役に立っても家事で得することはあるのかと思っている。
「まったく。スケベでドMだけではなく大事な物まで忘れるとは・・・しょうがないご主人です」
一人で探すのにも時間がかかると判断したアンドロイドは誰かに尋ねようと思い近くの店に赴いた。
「あの、少しよろしいですか?」
「あら、お客さんかしら?」
中に入ると大人の女性がフードを被って座っていた。
「(生徒ではなさそうですね。教師と言う学校の教える人でしょうか)」
その店は「占い」と書いてあった。
「いえ、残念ですけど違います。人を探していまして」
「あら、そうなんですか。でも、これも何かの縁と思って少し占ってみませんか?その後でも教える事は出来ますし」
そう言われて少し考え、
「(すぐに渡して帰るつもりでしたが、・・・そうですね)」
「わかりました。ではお願い致します」
「はい。では手もこちらに見せてもらえますか」
「わかりました」
「ヘックション!」
「どうしたの。風邪?」
「いや、そんな事はないと思う。あ、次の方どうぞお入りください」
誰かが俺の噂でもしているんだろう。
「それより麗香。今どれくらい売り上げたんだ?」
「ちょっと待ってね。・・・これくらいね」
電卓で計算した数字を見た。
「お、結構いってるな」
「当たり前よ。どれくらいお金かけたと思ってるの」
「それもそうだな」
文化祭が始まって二時間くらいで売り上げ目標を超えていた。
さすが専門の人達だ。
麗香にも後で何か奢ってやろうかな。
「それにしても、すごい人だな」
受付から覗いて見ると長蛇の列が見えた。
「そうね。出て行く人達が宣伝でもしてるんじゃないの」
「そうかもな。こんなリアルなホラーハウスを安い料金で堪能出来るんだからな。それに・・・」
『きゃあああああーーーー!!!』
中から悲鳴が聞こえる。
「さっきから入ってくる人達の悲鳴も宣伝になってるしな」
「はぁ~。これではいつになったら休憩になるのかしら・・・」
「それなら大丈夫だ。ちゃんと交代制にしてあるしな。俺と麗香は受付終わったらそれで自由だ」
「あら、手際がいいわね」
「まあな。俺頭いいし」
「ふふ。そうやって隠さない所いいわね」
「褒めても何もでないぞ」
「あら、残念♪」
「あ、先輩!」
聞き覚えのある声が聞こえた。
「やあ、由紀ちゃん」
部活の後輩で俺の癒しの存在がやって来てくれた。
「わあ~すごい行列ですね」
ずらりと並んでいる行列を見て驚いている。
「おかげで中は大忙しだよ」
「ん~。先輩と一緒に中に入りたかったんだけどなぁ~」
残念そうに呟いた。
何!?
俺と一緒にあの暗闇の中を腕組して入りたいだと!!
「大丈夫だよ由紀ちゃん」
「え?」
「今から入ろう」
「ちょっと亮治。ダメよ」
「・・・どうしてもか?」
「どうしてもよ。順番は守りなさい」
「・・・・・・」
「・・・そんな子犬のような目で見てもだめよ。私ネコ派だから」
「・・・・・・ニャーン」
「実物じゃないとダメ」
「あの・・・先輩。私もずるして入るのは良くないのでちゃんと並びますから、私の番が来たとき一緒に入ってくださいね」
「由紀ちゃん・・・わかったよ。俺も待ってるからね」
「はい!」
由紀ちゃんは最後尾へと並びに行った。
あ~早く由紀ちゃんと一緒に入りたいな。
「・・・亮治。顔がにやけてるわよ」
ため息を付く麗香であった。
「失礼する」
「ん?」
受付の目の前に誰かが声をかけてきた。
「あ、会長さんですか」
声を掛けてきた人物はこの高校の生徒会長の西村真だった。
「お仕事中すみません」
そしてその後ろに気弱そうな男子が一人。
「えっと・・・会長と副会長がどうしてここに?」
後ろの男子は副会長で名前は・・・・・・。
あ、思い出した。
神崎 美鶴だ。
ぱっと見女の子に見えてしまうその外見と、裁縫・料理が得意で性格は大人しく話す時はおどおどしている。
その外見と性格で一部の女子、主にお姉さん系の方々に人気だ。
・・・一部の男子からも人気だと聞いている。
俺が唯一どうにか名前を覚えた男子だ。
なぜ男子の名前を覚えているかって?
・・・言いたくないが。
俺も女だと見間違えたからだ・・・。
まったくもって情けない・・・。
「なに、ただの視察だよ。問題を起こしているクラスがないか見回ってるんだ」
男のような話し方で会長は言う。
女性らしく話せないのかこの会長は。
「そ、それでですね。えっと・・・中に入らせてもらいたいんですが・・・すみません・・・」
そして、こいつはもっとはきはき話せないのか・・・。
「いいですよ。どうぞ入ってください」
「ありがとう」
「し、失礼します」
そう言って会長と副会長は中に入ってった。
「あの二人どんな反応するのかしらね?」
「さあな。俺には興味がない」
「それにしても、あの会長と副会長って中身が逆よね」
「それのおかげで生徒達からは凸凹コンビって言われ慕われてるけどな」
「中々おもしろいわね」
「どうでもいいけどな」
『きゃああああーーーーーー!!!』
「・・・どっちが驚いたのかしらね?」
「会長だったらまだ可愛げはあるが・・・」
―――ガラガラ―――
出口から出てくる姿を見てみると
「「・・・やっぱり(ね)・・・」」
会長は平然としており、その後ろで隠れている副会長から微かに泣く声が聞こえる。
男が泣くなんて恥ずかしいな。
でもなぜだろう。
泣いている姿が妙に合っている。
女じゃなくて残念だ・・。
「まったく。いつまで泣いているんだ」
「で、ですけど。怖かったんですもん」
「男のお前がそんな事でどうする。情けないぞ」
「・・・すみません」
「だいたい君はいつもだな・・・」
会長に説教をされている副会長。
「・・・性別が逆だったらよかったのにな・・・」
「本当ね。もったいないわ」
「お、説教が終わったみたいだな」
会長がこちらに向かってくる。
その後ろをトボトボとついてくる副会長。
「素晴らしいできだったよ」
「ありがとうございます」
「これは誰が提案したんだい?」
「提案は俺です。あと麗香に専門の方々にきてもらってメイクと衣装・背景を手伝ってもらいました」
俺は正直に話した。
本来は他の所から手伝ってもらう事を禁止にされている。
「あの~それって本来禁止なんですが・・・」
副会長が突っ込んできた。
「確かにな。本来は自分達の手で作り上げてほしい文化祭だが・・・ここまでの完成度だしお客も喜んでいる。大目に見よう」
・・・ほらな。
問題無しだ。
この会長なら目を瞑る事を予想していた。
「いいんですか?」
「ああ。何かあったら私が言いくるめる」
「さすが会長さんですね」
「だが、君には貸し一つだ・・・」
「・・・・・・わかりましたよ」
世の中そう甘くないよな。
「聞きわけがよくて助かる。ではしっかりと文化祭を楽しんでくれ」
「あ!待ってくださいよ~!し、失礼します・・・会長~!」
さきさき歩いていく会長の後ろを早足で追って行く副会長。
「・・・何で正直に話したのよ?」
「あそこで嘘言っても騙せないからだよ。こんだけの物俺達生徒が出来るわけないだろう?」
「・・・そうね」
「だったら正直話したほうがいい。それにあの会長は馬鹿ではないしな。ちゃんと周りの事を考える。このホラーハウスを許可するのも予測出来る」
「やけに詳しそうだけど・・・あの会長の事でも調べたの?」
「調べてねぇよ。話し方と態度で大体の予想は出来る」
「見事な観察眼ね」
「ありがとよ」
「それで貸しが出来たけど大丈夫なの?」
「あ~・・・どうにかなるだろ。俺に不可能はない」
「そうね」
会長に貸しを作ったのは面倒だったが、おかげで営業が出来る。
早く由紀ちゃんの番こないかなぁ~。
「教えて頂いてありがとうございます」
丁寧なお辞儀をして占い屋から去るアンドロイド。
「さて、伴崎さんの場所もわかりましたし、急ぎましょうか」
少し足早に目的の場所に向かう。
「・・・私に想い人ですか・・・」
占いをしてくれた人の言葉を思い返した。
「あなた、恋をしたことがありますか?」
「鯉ですか?いえまだ捌いた事はないですね」
「・・・その鯉ではなくてですね、恋愛ですよ」
「いえ、ありません」
「そうですか。・・・今気になる方はいますか?」
「すみません。そういう感情は持ち合わせていませんので」
「なるほど。近い内に現れると出ていますね」
「そうですか」
「あら、嬉しくないの?」
「・・・よくわかりません」
「・・・そう。じゃあ、あなたが恋に目覚めた時その男性を大切にしなさい。それがあなたの初恋になるから」
「ご忠告ありがとうございます」
―。
―――。
――――――。
「・・・・・・」
恋とは一体何なんでしょうか・・・。
私は人間とは違うアンドロイド。
人は恋をして結婚をし、子供産んで子孫を繁栄させると理解はしていますが。
私にはそんなものはついていない。
私は家事全般をする為に作られたのだから。
実際、占いをしてもらった方は本職でもないので当たるかどうかは多分、九割九部外れるだろう。
占いというのは、当たり障りのない返答をし、如何に相手を信じ込まして自分の領域に持っていき操る。又は相手の精神面を癒したりし、負を跳ね除け、本来の力を発揮させるのが仕事だと私は認識している。
だから、私には必要のないものだ。
「・・・でも・・・」
もし、あの占いが当たったら・・・。
私はどうなるのだろう・・・。
・・・・・・。
・・・何を考えているのだろうか。
私は、私の使命をすればいい。
「・・・さて、この校舎ですね」
教えてもらった校舎に辿り着き、中に入っていった。
「先輩。絶対離れないで下さいね」
「離れないよ」
一歩一歩暗闇の中を歩く。
ああ・・・。
なんて至福の時間だ。
今、俺の隣で必死に腕を抱きしめている由紀ちゃんがいる。
この時をどれほど待ったことか!
―――ムニュ―――
俺の肘に柔らかな感触が伝わる。
そのやわらかい感触を与えている本人はまったく気がついていない。
「・・・俺今なら死んでいい・・・」
「え?」
「あ、いや何でもないよ」
「そ、そうですか」
今日が文化祭でよかった。
普段の日常なら、ここで褥が出てきて死のレースの始まりだからな。
その褥は今白黒さんといるからな。
『ヴぁああああーーー!!』
「ヒッ!!」
曲がり角からゾンビが出てきた。
俺は配置を全部知ってるから怖くはない。
だが由紀ちゃんは、突然現れたゾンビに驚き俺の後ろに隠れる。
背中に柔らかい感触が・・・。
由紀ちゃんってもしかすると、着痩せするタイプか!?
「せ、先輩・・・怖くないんですか・・・」
プルプルと震え、涙目で覗き込む。
「そうだね。由紀ちゃんと一緒だから怖くないよ(むしろ幸せです)」
『・・・・・・ッチ!・・・・・』
壁の向こう側から舌打ちの声が聞こえた。
ハハハ!
妬め妬め妬め!!
お前らには一生味わえない光景だ。
精々そのおぞましい姿でカップル達を脅かすんだな!
「それより歩ける?」
よく見ると由紀ちゃんの両足は生まれたばかりの小鹿みたいに震えていた。
こんなに怖がるんだったら入らないほうが良かったのにな。
俺にとっては得だけど。
「す、すみません。ちょっと無理みたいです」
由紀ちゃんは小言で申し訳なさそうに言った。
そうか。
これ以上歩けないとなると・・・。
仕方がないな。
「由紀ちゃん。前と後ろどっちがいい?」
俺の突然の質問に理解が出来ないでいる由紀ちゃんは
「えっと・・・後ろですかね?」
そう言った。
「了解。じゃあ俺の背中に乗って」
俺は屈んで由紀ちゃんに背中を見せた。
「いいんですか?」
「だって歩けないんでしょ?」
「そうですけど・・・」
「遠慮しないでいいよ」
「・・・私重いですよ・・・」
「それは背負ってみないとわからないよ」
「・・・う~・・・。で、では失礼します」
しばらく考えてから由紀ちゃんは俺の背中に乗った。
「・・・よいっしょっと・・・」
俺は後ろから由紀ちゃんのスカートの中が見られないように、うまく隠しておんぶをした。
「由紀ちゃんって軽いね」
「そ、そうですか///」
「うん」
「・・・先輩の背中って広いんですね」
「そうかな?」
「はい。そうです♪」
何か嬉しそうしているけど、絶対俺の方が嬉しい。
背中に伝わる感触と両手から伝わる股の感触が堪りません!!
この感触を長く堪能したいが為に、ゆっくりと出口に向かった。
その間、モンスター共(男子)からの殺気を受けていたがな。
「フンフンフ~ン♪」
「楽しんで頂けたようですね」
軽いスキップをしている白黒。
「ええ。とても楽しいですよ♪」
両手にたくさんの食べ物を持って頭にはお面をつけている。
「食べ物もおいしいですし。皆さんも楽しんでいますし。・・・それに褥が取ってくれましたしね♪」
褥が持っている大きな白熊のぬいぐるみを指差した。
「・・・そう言ってもらえると嬉しいです・・・」
ああ。幼子みたいに笑顔を向けて。
取れてよかった。
「でも、最後のあれはだめですよ」
しかし、すぐにその表情はなくなり、厳しい顔つきになった。
「うっ・・・」
「いくら落ちないからって弾に術を施すのはルール違反です」
「申し訳ありません」
「今後は気を付けてください」
「はい」
怒られてしまった。
そうだな。閻魔様の為とは言え、ずるをしたから当然だな。
「・・・ん。よろしい!しっかり反省してますね。褥。少し屈んで下さい」
「?。はい」
余の反省を見て満足した表情の閻魔様は、そう指示をしたので従った。
「ナデナデ♪」
「・・・・・・」
・・・頭を撫でている。
小さな手で優しく余の頭を撫でてくれる。
何たる褒美か・・・。
今日は眠れないかもしれん。
「先輩。ありがとうございます」
「いえいえ(しっかり堪能させてもらいました)」
外にでて由紀ちゃんを降ろした。
俺の体にしっかりと記憶させて頂いたよ。
「帰ってきたわね」
麗香が受付から離れてこちらに来た。
「私達の仕事は終わりよ」
「もうそんな時間になっていたのか」
「あの、先輩はこれからどこかに行くんですか?」
「エリスさんの喫茶店に行こうかと思っているけど、由紀ちゃんも一緒にどう?」
「いいんですか?」
「俺はかまわないよ」
「ええ。私もいいわよ」
「では、ご一緒します!」
俺たちはエリスさんがいるクラスへと足を運んだ。
「・・・ここですか」
教えてもらった通りにいくとここのはず。
ちょうど目の前に受付と書いてある場所に生徒がいるから尋ねてみましょう。
「あのすみません」
「はい何ですか?」
「ここに伴崎亮治と言う方はいますか?」
「ああ。伴崎ならついさっきまでここで受付してたけど、その仕事を終えて今はいないよ」
すれ違いですか・・・。
「どちらにいかれたかご存知ですか?」
「確か・・・三年の喫茶店って言ってた気がします」
「それはどこにありますか?」
その生徒から場所を聞きお礼を言って三年の教室に向かった。
まったく・・・。
それにしても
今日はあの方に振り回されていますね。
これは後で、何かしてやりましょうか。
「いらっしゃいませお嬢様」
「・・・・・・」
「伴崎様も来てくれたのですか」
「・・・・・・」
「斉藤様もありがとうございます」
「・・・・・・」
「あの、皆様、どうかしましたか?」
いつも通りの淡々とした口調と無表情でお出迎えをしてくれるエリスさん。
「・・・エリス。その格好は何かしら・・・」
言葉を詰まらせながら麗香が言った。
「この格好に何か問題でもありますか?」
自身の服装を確かめる。
「いや、問題ではないんだけど・・・ここ喫茶店だよね?」
「はい。外の看板にもそう書いてます」
「・・・なんで水着なのよ・・・」
麗香が言った通り、エリスさんは水着姿だった。
「これがこの店の正装ですから」
黒いビキニの水着に腰掛エプロンを着けている。
「わあ~エリスさん綺麗です」
「ありがとうございます」
由紀ちゃんだけエリスさんの水着を褒めていた。
俺は最初の印象でそこまで頭が回らなかった。
それにしても、
エリスさんの水着姿を見れるとは思わなかった。
制服やメイド服から見ても思っていたが、水着で見ると改めて思う。
いいスタイルだ。
出ている所はしっかり出ていて、
歩くたびに揺れる。
日頃から訓練もしているらしいから体の曲線が綺麗だ。
「お席に案内しますのでついて来て下さい」
エリスさんの後をついていく。
「・・・・・・」
エロイ。
不意にそんなことが浮かんだ。
だってしょうがないだろ!
後姿見てるとなんだか裸エプロンみたいに思えてくるんだから!!
誰だ水着にエプロンなど考えた馬鹿わ!!
「伴崎様?」
「あ、・・・何?」
悶々と考え事をして気がつかなかったが席についていたらしい。
「こちらの席にお座り下さい」
「ありがとう」
「・・・・・・」
その場で立ち止まっているエリスさん。
あ、そうかメニュー頼まないといけないのか。
「あ、ちょっと待ってね。今決めるから」
そう言ってメニュー表を見る。
「いえ、そうではありません」
しかし、エリスさんは否定をした。
ん?何が違ったのかな・・・。
エリスさんを再び見た。
別に何らかの変化は見えない・・・そうだった。
これを言わないと失礼だよな。
「エリスさん」
「何でしょうか」
「水着、似合ってますよ」
爽やかな笑顔を振りまいた。
中身はめちゃくちゃ興奮してますけどね。
「ありがとうございます。では、お決まりになりましたらお呼び下さい」
エリスさんは奥の部屋に入っていた。
「エリスさんって先輩の事好きなんですか?」
由紀ちゃんがエリスさんのいつもと違う様子を察知していった感じだった。
まったく、女性はこういう時、勘がするどくて怖いな。
「どうかしらね・・・ねぇ亮治?」
「どうだろうね。俺としては麗香を大事にしてる感じがするけどな」
「え!?それって麗香さんとエリスさんって・・・」
「違うわよ。ただの主従関係よ」
「あ、そうなんですか・・・」
「でも、本人から直接聞かないとわからないね。人の心を読めたらいいんだけどね」
実際どうなのかは俺もわからん。
ただ褥に忠告も受けてないから俺を好きなはずはないと思うが。
「伴崎さん」
ん?この声は・・・。
後ろから聞き覚えのある声がした。
振り向くと
「やっと見つけました」
アンドロイドがいた。
「わあ~外人さんですか?すごい美人です!知り合いですか?」
しまった・・・。
由紀ちゃんはこれがアンドロイドだと知らないんだ。
うかつにバラすと面倒になるな。
「ええ。私の元で働いているメイドよ」
麗香がそう言った。
「(ここは私にまかせなさい)」
「(サンキューな)」
目で言葉を交わしてその場を誤魔化す。
「いえ、私は伴崎さんの奴隷ですが」
「「え?」」
この馬鹿。何言ってんだ!!?
「先輩本当なんですか・・・?」
「ち、違うよ。そんなはずないじゃないか!」
「では毎晩私に首輪を付けて紐を繋いで犬のように扱っているのは何ですか?」
「そ、そんなことしてるんですか!?」
「してないしてない!!麗香何とかしてくれ!」
「亮治それ本当?」
「信じるなぁーーーーー!!!」
―――。
――――――。
色々と誤解を招いた発言があったが最終的に丸く収まった。
アンドロイドは麗香のメイドで名前をアンにした。
その場しのぎで付けた名前だ。
俺が一人暮らしだからたまに家事を手伝ってきてくれると説明した。
「さっきのは冗談だったんですね・・・よかった」
「うん。俺も誤解が解けて嬉しいよ・・・」
「それはよかったですね」
「・・・お前がそれを言うか」
「何か問題でも」
「もういい。それでどうしたんだ?何かあったのか?」
「そうでした。・・・忘れ物です」
「財布?」
「はい、今朝掃除していましたら見つけました」
「そっか。悪いな。ありがとよ」
「では、私はこれで」
アンドロイドは帰ろうとした。
「ちょっと待った」
「何でしょうか?」
動きを止め俺のほうへと振り向く。
「お前も一緒にどうだ?」
「私は食べれません」
「知ってる」
「ではなぜ?」
「人数が多いほど楽しいだろ?」
「よくわかりません」
「俺は楽しいぞ」
「そうですか」
「「・・・・・・」」
こいつは・・・。
いつもあんだけ俺に迷惑かけて楽しんでいるのに、
こういう楽しみ方を知らなかったのか。
・・・しょうがない奴だ・・・。
俺は席を立ちアンドロイドの耳元でこう言った。
「俺はお前もいたほうがもっと楽しいんだよ。だからここにいろ」
「・・・・・・」
さすがにこんな事を皆の前では言えないからな。
「おい、どうした?」
「・・・・・・」
さっきから動かないぞ。
もしかして故障か?
「・・・いえ、わかりました」
今の間は何だったんだ?
・・・気にしてても仕方ないか。
「よし。じゃあそこに座ってくれ」
席に座ると麗香が小声で話しかけてきた。
「亮治。さっき何ていったのかしら?」
「内緒」
「ふぅ~ん」
「何だよ・・・」
「別に。・・・ほどほどにしなさいよ」
「ヘイヘイ」
「先輩。何頼みます?」
「そうだなぁ~。あここの会計俺が奢るから皆好きなの頼んでいいよ」
「本当ですか!?」
「あら、いいの?」
「全然いいぞ。美女に囲まれての食事が出来るんだ。奢りなんて安いもんだ!」
「なら私はここのメニューのここからここまでお願いします」
「おい待て。お前食べれないだろ」
「気分だけでも味わをうと思いまして」
「そんなことせんでもいい!」
「なら、私が頼むわ」
「・・・え?」
「エリス。注文よ」
「はい。お嬢様」
「では私はこのデザート欄の―――」
・・・明日からはシビアに暮らそう。




