Phase26. マーブルズ
※挿絵はAI画像生成システム「Gemini Flash image 2.5/3/3.1(Nano Bananaシリーズ)」で生成した物を主に使用しております。
※カッコ記号の使い分けを行う事で、そのゾーニングをより明確にしています。
基本的なゾーニングの区分は以下の通りとなります。。
「」…[open]会話
[]…[semi-open]暗示
()…[open]テレパシー
{}…[closed]テレパシー(秘話)
<>…[closed]思考
≪≫…[closed]インナーセルフのリアクション
※本ep.内にて「AIを間接的に使用した文章記述」があります。
当該部分を【】で囲んだ範囲として明示します。
当該部分文字数219文字。本ep.全文字数のうちのAI間接利用率2.6%
夢世界、幻想王国の巨大な王宮。そしてその中にある女王ユニの執務室。その部屋の壁は多数の本で埋め尽くされ、ここ一部屋だけでも小さな図書室と言う感じだ。部屋の中には大きな執務机と座り心地の良さそうな椅子。そして執務机の前には4人掛けの応接セットが置かれている。華美な装飾は殆ど無く、とても実務的な空間と言える。
執務机の席に座るユニ。机の上には幾つもの書類や写真が散乱している。そしてユニは腕組みをしてあれこれ考えを巡らせていた。
コンコンコン。執務室のドアをノックする音。
「どうぞ~。待ってたよ! マーブルズ」
席を立ちドアの方に向かうユニ。ドアが開くと、2人の女性が入ってきた。
一人は穏やかな笑みを浮かべた大人の女性。【肩までの落ち着いたライトブラウンのボブヘアで、前髪を分けた上品な髪型だ。衣装は金色の刺繍や装飾が施されたエレガントなローブ風の白いロングドレス。ウエストを太めのベルトで留め、足元には白いショートブーツを履いている】。彼女の名は白鳥ミナミ。幸運を引き寄せたり相手に付与したりする能力を持つ。単に幸運と言ってもその適用範囲は極めて広く、傷病の治癒から願望の実現までほぼ無限に近い。
もう一人は微笑みを浮かべた黒髪ボブカットの女性。【紫がかった瞳が特徴的で、頭部からは透け感のある黒いロングベールを垂らしている。衣装はゴシック調の黒いドレスで、胸元には鏡や鍵・三日月のチョーカーがあしらわれ、スカートには蜘蛛の巣や枯れ木のようなダークな模様がデザインされている】。彼女の名前は黒山スミレ。不運を引き寄せたり相手に付与したりする能力を持つ。単に不運と言ってもその適用範囲は極めて広く、相手を窮地に追い込むばかりでなく、時には自分も窮地に追い込むことさえある。まさに『呪い』のデパートとも言える。なので幸運を引き寄せるミナミとは一緒に行動することが日常となっている。
「二人とも、いつもありがとうね。また今回も大事な役目を頼みたいの。座って! 説明するから」
「失礼します」
ユニは自分の執務席に座り、2人は向かい合って執務室の前にある応接セットの椅子に腰かける。
「えっと、ミナミがブラックコーヒーで、スミレがホットミルクだっけ?」
ユニが指をパチンと鳴らすと、白い衣装のミナミの前にホットのブラックコーヒー、黒い衣装の
スミレの前に、ホットミルクが出現。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「いただきます」
2人ともそれぞれ出された飲み物を口にする。
「ねえ。2人ともレミアの事は覚えているよね」
「もちろんです」
笑顔で答えるミナミ。
「私たちにとっては、ここに導いてくれた大切な人ですから」
遠い目で記憶を思い起こすスミレ。
同じ日に生まれ、隣同士に住み、幼馴染として友情を育んできたミナミとスミレ。
しかし2人が尋常小学校に入学した頃から運命の針が激しく動き出す。
ミナミの家は父親の営んでいた商売が大当たりし、日に日に裕福になっていく。
一方スミレは体調が徐々に悪くなり始める。そしてスミレの両親が乗っていた船の水難事故で他界して「しまい、スミレは親戚に引き取られミナミと離れ離れになってしまう。
そして時は流れ、2人とも18歳を迎えていた。
ミナミの家はさらに栄え、ミナミは高等女学校に進学。才色兼備で運動神経抜群のミナミはクラスでも一目置かれる存在となっていた。
一方親戚の家に引き取られたスミレは、小学校を卒業してすぐ家業の農業を手伝い家を支えた。
しかしスミレの体調は日に日に悪化し、ついには医師からも『持ってあと数年の命だろう』と宣告される。さらにスミレが預けられていた家が大火に巻き込まれ、スミレを残した家族全員が他界。ついにスミレは天涯孤独になってしまう。
病を抱え、行く宛もなく、かつて生家のあった街にたどり着くスミレ。そしてミナミの家に来たところでスミレはついに体調を崩して倒れる。偶然家から出てきたミナミ、それはスミレとミナミの十数年ぶりの再会だった。
スミレを発見したミナミは、すぐさまスミレを家の中に運ぼうとした。そこに現れたのがレミアだ。レミアは二人の様子を心配そうに見守り、スミレに癒やしのテレパシーを送って励ます事しかできなかった。でもその励ましが2人を奮い立たせる。
ミナミは家族や使用人を呼んで、気を失ってしまったスミレを自分の部屋へと運ぶ。それと同時に往診の医師を呼んだ。ミナミはスミレに対して献身的に看護する。その時レミアはミナミとスミレの身体から不思議なオーラが出ていることに気づく。ミナミからは白い色のとても暖かいオーラが、スミレからは黒くて冷たいながらもそのまま放っておけないような何とも言えないオーラが出ていたのだ。
往診の医師が到着し診察。注射を数本打ち、幾つもの薬をミナミに渡してスミレに飲ませるよう指示。そして体調回復後に診療所に来るようにと伝えた。
スミレが意識を取り戻し、ミナミはスミレに薬を飲ませる。そしてミナミはスミレに痛かった部位を尋ね、スミレが痛みを感じていたお腹のその部位にミナミは何気なく右手を当てた。その時レミアはミナミの白いオーラが凄まじい勢いでスミレの痛がっていた部位に注がれていく光景を目の当たりにした。スミレはやがて眠りにつく。
ミナミもスミレの隣に布団を敷き、スミレの身体に手を当てながら眠りについた。スミレをいたわるミナミの行動が、スミレの容体に大きな変化をもたらす。。あまりにも膨大なミナミの白いオーラがスミレの身体を完全に包み込んでいた。
翌朝目を覚ますミナミとスミレ。
スミレも体調はすこぶる良好になっていた。食事を摂った後、昨日往診に来てもらった医師の診療所を2人で訪れる。スミレは持病を説明。改めて幾つかの検査をしてもらい、1週間後に再度来るように言われる。スミレの体調は驚くほど改善し、ミナミの家で住み込みの女中として働くこととなった。
そして1週間後に訪れた診療所で、ミナミとスミレは医師から驚くべきことを告げられる。『持ってあと数年の命』と言われていたスミレの体調不良がほぼ回復していたというのだ。これはまさに奇跡だった。
引き続きミナミの家で働くスミレ。3ヶ月後にはスミレはすっかり健康な身体となり、ミナミの家で献身的に奉公を続けた。
そしてある日の夜、ミナミ、スミレ、そしてレミアは異世界に強制転移させられる。そこは夢世界のユニのところだった。ユニはミナミとスミレの能力を鑑定。それぞれが持つ驚くべき能力について説明を始めた。
ミナミは幸運を引き寄せ、スミレは不幸を引き寄せる。幸運や不運がもたらす効果は広範で、ミナミは幸運の力だけで他の人間を治癒することができ、スミレは不運の力だけで相手を傷つけることができた。
二人が互いの右手をタッチすると、互いの属性が10分間だけ入れ替わる。入れ替わった際の互いの能力は、入れ替わる前の1.5倍に強化されていた。
そして対象の相手を見つめて念じることにより、10分間だけ相手の幸運度/不運度を吸い取ったり増やしたりすることができた。見つめるだけでなく言葉で意思を表明する『言霊』を使うと、効果は1.5倍になった。さらに相手に直接触れて能力を使うと、持続時間が倍の20分になるという。
ユニは2人に夢世界への転生を約束する。そして人間界で新たな仕事を始めるよう提案する。それは『幸運と不運を自在に操る商売』、会社の名は『マーブル・カンパニー』。
2人は人間界に戻った後、『白黒商会』という小さな会社を設立。社会の表や裏で活躍する。
しかし日本は戦乱の時代に突入。そして大規模な空襲によって、2人は他界。直ちに夢世界に転生し、ユニの側近として招かれることになったのだ。
「で、今回はそのレミアが見つけてくれた子たちを、ここ幻想王国と魔界の方に『修学旅行』として招こうと思っているの」
ユニが指をパチンと鳴らすと、ミナミとスミレの前に『旅行計画書』という書面といくつかの資料が現れた。
「2人にはその『修学旅行』の引率者として同行してほしいのね」
資料を手にするミナミとスミレ。
「参加者にレミアもいるんですか!」
スミレが尋ねる。
「うん、でも彼女、今はあなたたちと出会った頃の記憶、完全に消えているの。でもあなたたちなら、彼女の記憶を蘇らせる事もできるはずでしょ。ね、ミナミ」
ユニはミナミに向かってウィンク。
「ええ、やってみせます」
不敵な笑みを浮かべるミナミ。スミレも状況を理解しているようだ。
「ところで、この計画書を見ると人間界の参加者はレミアを含めて4人もいるんですね。ユウさん、ミズキさん、そしてサツキさん」
「そう。3人とももの凄い能力の持ち主なの。ユウは私が次の女王候補として見出した子。ミズキはレミアの遺伝子を体内に取り込んで魔法も使えるようになったアンドロイド。そしてサツキは人間の体に魔物の体と能力を取り込んだハイブリッド。凄いでしょ!」
「…聞いているだけで頭がくらくらしそう」
苦笑いするスミレ。
「で、その今回の『修学旅行』とやらでは魔界にも行くんですか?」
ミナミが尋ねる。
「うん。今その件については、あたしの分身が魔界に飛んで、向こうのジェノや魔王と交渉しているわ」
「魔王様はだいぶご高齢と聞きましたが…」
「うん。私よりもはるかに高齢だから、さすがに主要なことは全部ジェノに任せているの。でも今回はさすがに魔王にも話をしとかないと…って思ってね」
「なるほど…。で、ここに書いている『ククリアーネ』という人物は?」
「ああ、ククね。彼女は魔界の魔法少女。今回旅行に参加する4人とも面識があるわ。彼女が魔界でのサポートをしてくれる計画になっているの」
「魔界の…魔法少女ですか」
「そう。ククちゃんって可愛くて強くてカッコいいけど、とても気が利くいい子なの」
「彼女もやはり前世は人間?」
「前世は優秀なくノ一だったらしいよ。命を落とす前に吸血鬼になっちゃったんだって。今は吸血しなくても大丈夫だって」
「くノ一かぁ…。そうなると運動神経はミナミよりも上かもね」
ミナミの方を見ながらつぶやくスミレ。
「スミレ。あなた、ミナミの運動神経を舐めないほうが良いわよ」
スミレに声を掛けるユニ。
「ミナミの運動神経は恐らくククと同等。ミナミはそこに超幸運のブーストが掛かるんだから、確実にそれ以上になるわね」
「…やっぱりミナミって無敵なのね」
「今まで散々見てきたでしょ」
「あなただって防御能力は絶対的じゃないの。相手の攻撃を失敗させるだけじゃなく、能力を全部止めちゃうことだってできるんだから…」
穏やかに微笑みながら話すミナミ。
「二人は今も優秀な魔女よ! 私が保障するわ!」
ユニが笑顔でミナミとスミレに語り掛ける。
「で、ユニ様。これからの私達の具体的な役目は?」
ミナミが尋ねる。
「あたしの代理として人間界に行って、それぞれの家の保護者に旅行参加の承諾を取って来て欲しいの。ミズキとサツキの保護者は私のことも夢世界・魔界の事も良く知っているから承諾をもらうのは簡単だと思う。それに2人の保護者宛には事前に旅行計画書も送ってあるから、実際には引率者となるあなたたたちの『顔見せ』と、承諾書をもらうのがメインになるでしょうね」
互いに顔を見合わせ笑顔を浮かべるミナミとスミレ。
「ただ、ユウの保護者である母親は夢世界・魔界の存在はもちろんのこと、ユウが優れた魔力や能力を持っていることさえ知らないわ。おまけにせっかちで思考も短絡的だから、口車に乗せるのは簡単でも、少しでも引っかかると一気にこじれてしまう。そこはあなたたちの能力が試されることになるわね」
その言葉で2人に緊張が走った。
「ちなみにユウさんのお母さんには、今回の修学旅行のこと、どう説明したらいいんですか? 何かプランはあるんですか?」
スミレが尋ねる。
「うん。今回は『奨学金を受けるための研修合宿』という口実を考えてる。ペーパーの一般財団法人『夢現育英会』っていうのを既に作ってあるから、そこがユウの大学進学を全面支援するために、事前の研修合宿を彼女に受けてもらうっていう筋立て。ダミーの研修場所も用意してあるわ。あなたたちには財団の理事にもなってもらっているからね」
「ユニ様、それって結構準備期間がかかったんじゃないんですか? それに奨学金支援となると…」
「今回のことを予知してから、時間を遡って仕込んできたよ。それに財団の出資金や奨学金については、私のポケットマネーから全額出したから」
ユニは笑顔で答えた。あきれるミナミとスミレ。
「それでね、今度ミズキとサツキの旅行承諾をもらった後、ユウ達をこっちに呼んで、あなたたちと初顔合わせすることを考えてるの」
「レミアと会えるんですか?」
感激するスミレ。
「ええ。その時に彼女の記憶を蘇らせればいいでしょうね。ユウは理解してくれるはずよ。ユウを交えてユウの母親に会う前の事前打ち合わせをやるといいわ」
「感謝します、ユニ様」
ミナミはユニに深々と頭を下げた。
土曜日の午後、ミナミとスミレはサツキの家の庭にできた世界間転移デートを通って人間界に現れる。
ミナミは白、スミレは黒のビジネススーツ姿。2人とも書類の入ったカバンを持っている。
ミナミとスミレの2人はまずサツキの家を訪問。サツキとサツキの保護者役を務める海老ケ瀬が会談に臨む。海老ケ瀬は今回のサツキの旅行で知りえた情報を公開可能とするよう要求。それは財団の方針に即した主張でもあったからだ。しかしミナミとスミレは夢世界や魔界に対する一般の認知度を理由にこれを拒否。万一公開した場合は実力をもってこれを阻止すると明言。ただし財団内に限定したごく限られた範囲での情報共有は認めた。海老ケ瀬はしぶしぶこれを受け入れた。
またサツキはヨシエ/ククとの個別面会時間の確保を希望。これについては、今回の旅行が人間界の3日間を旅先で10日間に時間拡張して実現することを踏まえ、自由時間の中でサツキとクク/ヨシエとの1対1面談は実現可能だろうと回答。サツキの顔に笑みがこぼれる。
結果、サツキの旅行参加は承認された。
続いてミナミとスミレはミズキの家を訪問。ミズキと保護者役であるミノリが面談に臨んだ
ミノリからミズキの旅行参加に際して提示された条件もいくつかあった。ミズキ専用の栄養補給用ゼリーをあらかじめ夢世界と魔界に送り、旅先でも摂取できるようにすること。これはミズキの生命維持のために必要不可欠だった。またミズキの行動ログをテレパシーネットワークを介して逐次人間界のA国に送り記録することもあらかじめ確認し、その内容に関する秘密保持契約を双方で交わした。
結果、ミズキの旅行参加も承認された。
ミナミとスミレは玄関で2人に経理のあいさつを済ませた。
そしてミナミがスミレの方に声をかける。
[私たちは、夢世界に帰りましょう]
その瞬間、ミナミとスミレの体はまばゆい光に包まれ姿を消した。
「事前にもらった資料で、2人は『幸運と不運を自在に操る魔女』って聞いてたけど、私たちの想定をはるかに超える力を持つのかもしれないわね」
つぶやくミノリ。
「研究対象として興味があるの?」
「当然でしょ」
サツキの問いにミノリは少し微笑んだ。
その日の夜、ユウとレミアはドール・ユニに指示された『夢世界の幻想王国宮殿 女王執務室』へと世界間転移。
「いらっしゃい、待ってたよ」
「ここが…執務室? まるで図書館みたい」
ユウが驚くのも無理はない。ユニの執務室はドアと窓以外の壁一面がすべて本棚になっていて多くの本が収蔵されていたからだ。
「あなたもこういう場所、好きでしょ?」
「これ…全部ユニが持ってる本?」
「そうよ。中には人間界で出版された本も結構あるよ。女王の務めを果たすにもいろんな知識が必要。だからいつでも取り出して読めるようにしているの」
「…あたしに務まるかな。次期女王なんて」
不安になるユウ
「あなたならできる。あなただからできるはずよ。最初は私もフォローするしね」
満面の笑みで答えるユニ。
「そろそろミナミとスミレが来る頃ね…」
ユニがそうつぶやいた直後、執務室のドアをノックする音。
「どうぞ~、待ってたわよ」
「失礼します」
ミナミとスミレが執務室に入ってきた。
「初めてお目に掛かります。菖蒲塚ユウと申します」
ユウは2人に挨拶。レミアは過去に2人と会っているせいか、少し戸惑っているようだ。
「頭を上げて、ユウ。あなたのこれまでの活躍は聞いていますよ。もちろん、あなたが次期女王候補になった事もね」
「え、あ…きょ、恐縮です」
再び頭を下げるユウ。
「私はミナミ、彼女がスミレ。よろしくね」
「よろしくね、ユウ」
スミレが笑顔でユウに声を掛ける。なぜかユウはスミレに不思議な親近感を覚えた。
「よろしくおねがいします、ミナミさん、スミレさん」
ユウの表情にも少し余裕が生まれる。
「ミナミ、スミレ。貴賓室の使用を許可するわ。4人で心おきなく話し合ってきて」
ユニが笑顔で4人に手を振る。
「ユニ様、ご高配感謝いたします」
スミレがユニに頭を下げる。
「さ、こっちよ」
ユウとレミアはミナミとスミレに連れられ、執務室を後にする。そして少し歩いた先にある大きな扉をあけるとそこには…。
「わぁ…」
思わず溜息を漏らすユウ。
気品溢れる豪華な部屋はまさに西洋風のお城の貴賓室といった雰囲気。窓からは宮殿のとんがり屋根の建物も幾つか見える。椅子もテーブルも華やかな装飾が施され気品に満ちている、部屋内にはキラキラ光る魔法の光の様な物が浮遊し、この部屋の雰囲気の特別さをさらに引き立てている。
「ところでユウ、ちょっとレミアの事でいい?」
「あ、はい」
ミナミの呼び掛けに応えるユウ。
「レミアはね、実は今から114年前、私達が人間界にいた頃、私達の前に現れて、夢世界に導いてくれた恩人なの」
「そうなんですか?」
「でも、今のレミアは恐らく、当時の記憶はもう無いのよね」
ミナミの問いかけに少しもどかしい表情をするレミア。
「…ごめんなさい。…お二人をどこかで見かけたような気がするんですけど、どうしても思い出せないんです」
「いいのよ、その事情は私達も分かっているから」
スミレが優しくレミアに微笑む無。
「ユウ、私達はできればレミアの失われた記憶を蘇らせたいと思っているの。ユニ様からも承諾は頂いている。後はあなたとレミア本人の承諾が得られれば、ミナミの魔法でレミアの記憶を蘇らせたいの。ユウ、承諾してもらえる?」
ユウは一瞬レミアの方をちらっと見た。レミアは少し不安そうだ。
「あたしは、れーちゃんが望むなら、望むとおりにさせてやりたいと思います」
レミアに微笑みかけるユウ。
「じゃあ、レミア。あなたはどう?」
今度はミナミがレミアに問いかけた。一瞬悩むが…。
「…お願いします」
レミアは真剣な眼差しでミナミにそう答えた。
「そう。それじゃあなたの手を握らせて」
「…はい」
レミアはミナミに近寄り、ミナミに手を取ってもらう。
「私達は邪魔にならないように、少し離れるね」
スミレとユウは、ミナミとレミアから少し離れた位置に移動。
「それじゃ、レミア。心の準備はいい?」
「はい」
ミナミの身体から強力な白い光を帯びる
[レミア、あなたの中に閉ざされた114年前の私とスミレの記憶、全て蘇りなさい]
その瞬間、レミアも白い光に包まれる。
「ミナミの超幸運の力がレミアの記憶を蘇らせるのよ」
スミレがユウに囁く。
「あれがミナミさんの力なんですね…。とても神々しいですね」
「そう、ミナミにはできない事なんて無いの」
スミレはユウに微笑みかける。
一方レミアの中では明らかに変化が起きていた。封印されていた記憶がまるで氷が溶けるように蘇り、114年前のミナミとスミレとの出会いから2人との突然の別れまでの記憶が、鮮明に、より鮮明に、蘇っていく。
そして2人を包んでいた白い光が消えた。レミアの目からは一筋の涙がこぼれる。
「ミナミぃ…グスッ」
慌ててスミレもレミアの側に駆け寄った。
「スミレぇ…2人ともごめんなさい。突然…何も言わずに消えちゃって…本当に、本当にごめんなさい…」
泣き出すレミア
「いいのよ、レミア」
優しく声を掛けるミナミ。
「記憶が元に戻ったんだね。良かった。良かった!」
スミレの目も少し潤んでいる。
ミナミ、スミレ、そしてレミアの3人がしっかりと抱き合い、そして皆涙を流す。
ユウも思わずもらい泣き。
「良かったね…れーちゃん」
ミナミとスミレとのかけがえのない記憶を取り戻したレミア、今晩は夢世界の2人の住処に泊まって一夜を明かすことになった。ユウがそうするように進言してくれたのだ。ミナミとスミレもユウに礼を言う。
「さて…明日の件で話をしましょうか」
4人は席に着く。そして旅行の件と、明日のユウの母親との面談に向けての打合せが始まった。




