Phase23. 予言
※挿絵はAI画像生成システム「Gemini Flash image 2.5/3/3.1(Nano Bananaシリーズ)」で生成した物を主に使用しております。
※カッコ記号の使い分けを行う事で、そのゾーニングをより明確にしています。
基本的なゾーニングの区分は以下の通りとなります。。
「」…[open]会話
[]…[semi-open]暗示
()…[open]テレパシー
{}…[closed]テレパシー(秘話)
<>…[closed]思考
≪≫…[closed]インナーセルフのリアクション
レルフィーナはユニとともに世界間転移ゲートの中にいた。すでに目の前にはミズキの家の会議室が見える。
≪ゲートアウトするの、ちょっと待ってもらえます?≫
レルフィーナの中にいるインナーセルフの一人、AIのマナがレルフィーナを制止する。
≪どうしたの、マナ≫
同じくインナーセルフのユウが尋ねる。
≪今ゲートアウトすると、人間界では私たちが旅立ってからわずか0.06秒しか経過していません。時間制御を調整せずにそのままゲートアウトすると、向こうでは『行った』『帰ってきた』の認識をすることが困難です≫
≪そっか、人間界の時間を100万分の1に遅くしているから…。ちょっとやりすぎちゃったね≫
もう一人のインナーセルフ、ミズキが舌をペロっと出しながら答える。
≪そこで提案ですが、ゲートアウトする前に人間界の時間圧縮を解除して、しばらく待ってからゲートアウトするというのはどうでしょう?≫
≪しばらくってどのくらい?≫
同じくインナーセルフのレミアが尋ねる。
≪人間の行動心理から考えると、時間圧縮を解除してからゲートアウトするまで3秒ほど待てば、向こうにいる人も『私たちが帰ってきた』ということを視覚的に認識できるはずです≫
≪3秒か…。そういえばコンピュータの操作で無反応時のストレスが跳ね上がるのも2~3秒っていうデータもあるみたいね。いいんじゃない?、それで≫
ミズキがうなずく。
≪ユウとレミアはどう?≫
≪あたしは任せるよ。難しいことはわからないから、それでいいよ≫
レミアは微笑みながら答えた。
≪あたしもそれでいいかな。私たちが旅立ったゲートが消えてから3秒で帰還のゲートが現れるような流れよね。それならいいと思うよ≫
≪じゃあ制御はマナにお願いしていい?≫
≪承知しました≫
「ねぇレルちゃん、なんか難しそうな顔しているけど、何かあった?」
不意にユニがレルフィーナに尋ねてくる。
「え? あ、大丈夫。ゲートアウトするための調整をしていたんで」
「そんなのポーンと出ちゃえばいいじゃん」
ゲートアウトしようとするユニ。
「ちょ、ちょっと待って! いろいろ下準備が必要だから…」
「あなたの能力ってそんなに面倒くさいものだっけ?」
レルフィーナがユニに事情を説明する。
「あ~、そういうことね。確かに消えたと同時に現れたら、向こうも混乱しちゃうかもね。いいよ、任せるから」
ユニの理解も得て、ゲートアウトプロセスが始まる。
そして人間界、ミズキの家の会議室。部屋にはミノリ、ヨッシー、ハヤトの3人が帰還を待つ。
世界間移動の光のゲートが現れ、レルフィーナとユニが姿を現す。
2人がゲートの外に出ると、背後にあった光のゲートが跡形もなく消えた。
「ただいま戻りました」
「ん?」
眉間にしわを寄せるヨッシー。
「…おかえり。説明、お願いできる?」
ハヤトがレルフィーナに尋ねる。
「それじゃ、あたしの方から…」
レルフィーナは夢世界に行ってからの一連の出来事を詳細に説明した。シーベランドの状況、機甲師団から猛攻撃を受けてそれをククが撃退したこと、レルフィーナがシーベランド内に『ドール』を設置し,テレパシー通信による通信インフラを構築したこと、幻想王国の通信環境を整備したこと、そしてククがシーベランドに限定的な呪いを掛けた後魔界に帰ったこと…。レルフィーナはレテレパシー通信用のドングルをミノリ、ヨッシー、そしてハヤトに渡した。同じドングルをククや幻想王国にも渡したこと、ドングルが持つ機能についても説明した。
タイミングを見計らってユニが口を開く。
「…で、ゼルコヴァ君の代わりに私が来ちゃいました。名前はユニム・コーリアです。ユニって呼んでください!」
「…?」
一同、無反応。
「えっと…私、幻想王国で…一応だけど『女王』です。今回は皆さんにお礼と大事なことをお伝えしに来ましたっ!」
「え? 女王…様?」
戸惑うヨッシー。
「こう言っちゃ失礼かも…だけど、…らしくないって言うか、ごく普通の庶民っぽいですよね。あとゼルコヴァさんと違ってこっちの言葉喋ってるし…」
ハヤトもツッコむ。
「堅苦しいのは苦手なんで、いつもこんな感じだよ。あと言葉のほうは魔法でこっちの言葉が使えるようになってるの。だから[友達感覚のタメ口でお願い!]」
レルフィーナはユニがさりげなく全員に『友達感覚のタメ口で』と暗示を掛けた事に気づいた。やはりユニはただ者では無い。
「…タメ口で…いいのね」
ミノリが少しぎこちない様子で口を開く。
「はい!」
元気なユニの返事。ユニの暗示で場の雰囲気が一気に和らぐ。
「あ、あとこれだけは言わせて。幻想王国の女王として、今回の一連の件、…夢世界を勝手に代表して…だけど、本当にありがとうございます」
ユニ、座っている3人にぺこりとお辞儀。
「そしてレルちゃんも、本当に本当にありがとう!」
レルフィーナに向かってこれまたぺこりとお辞儀。
「あ、いや、友達感覚で…」
「友達だから、お礼はちゃんとしないと悪いでしょ。『親しき仲にも礼儀あり』って言うし」
にこやかに答えるユニ。なんだかんだ言って、やるべき事はちゃんとやっている。
「それじゃ、ユニ。そっちに座って」
ミノリがユニに着席を促す。
「ありがとうございます!」
ミノリに一礼して席に座るユニ。
「あたしも…元の姿に戻るね」
レルフィーナがそう言った瞬間、レルフィーナがまばゆい光球に包まれた。全身の細胞がバラバラになり、さらにミズキの身体のメカ部分が分離。メカの方にはミズキの体内にあった超夢現体の細胞が集まりミズキの身体を再構成。もう一方にはレルフィーナの超夢現体が集まり一旦レルフィーナの身体を再組成した後、レミアに再変身。
全ての分離プロセスが終了すると光は消え、ミズキとレミアが姿を現す。
「…ふう」
「ミズキ、お疲れ様」
『れーちゃんこそ」
笑みをかわす2人。そしてユニの隣にレミア、その隣にミズキが座る。
「さて、これから皆さんにとても大事な話をします。皆さんに関わるとても重要な事です」
真剣な表情で話し始める。
その瞬間、会議室にいた全員、さらにはリモート参加していた全員の意識が、ユニの意識のビジョンの中に取り込まれる。
「え…」
「ここは、一体…」
「あたし達、宇宙の中にいる!」
「あれは…・地球?」
「あの赤く光る場所…もしかして私達がいた街?」
眼下に広がる青い地球。そして皆がいた街が赤く輝いている
「そう。あの赤い光こそ、人間界の特異点だよ」
静かにユニが口を開いた。
「今、特異点は『たまたま』皆さんが住んでいる街にある。そしてそこに住んでいたユウがレミアと出会って、レルフィーナが生まれたのよね。そしてそれを感知して、ミノリや海老ヶ瀬がこの街に来た…」
ユニ、深呼吸を一つ。
「でもね、この特異点がずっとこの場所にあるわけじゃ無いってことは、ミノリや海老ヶ瀬もよく知っているよね。そして…今の場所から特異点が動く時期がいよいよ近づいてきたの」
「えっ!」
驚きの声を上げ、思わず両手で口を覆うユウ。他の者達からもざわめく声が聞こえる。
「特異点が今の場所から他の場所に移動するのは来年の3月。特異点がどこに移動するのかは私の予知能力でもわからない」
「ユニはひょっとしてその特異点の移動を予知したの?」
ユウが尋ねる。
「ええ。この予知が外れることは有り得ない。今までも移動の時期を的確に予知できていたから…」
「そんな…」
「そしてレミア、それよりも早くこの場所から消えて、新たな特異点に転移することになる」特異点移動の3ヶ月前には、ユウとサヨナラをしないといけない」
「そんな…。嫌だよ! あたしユウちゃんと離れたくない!」
ユニに懇願するレミア。
「レミアのその気持ち、分かるよ。だから私は『特異点の道しるべ』であるあなたが他の特異点に行く際に『記憶をリセットする』ようにしたの。過去の記憶が重荷になってはいけないから…」
「でも…」
「レミアとユウの二人には、あとで時間を取るわ。その時もう少し細かい話をするね。この特異点移動、今まで予知した内容を事前に伝えることは無かったの。でも今回のみんなの活躍は、これまでに類を見ない大きな価値を夢世界に…そして魔界にももたらした。だから特別な例外として、事前に特異点移動を予告することにしたの。これは私から皆さんへの、心からの感謝の気持ちよ。予め事態に備えることで、そのショックを緩和できるからね」
レミアは泣き出していた。ユウもまた、唇をぎゅっと噛みしめていた。
「ユニ、ちょっと教えて欲しいんだけど…?」
ミノリがユニに尋ねる。
「いいよ。私が答えられることならできる限り答えるよ」
「特異点が移動する際、事前現象として『特異点のゆらぎ』と呼ばれる現象がある事を私達は知っている。『特異点の揺らぎ』が起きると、特異点の中にいた超夢現体は突然融合を強制解除されてしまう。しばらくするとまた再融合できるようになるのだけど、その揺らぎの間隔は少しずつ短くなり、同時に再融合可能になるまでの待ち時間も長くなる。今回のその現象は起きるの?」
「ええ、確実に起きます」
きっぱりと答えるユニ。
「『特異点の揺らぎ』は特異点が移動する前に不安定になる状態。これも避けようが無いわね」
「私の能力は…何か影響を受けますか?」
今度はサツキが質問。
「サツキは動物や物の怪との融合体よね。でも影響は小さいと思う。サツキの身体は魔物由来の強力な魔力を持っていて、特異点で魔界や夢世界から供給される魔素はあなたの能力を高めてくれるけど、特異点から外に出てもあなたの能力が消えるわけではないわ。少し能力は落ちるかも…ってところかな。あと、あなたの身体を支えてくれているユウ…超夢現体の血ね。それは恐らく力を失って消えてしまう。でもあなたの身体の中でずっと体質改善を進めているはずだから、特異点を離れたとしても、あなたが過去に体験してきた哀しい出来事を繰り返すことはもう無いはずよ」
サツキは、少し胸をなで下ろしたように見えた。
「あと、いいですか?」
今度はハヤトだ
「どうぞ」
「特異点が移動する際、僕達の記憶には何か影響が出ますか?」
ハヤトの質問にユニは首を横に振る。
「記憶は全く影響しないわ。歴史そのものが特異点到着前に巻き戻るわけでもない。これまで皆さんが記憶し体験したことは全て現実として残る。もちろんレミアと関わり合った記憶も全部残る。レミアは…」
その時、レミアの脳内にユニからのテレパシーが聞こえた。
{あとで相談しましょ}
それまで泣きじゃくっていたレミアが、はっと何かに驚いたかのように急に泣き止む。
「他に何か質問は?」
「今日もらったドングル、あれはいつまで使える?」
そう尋ねたのはヨッシー。
「いつまで…と言えばずっと…。正確に言うと、特異点の中にいる間はずっと…ということね。特異点の外に出れば機能は止まってしまう。特異点が移動したとしても移動先の特異点に行けばまた使えるわ。先程話があった『特異点の揺らぎ』の影響も受けるから、これから特異点が移動するまでの間は通信が途切れる事も起きるでしょうね。魔界や夢世界に構築されたテレパシーネットワークは特異点の影響を受けずにずっと使われ続けるし、人間界に対してもミズキの身体がゲートウェイとなって繋がるから、ミズキが新たな特異点に行けば、夢世界や魔界は人間界のインターネントにある膨大な情報に接続可能になるはずよ。そういう仕組みで構築したんでしょ、ミズキ」
「…ええ」
「わかった」
ヨッシー、納得した様子。
「でもミズキ、その仕組みだと、将来あなたの身体には膨大な負担が掛かってしまう。だからその件については、後でミノリも交えて個別に話しましょ」
そう言ってミズキに優しく微笑みかけるユニ。
「あ…ありがとう」
「他には無いかしら…」
…特に意見は出ない。
「それじゃ、後は個別に話しましょ。皆さん、ありがとうね」
そうユニが告げると、全員が一旦ユニの意識のビジョンから退出した。
「あれ…」
「ここは?」
先程とはうって変わり、見渡す限り一面の広大な花畑に立つユウ、レミア、そしてユニ。
「ここからは個別面談よ。ここに座って」
ユニがさっと手を振ると,そこにおしゃれな丸テーブルと椅子が現れた。テーブルの上には紅茶とお菓子も用意されている。
「ユニ、ここは…?」
「引き続き私のビジョンの中よ。どうぞ、座って。お茶もどうぞ」
ユニの隣にレミア、その隣にユウが座った。
早速ユウが既に用意されている紅茶を口にする。
「この紅茶、本物みたい。香りもいい…」
「もちろん全部本物よ」
ほんの少しだけ、穏やかな時間が流れる。
「ねぇレミア。あなたユウとの記憶が消えるの、やっぱり嫌? 恐らくユウとは、今後2度と会えなくなるのよ」
静かに語るユニにレミアの表情に影が差す。
「嫌です! 絶対嫌!」
珍しく厳しい口調で拒むレミア。
「…まぁ…ね、貴方たちの関係は特別だもんね」
少し考えるユニ。
「ところでユウ、あなたはレミアと一緒にいられないとレルフィーナに変身できなくなるけど、その事についてどう思っているの?」
「それは…特異点がいつか動いてしまうという話は聴いていたから、レルフィーナになれなくなるのはしょうがないと思ってた。れーちゃんがいなくなってしまうのは凄く寂しい。もちろんずっと一緒にいたいと思う。でもれーちゃんが『特異点の道しるべ』だということが変えられない事なのなら、別れることも仕方ないのかな…って思っていた。
「ゆうちゃんはいい子すぎるんだよ!」
突然怒り出すレミア。
「また自分の本心に嘘をつき続けるの! いい加減にしてよ。ゆうちゃんの本心なんて、あたしには丸見えなんだからね!」
その言葉に戸惑うユウ。
「それじゃあ、こうしよっか」
ユニがパチンと指を鳴らすと、ユウがバタッとテーブルの上に伏す。
「ゆうちゃん!」
驚くレミア。
「大丈夫よ。目覚めなさい、ダークネス」
ユニのその言葉に驚くレミア。ユウがゆっくりと身体を起こす。しかし目つきが先程と全然違う。怒りの表情で、どことなく威圧感もある。
「…ったく。せっかく茶番を楽しんでいたのに、いきなり引っ張り出すんじゃねぇよ!」
ユニをキツく睨むユウ。
「え、え? 一体何が…」
慌てるレミア。
「眠ってたダークネスの人格にユウと入れ替わってもらったの、ちょっとだけね」
平然と答えるユニ。
「そんな…」
「で、ユニ。あたしに何の用?」
「ダークネスなら、ユウが何を望んでいるか分かるでしょ」
ふっ…と少し表情が緩むユウ。
「あたしはその前に、いけ好かないあんたをぶちのめしたいんだがね」
「それは後でね。で、ユウの本心はどうなの?」
「本人に聞けばいいじゃねぇか」
「なかなかユウが本心を吐き出してくれないから、あなたに出てもらったの。あなただけが頼りなのよ」
「ちっ、面倒くせぇ。あの女に対してそんな義理はねぇ」
「そうは言いながらも、気にしてるんでしょ、ユウのこと」
「…あいつ、本心はレミアと離れたくないんだよ。でもずっと今のような生活が続くことにも不安を感じている。自分がぬるま湯の中で居続けるのが怖いんだ。『自分自身がぬるま湯に浸かりすぎてダメになるんじゃないか』ってね。中途半端に考えが大人ぶってる。もっと自分に素直になればいいのに…」
クスッと微笑むユニ。
「ありがとうね、ダークネス。あなたはやっぱり優しいのね」
「うるせぇ、ぶちのめすぞ!」
「そのうち手合わせしましょ」
ユニが再び指をパチン!と鳴らした。
「て、てめぇ…絶対許さねぇから…な」
再び気を失うユウ。
「…また、入れ替わったの」
レミアがユニに尋ねる。ユニはこくりと頷いた。
「…す、ぐすっ。…こんなの…こんなの…嫌…」
顔を伏せながら泣いているように見えるユウ。
「ゆうちゃん…」
ユウに寄り添うレミア。
「元のユウに戻っているよ」
静かにユニが告げる。
「結局…結局自分のこと…自分で言えなかった…。やっぱりあたし…ダメなんだ…」
涙が止まらないユウ。自分の『本当の思い』を自分自身の言葉で言えなかったこと、自分自身のふがいなさがユウにとっては悔しくて悔しくてたまらなかったのだ。
「ユウ、身体を起こして。これからあなたに大切な話があるの」
穏やかにユウに声を掛けるユニ。
ユウはゆっくり身体を起こす。少し目が腫れている。
「ねえユウ。あなた、夢世界に移住するつもりは無い?」
「え…?」
唐突なことで戸惑うユウ。
「ユウ、あなたは人間界では魔法を使えない。それはあなたの中に『魔力』が全く無いから。でもあなたは『魔法を使いこなす能力』が他の人よりも並外れて高いの。その高さはまさに『天才的』と言ってもいい。その能力の高さが、あなたとレミア2人が融合する要因の一つにもなっているの」
「…」
「ねぇ、覚えている? あなたが一人でダークネスを取り込んだときのこと」
「…ええ」
「あなたはスーパーシャイニング・レルフィーナとして融合していたときに膨大な魔力を自分自身の身体にため込んでいたの。それがあなた自身を単身分離させるきっかけになり、ダークネスを取り込む力へと昇華させたのよ。それだけに留まらず、あなたはその後自分の力で時間を巻き戻してしまったでしょ。勢い余ってあなたは魔法を知らないうちに使ってしまったのよ」
「…そういうことなんだ」
「夢世界に来れば、あなたは自由自在に魔法や能力を使えるようになるわ。もちろんレミアと融合しなくてもね」
「…」
「今すぐに…とは言わない。でも私の本心は、あなたに是非とも夢世界に来て欲しいの。そして…今私がやっている『幻想王国の女王』の立場をあなたに引き継いでもらいたい…そう思っているの」
「ゆうちゃんが…女王に?!」
驚くレミア。
「え…そんな。あたしにはとてもそんな資格なんて…」
戸惑うユウにユニは首を横に振る。
「私がレミアを特異点に派遣したのはね、人間界で優秀な人材を見つけてもらうためなの。そして今回レミアはユウ…あなたと出会った。あなたは私がずっと探していた優秀な人材。あなたなら私の女王としての立場を継いでもらってもいいと思ったの」
「あたし…そんな目的を背負っていたんだ」
驚くレミア。レミアにはその自覚が全く無い。
「レミアにこれを話すの、初めてだったわね。ごめんね、今まで黙ってて…」
「いえ…。でも今やっと、自分の存在価値が判ったような気がする」
「ごめんね、今まで何も知らせないで…」
レミアに一礼して謝るユニ。
「でもユニはまだ若いじゃないの。人材発掘はともかく、跡継ぎだなんて…」
レミアの言葉に、ユニは再び首を横に振る。
「今は見かけでこんな若い姿だけど、実際の年齢はおおよそ3000歳。もうヨボヨボのお婆ちゃんなの。今すぐ寿命が尽きるというわけでは無いんだけど、やはり将来のことは考えておかないといけなかったの。ユウ、あなたが夢世界に来る時期は、あなたが人間界での一生を全うしてからでも遅くは無いのよ。ただ私としては、今のうちに色々と目処をつけておきたいの」
「…それって、レミアの今後にも関わってきますか?」
「ちょっとだけね。レミアには今後とも人間界で素敵な人と出会って欲しいし、それを私に教えて欲しいから…。ユウの決断次第でレミアへの能力付与の仕方も変わってくる」
ユウは少し考える。
「ゆうちゃん、女王になれるって凄い事だよ、あたしは賛成だよ!」」
レミアがユウを励ます。
「私が人間界での寿命を全うしてから、夢世界に行ってもいいんですよね」
ユウは慎重にユニに尋ねる。
「ええ。夢世界に来れば、あなたは今のような若々しい姿に戻れる。そして女王の座を継げば、その後何千年も生き続けることができるわ」
「ユニから女王の座を引き継ぐまでの準備期間は…あるの」
「もちろんしっかり確保するわ。そして私の持っている力も全てあなたに引き継ぐ」
「引き継ぎ期間の中で私が女王として不適格だと判断されたときは?」
「…そんなことは無いと思うよ。女王だって完璧じゃないし失敗もする。失敗してもそれを学んで今後に活かせればいい。今のところ幻想王国には王や女王を追放する仕組みは無い。だからこそあなたのように『自分をきちんと律する』ことのできる人に、女王になってもらいたいの」
再び考え込むユウ。
「…分かりました。女王の跡継ぎの話、一旦引き受けます。でも夢世界への移住はあたし自身が人間界での寿命を全うしてから…ということにしてください。そして私が夢世界に移住したとき、改めて女王跡継ぎの件について、本当にあたしがふさわしいのか、判断して頂けますか?」
ユウの言葉に、ユニは深く頷いた。そしてユウに向かって指をパチンと鳴らす。ユウの身体が一瞬ぱっと光るが、その光はすぐに消えた。
「あなたが人間界での寿命を全うした後、夢世界に来られるように予約をしたわ。あなたを夢世界の次期女王候補として迎えるよ」
「…ありがとうございます」
頭を下げるユウ。
「おめでとう! ゆうちゃん」
レミアも満面の笑みを浮かべる。
「で、レミア」
「はい」
ユニの呼び掛けに緊張するレミア。
「あなたの記憶消去はしない。ユウとの思い出は永遠にあなたのものよ。あと融合前のあなたの能力も強化するわね。今まで身体の大きさを自在に変化させる能力は持ってなかったから、それを付与するわね。あとどこの言語でも自在に話せる能力も付与するわ。不可視と可視の属性も自在に切り替えられるようにもする。そうすればあなたはもっと多くの人間と出会いやすくなるでしょ。…あと、これは特別なプレゼント、あなた単独でも魔法や能力を自在に使えるようにするわね」
「あ…ありがとう、ユニ。凄く、凄く嬉しい!」
とびっきりの笑顔を見せるレミア。
「レミア、あなたの額をちょっと貸して」
「あ…はい」
レミアがユニの方に額を近づける。ユニは右手をレミアの額にかざした。一瞬ユニの右手が光る。その直後レミアの基礎能力が大幅に書き替えられた。
「どう? 何か違和感ある?」
レミアの額から手を離したユニは「、微笑みながらレミアに尋ねる。
「いえ、特には…」
「…そう。あとは…ユウ、あなたにプレゼントをあげる」
ユニは自分の首に掛けられている宝石のついたペンダントを手にし、それを指でこする仕草をした。すると全く同じペンダントがユウの目の前に現れ、その首に掛けられる。
「ユニ、これは…」
「魔法のペンダント。あなたはレミアと融合していない状態でも、特異点の中にいる間はこのペンダントを使えば魔法や能力を自在に使えるわ。そのペンダントは外の魔素を魔力に変換するの」
ペンダントを手にするユウ。
「あと、特異点が他の場所に行ってしまったとしても、あなたはそのペンダントを通してレミアとテレパシーで対話することができるはずよ」
「れーちゃん…」
レミアを見つめるユウ。
「本当に良かった…」
穏やかに微笑むレミア。
「でもユニ、あたしは特異点がこの街に留まる間はずっとレミアと融合し続ける必要が…」
「どうして?」
「だって融合していないと、魔族の襲撃を検知することが…」
ふっと笑うユニ。
「もうそんなことしなくていいのよ。魔界には人間界に余計なちょっかいを出さないように言ってあるわ。この前ククも人間界に来たでしょ。彼女は人間に対してとても友好的だった…」
「まぁ…そうですね」
「それにあなた、ククに対して魔族の反応を感じなかったでしょ。サツキに対しても…レミアはサツキに対して少し違和感を持ったみたいだけどね」
「そうなの、レミア」
レミア、頷く。
「貴方たちが自分自身に付与した『魔族感知の能力』、あれは貴方たちの心持ち…正常性バイアスによって感度が結構揺らぐみたいね。ククに魔族の気配を感じなかったとき、おかしいと思わなかった?」
ユニの指摘にユウとレミアは過去の記憶を振り返る。
「そういえば…」
「確かに…」
「恐らく今後はあなたとレミアが分離して生活することが普通になるはずよ。融合したままだと、特異点の揺らぎで突然分離してしまったりするから、かえって色々面倒になるでしょ」
「それは…」
「確かに…」
「だから2人とも、特異点の中では単独で魔法や能力が使えるようにしたの。もちろんユウは、他の人に『魔法が使えるようになった』なんてこと、言っちゃダメよ。もちろん幻想王国女王候補の件もね。…ただ、テレパス・リンクを繋いでいる人たちにまで隠すことは難しいから、せいぜいその範囲で留めておいてね」
「あ…はい。わかりました」
ユウは、しっかりと頷いた。
「ところで2人とも今、融合中でしょ。ここで今、分離してみたら?」
「え…」
驚くレミア。
「今あたし達って、ユニの意識の中にいるのよね…。今分離したら、意識の外にいるあたし達はどうなるの?」
ユニに尋ねるユウ。
「今、外の世界は私が時間を止めているの。貴方たちが望むなら、現実世界でも同時に分離するようにもできるし、分離をこのビジョン内に留めてもいいわ」
「どうする? ゆうちゃん」
レミアがユウに尋ねる。
「そうね…。せっかくだから現実世界でも分離してみない?」
「…わかった」
「…ということでユニ、お願い」
「わかったわ。いつでも分離していいわよ」
「ゆうちゃん…」
「れーちゃん、いくよ。せーの!」
ユウとレミアが再変身を解除して2人のレルフィーナに。そしてレルフィーナ同士が分身解除で1人に。最後にレルフィーナからユウとレミアの2人が分離した。ユウの胸にはユニからもらったペンダントが掛かる。
「…ゆうちゃん、ペンダント、ある?」
「うん」
ペンダントを手に取り、レミアに見せるユウ。
「それじゃあ2人、ちょっと魔法や能力を試してみて」
ユニの言葉に、二人は自分に与えられた魔法の力を試してみる。レミアは胸の前に自分の右手を差しだし、一瞬目を閉じる。そうすると右手の上に小さな炎が現れた。
「できた!」
喜ぶレミア。一方ユウも、レミアと同じように右手を胸の前に差しだし、炎を出す魔法を試す。しかし炎は一向に現れない。
「なんであたしは…」
「ペンダントを握るのよ」
ユニのアドバイスに、ユウはペンダントを左手で握りしめ、一瞬目を閉じる。すると右手の上に小さい炎が現れた。
「できた!」
「ユウはペンダントに直接触れていないと魔法や能力が使えないから気をつけてね。あ、レミアとのテレパシーはペンダントに触れていなくても大丈夫だからね」
改めてユニが説明。
「あたしにとっては、結構使いにくいかも…」
ぼそっと呟くユウ。
「あんまりホイホイ使えるのも問題あるでしょ」
ユニが穏やかに微笑む。
「まぁ…ね。プライベートの時ならともかく、学校では制服の上にペンダント出るとかなり目立つし…ブラウスの下に潜ませるしかないか…」




