Phase24. 新学期
※挿絵はAI画像生成システム「Gemini Flash image 2.5/3/3.1(Nano Bananaシリーズ)」で生成した物を主に使用しております。
※カッコ記号の使い分けを行う事で、そのゾーニングをより明確にしています。
基本的なゾーニングの区分は以下の通りとなります。。
「」…[open]会話
[]…[semi-open]暗示
()…[open]テレパシー
{}…[closed]テレパシー(秘話)
<>…[closed]思考
≪≫…[closed]インナーセルフのリアクション
9月1日。朝6時。
「朝だよ~。今日から新学期だよ~」
ユウの部屋に響いたのは、何とユニの声。
ユウの勉強机の上に新たに置かれているのは、膝の上に両手を広げ、黒い箱の上に座ったユニの人形。ユニの両手の上には、ユウがユニから授かった魔法のペンダントが置かれている。箱の上に座っている人形ユニの高さは約14㎝。黒い箱にはUSB電源ケーブルとLANケーブルが刺さっている。電源ケーブルはアダプタを介して家庭電源につながっており、LANケーブルの先は家庭用のインターネットルータに繋がっている。そう、このユニの人形、実はこの前の会議でユニがミズキの「夢世界・魔界と人間界との通信を繋ぐゲートウェイ」としての能力負荷を心配して、ユニとミズキが共同で生み出した「ドール」なのだ。ミズキはセンタードールとしての役目に徹し、日常的な通信の仲介はこのドールが担うことになった。ドールは複数用意され、ミズキの家やA国本国にも配置されている。ドールの中の超夢現体部分はミズキの分身がベースとなり、ユニが強力な魔力でサポート。そのためドールが持つ外見や人格もユニのコピーになったのだ。ドールとしてのユニは、人形とはいえ箱の上に座っていること以外は、自由に動けるし会話もできる。人形というよりは、もはや小さな分身に近い。
「う、う~ん」
ベッドの上で伸びをするユウ。レミアもいつもの書棚の上の布団からゆっくり体を起こした。
「体が小さいのに、よくそんな大きな声を出せるね」
つぶやくレミア。
「魔法で音量を増幅しているだけよ。今のあなたならそれもできるでしょ。超夢現体では無くなっている家けど、おおよそ8割位の出力の魔法や能力を発揮できるはずよ」
レミアににこやかに語り掛けるユニ。ユニの言う通り、レミアはユウと融合せずとも自在に魔法や能力を使えるようになっていた。ユニの能力付与のお陰だ。
「それじゃ、朝ご飯食べてくる」
ベッドを抜け出し、部屋を出ようとするユウ。
「ユウ、ちょっと待って」
「何?」
「リンクを繋いだ人とのテレパシー送受信、できてる?」
「あ、うん。昨日ユニに能力治してもらったから、昨日の夜から快調」
「ごめんね。あたしのミスで昨日いっぱいクレーム来たんでしょ。『ユウとのテレパシーが繋がらない』って」
「…まあ、気にすることもないでしょ。じゃ、行ってくる」
ユウは部屋を出た。
ユニから魔法のペンダントを授かったユウは、ペンダントに触れていればレミアと融合していなくても魔法や能力を自在に使えるようになっていた。ところがテレパシーもペンダントに触れていないと使えなかったため、昨晩トラブルになったのだ。結局ユニがペンダントの能力を調整し、ペンダントから半径3m以内にいれば、ユウはペンダントに触れずとも、テレパス・リンクを接続済みの人に対してテレパシー送受信ができるようになった。
「ところでレミア、今日どうするの?」
ユニが訪ねる。
「そうね…サツキが今日初登校だし、不可視属性で学校を偵察してこようかな…と思ってる」
「レミアもサツキのこと、気になる?」
「もちろん」
ユニに穏やかな笑顔を見せるレミア。
「そうよねぇ…、彼女って今ひとつ掴みにくいところもあるからね。多分彼女、テレパシー避けの力も持っているんじゃ無いかしら」
「そうなの?」
「私はそう感じたよ」
「道理で…。ゆうちゃんはサツキとテレパス・リンクを繋いでいるから彼女の心も見えているんだろうけどね」
「あの時はレミアも融合済みの状態だったんじゃないの?」
「そうなんだけど…あの時のゆうちゃん、何だかもの凄く神がかってて、あたしが出る幕無かったの」
「『一人魔法少女化』してたってこと?」
「うん…」
「ユウも計り知れないところがあるからね…。まあその『不思議ちゃん』的なところが私の琴線にも触れたわけだけど」
「…あ。ユウちゃん戻ってくる」
「うん、私も気づいた」
ユウが自分の部屋に帰ってきた。
「さてと…ユニ、ペンダントもらうね」
「どうぞ」
ユウはユニの手の上からペンダントをつまみ上げる。その瞬間、ユウの着ていた服が室内着から夏用の制服に瞬時に変わる。
「お見事!」
ユウを褒めるユニ。
「やっと感覚に慣れてきたよ」
そう言いながら、ユウはペンダントを首にかけブラウスの中へと隠した。そして胸に手を当て、親指をブラウスの前立てから中に忍ばせ、ペンダントに触れる仕草を確認する。
「上手くごまかす方法、見つけたのね」
クスッと笑うユニ。
「まぁ、あんまり使う機会は無いと思うけどね」
「ユウ、一言だけ注意しとくね
「何?」
「さっきレミアにも言ったけど、あなたは今普通の人間。ペンダントでの魔法や能力は使えるけど、出力は融合していたときと比べて8割程度の出力しか無いからね。レミアと融合すれば100%の能力を使えるけど、融合すると『特異点の揺らぎ』で強制分離してしまうリスクもあるから、そこを慎重に考えてね」
「でも8割程度の出力でも使えるんなら、十分だと思うけどね」
ユウは学校に行く支度を整えていく。
「ミズキはもう瞬間移動で学校に飛んだみたいよ」
ユニがユウに教える。
「うん、あたしのところにも今テレパシーが入った。ミズキは朝の混み合う電車が苦手みたいだからね。いつもの事よ」
「ユウはそうじゃないの?」
「たまにはあたしも飛ぶときあるけど、学校までの行き帰りの時間も悪くないのよ。時々新鮮な発見もあるしね」
「ふ~ん」
「それじゃ、そろそろ行ってくる」
「はーい。いってらっしゃい」
ユウは部屋を出た
「レミアはどうするの?」
「もうちょっと寝てる。始まる間際に向こうに飛べばいいし」
「確かに」
穏やかに微笑むユニ。
「おはよう!」
ユウがサツキの家に近づいたタイミングで、サツキがユウの前に現れ、ユウに声を掛けてきた。
「あ、おはよう。サツキ、今日からだね」
「お手柔らかに」
クスッと微笑むサツキ。
「学校まで瞬間移動しないの?」
「それは『たまに』よ」
「やっぱり真面目なのね」
2人、駅に向かって歩き始める。
「ミズキは電車通学が苦手だから、毎日飛んでるよ。非効率なのは嫌なんだって」
ユウの言葉にふっと笑うサツキ。
「ミズキらしいね」
やがて駅に到着。既に駅は大勢の乗客で溢れている。改札を通り抜け、ホームに出る。
「こんなに混んでるの? 意外と乗るのね」
「そうだよ。でもここで降りる人も結構い多いから…」
「ミズキが嫌がるのも判るような気がする…」
電車で1駅揺られて次の駅で下車。ここから徒歩で学校へと向かう。途中道すがらのパン屋に立ち寄り、昼食用のパンと飲み物を購入するユウ。
「サツキはお昼買わないの?」
「弁当を自分で作ってきた」
「え! 凄いね」
「毎朝海老ヶ瀬とヨッシーの朝ご飯作ってるから、ついでよ」
「え…そうなの」
感心するユウ。それに比べて自分は親に頼りっぱなし…。少し後ろめたさも感じる。
「ほら、行こう!」
勢いよく店を出るサツキ。慌ててユウもサツキを追う。
そして間もなく学校の生徒玄関前に到着。
「それじゃ私、あっちの方に行くから…」
サツキは学校の教職員玄関側の方を指さした。
「わかった。じゃ、また後で…」
「またね」
ユウとサツキはここで別れた。
生徒玄関を抜け、2階の教室に入る
「おはよう」
ユウは自分の席に座る。ユウの席は窓際から2列目の前から4番目の席。そして前はミズキの席。ミズキはにこやかにクラスメイトと談笑中。
「おはよう」
ハヤトが教室に入る。ハヤトの席は廊下側から2列目の前から4番目。ユウやミズキのほうをちらりと見た後、早速授業の支度を始める。
「おーっす」
リア到着。窓際から2番目の一番後ろの席にどっかりと腰掛け、周囲と談笑。リアの隣、窓際から3列目の一番後ろの席が新たに設けられている。
<あそこにサツキが座るのね>
やがて始業のチャイムが鳴る。クラスメイトはみな自分の席に着いた。窓の外は晴天。学校の隣にある公園と住宅地が見える。
教室は少しざわついている。やはり今日から新たなクラスメートが加わることを気にしている者が多いようだ。
ほどなく廊下に担任の矢川リョウコとサツキが現れ、2人とも教室に入る。教壇に矢川が立つ。脇にサツキ。サツキはじっと目をつむっている。
「起立、礼」
「おはようございます」
「着席」
何となくだが、多くの男子がそわそわしている。ツインテールで小悪魔的な雰囲気を醸し出しているサツキの事がやはり気になるらしい。
「それでは本日よりこのクラスに編入された新しいクラスメートを紹介します。名前は東島サツキさん、今日から皆さんの仲間になりましたので、よろしくお願いいたします。それでは東島さん、自己紹介を…」
サツキが一礼。そしてそれまで閉じていた眼を開く…。
<あ…>
ユウが気付いた時はすでに遅かった。
一瞬ほのかに金色に光るサツキの目。その瞬間、クラスメイト全員が不思議な感覚に包まれる。
{[魅了]}
かすかにサツキの心の声が聞こえても時すでに遅し、ユウもサツキの術に心を奪われてしまう。軽くではあるが、サツキはクラスメイト全員を一瞬で魅了した。
「東島サツキといいます。まだ知らないことが多いですが、皆さんよろしくお願いいたします」
どこからともなく拍手が沸き起こる。
ユウが周囲を見まわすと、特に男子生徒の様子に少し異変を感じる。
「じゃあ、席についてください。この列の一番後ろの席が東島さんの席です。周囲の皆さんもサポートしてくださいね」
サツキが自分の席に着き、授業が始まる。
ユウは授業に集中しようとするが心が落ち着かない。何度も見ているはずのサツキの事を思い起こす度に不思議と胸がときめいてしまう。気のせいか、少し顔がほてっているような気がする。
{ゆうちゃん、大丈夫?}
不意にレミアのテレパシーの声
{れーちゃん、近くにいるの?}
{ユウちゃんのすぐ隣にいるよ}
ユウが横を見ると、うっすら半透明になった人間サイズのレミアが宙に浮いていて、ユウに寄り添い心配そうに見つめている。今のレミアは不可視状態になっているようだ。不可視属性だとユウやハヤトのように特殊能力を持っている者からしか見えず、他の普通の人からは見えない。
{全然大丈夫じゃないよ。サツキ、『魅了』の術を使ったみたい。テレパシーで彼女の心の声が聞こえた}
{やっぱり…。ユウちゃんにかかった魅了の術、今解いてあげるね}
ユウの頬に柔らかな感触。レミアがユウの頬にキスをしていた。その瞬間ユウにかかっていた魅了の術が解け、顔のほてりや胸のときめきがすーっと引いていく。ふぅ…と小さくため息をつくユウ。
{れーちゃん、ありがとう。助かった。…ミズキやハヤトの方はどう?}
{さっきハヤトの方も魅了を解いてきた。ミズキはしっかり跳ね返していたみたい}
{そう…ありがとう。…他の人は?}
{殆どみんな『魅了』の術が掛かってる、特に男子は深刻かも…}
{ちょっとサツキに聞いてみる}
ユウはテレパシーを飛ばして、サツキに呼び掛けた。
{サツキ、あなた何したの? みんな大変なことになっているよ}
ユウのテレパシーに驚くサツキ。
{え? 早くみんなに溶け込もうと弱~く魅了したんだけど}
{何が『弱く』よ。さっきまであたしもあなたに胸がときめいちゃって大変だったんだから}
{え、あ…ごめん}
自分の失敗に気づき焦るサツキ。
{ど、どうしよう…}
{サツキ、あなたの力で『魅了』を止められる?}
{もう一度みんなの前に立たないといけない…}
{そんなチャンスは授業が終わるまで無理ね。でもその前に止めないと、授業が終わったときに大混乱になってしまう…}
{ユウ、私からこんなお願いするのも何なんだけど、あなたの力で術を止められない?}
ユウ、少し考える。
{取りあえずあたしがクラス全員の『魅了』を解いてみる。いいね?}
{ご、ごめん…この借りは必ず返すから…}
テレパシー通信を終えるユウ。
{ゆうちゃん、どうだった?}
ユウの側にいるレミアが尋ねる。
{サツキ、みんなに好意を持ってもらおうとごく弱い『魅了』を掛けたつもりだったみたい。術が効きすぎたのね。あたしに『魅了を止められないか』と言ってきたから、とりあえずクラス全員の魅了はあたしの力で解いてみる}
{あたしも手伝おうか?}
一瞬考えるユウ。
{今回はあたしだけでやらせて。あたしの魔法のペンダントの『本気の力』を試してみたいの}
{わかった。必要ならあたしもフォローするから…}
{ありがとう。その時はお願い}
{一応ミズキにも声を掛けておくね}
{わかった}
ユウは自分の右手で胸を掴むように軽く握り、親指をブラウスの中立てから中へと忍ばせる、そして親指で魔法のペンダントを押さえた。ペンダントの中の魔法の力がユウの身体に染みこんでいく。目を閉じて深呼吸、ユウの精神エネルギーが爆発的に高まっていく。ユウはカッと目を見開いた!
([サツキの『魅了』の術、解けなさい!])
その瞬間、ユウの身体から教室全体に、強力な魔法の力が目に見えない波紋となってくまなく広がっていく。そしてクラス全員に影響を与えていたサツキの『魅了の術』が一瞬にして解けた。
{ちょっと状況確認}
レミアが教室内をくまなく飛び回り、持ち前の強力なテレパシーで個々の心の中をチェックしていく。
{ゆうちゃん、大丈夫みたい! 成功よ。でも…}
{でも?}
{やっぱり教えるのを止めるわ。きっと休み時間、ちょっと楽しい事が起きるから}
再びユウの前に現れるレミア、まるで何かいたずらを企んでいるかのようにニヤニヤしている。
{え、何か…}
{ううん、悪いことじゃないよ。サツキも結果オーライかもね。ゆうちゃん、あたしのテレパシーをサツキに届くように中継して。あたしのテレパシーは直接サツキに届かないから…}
{え? …わかった、取りあえず繋ぐね}
レミアのニヤニヤの意味がよく判らないユウ。言われるまま、レミアのテレパシーがユウ経由でサツキに届くようにする。
キーン、コーン、カーン、コーン…、授業時間終了を告げるチャイムが鳴る。
「起立、礼…」
授業が何事も無く終わった。…と思いきや、
「東島さーん!」
多くの男子生徒が一斉にサツキの方に押し寄せる。
「え、何? 何?」
突然のことでうろたえるサツキ。
「ねぇ、どこに住んでいるの?」
「なんでこの学校を選んだの?」
「何か好きな趣味とかある?」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って…」
うろたえるサツキ。
{ユウ…これどうなっているの? 『魅了』の術、解いたんじゃないの?}
サツキからユウにテレパシーで悲鳴。
(サツキ、あたしだよ。レミアだよ。ゆうちゃんは完璧にあなたの『魅了』を完全に解いたよ。あたしもそれは確認した。でも、魅了されている時間が長すぎたのよね。殆どの男子があなたの可愛さにどハマりしちゃったみたいよ。元々サツキは魅了なんかしなくてもこうなることは変わらなかったんじゃなくて?)
(え~、こんなの想定外だよ~ ユウ、助けて~)
(あなたの忍術でどうにかすれば?)
(ムリムリムリムリ!。こんなに至近距離じゃ私が術使うとバレちゃうし、さっき失敗してるから自信ないし…)
(しょうがないなぁ…手を貸すよ)
ユウは前を向いたまま後方に意識を集中し、再び右手を胸に当て親指をブラウスの中に入れ、魔法のペンダントを親指で押さえた。
([サツキの周りの男子、みんな落ち着け~])
再びユウの魔法が、目に見えない波動となってサツキの周囲にいる男子全員を包みこむ。やがてサツキの周りにいた男子は男子同士で話を始めながら、少しずつサツキの側から離れていく。
(あ、ありがと~。やっぱりユウは私の女神様だよ)
(借り2つね~)
(え~)
2限目始業のチャイムが鳴る、
{ユウ姉、ちょっと聞いていい?}
ユウの前に座っているミズキからユウ宛にテレパシーが飛んできた。ユウの視界には側にいるレミアも見える。
{何?}
{教えて。さっきの授業の時間、何か変なことあった?}
{え?}
戸惑うユウ。
{何があったって…}
{途中で記憶が少し途切れちゃったの}
{え? 何で?}
{実は…プツプツッ、ガリガリガリプツッ}
謎の雑音とともにミズキとのテレパシーが途切れた。雑音と同時にレミアの姿にもノイズが入り、レミアも消えてしまう。
ユウの心拍が一気に跳ね上がる。
(何これ何これ? 何がどうなっているの? 教えて!)
ユウは自分の能力を使って、何が起きたかを知ろうとする。これまでの融合状態なら『望みを瞬時に現実にする能力』によって、何が起きているかをすぐ知ることができた。しかし…
<そっか、融合してないんだった>
ユウは慌てて胸に手を当て、親指をブラウスの下に潜らせ、魔法のペンダントを押さえる。
<何が起きているのか教えて!>
願いを魔法のペンダントに込めるユウ。
≪魔力を1回分消費するよ。いい?≫
突然ユウの中にユニの声が聞こえた。
<え?>
一瞬戸惑うユウ。
<ま、いいや。お願い!>
その時ユウの頭の中にユニの姿が現れた。
≪簡単に言うと、特異点に揺らぎが起きて、魔素の供給が一時的に途切れたの。ミズキは超夢現体が休眠状態に入って、AIのマナが単独で動くモードに変わったの。レミアも魔素が無くなって一時的に姿が消えてる。でもまた魔素が供給されれば、ミズキもレミアも元に戻るよ。≫
<ミズキの記憶が途切れた原因は?>
≪さっきサツキが『魅了』の術を掛ける直前に、やはり魔素の供給が途切れたの。だからミズキにはモード切替が発生して再起動したのね。だから『魅了』も完全にすり抜けているし、記憶も落ちてしまったんじゃないかな?≫
<ところで今も魔素の供給が途切れているんでしょ。何故あたしは能力を使えるの?>
≪それはペンダントの中に蓄積されている魔力を使っているから。魔素の供給が無い状態では、ペンダントの中にある魔力を5回分だけ使えるの。家に帰ったらドールである私の手の上にペンダントを置くでしょ。そうすると私から魔力が補充されるのよ≫
<そうなんだ…知らなかった>
≪それと、もし特異点が余所に移動しちゃったとしても、ドールの私の中には膨大な魔力が蓄積されているわ。それがどういう意味か分かる?≫
<…もしかして、ずっと、魔法が>
≪使えるのよ≫
ユウの胸がこれ以上無いくらいキュンキュンとなる。
<ヤバいヤバいヤバいヤバい! それガチでヤバいよ!>
≪ペンダントを見ると、消費した魔力の回数だけ、色が変わるようになってるからね≫
<そんな機能まであるのね…驚いた>
≪あ、また魔素の供給が戻ったみたいよ…≫
ユウの脳内のビジョンが消えた。レミアも再び姿を現している。
{ミズキ、聞こえる?}
{ええ。どうやら特異点の揺らぎが起き始めたみたいね。ユウ姉は大丈夫?}
{あたしは今、人間の状態だから影響は受けてない。さっき起きたこと、テレパシーで送るね}
ユウは先程起きていた出来事の記憶をミズキに流した。
{そっか…、サツキが『魅了』の術でみんなを精神操作しちゃったのね。でも事態を秘密裏に終息させてしまうなんてさすがユウ姉ね}
{ほんと、焦ったよ。でも『特異点の揺らぎ』、今後もこんな調子で起きるのかな? ちょっと気になる}
{揺らぎは不定期に起きるし、今後能力が使えなくなる時間は徐々に増えてくると思う}
{そうなんだ…}
ユウの心に不安が広がる。
{ところでれーちゃん、さっき特異点の揺らぎのせいで姿消えたみたいだけど、大丈夫?>
{何か変だな…とは思ったけど、何ともないよ}
{…自分の姿が消えたって認識、ある?}
{ううん、無いよ。そんな事があったの? あたし全然気づかなかったよ}
ユウは絶句した。
{そ、そうなの…。わかった。ありがとう}
ユウの不安はさらに色濃くなる。
授業の終鈴が鳴る。ユウは教室を出て、誰からも見られない個室に籠もった。そして静かに胸のペンダントを取り出す。
「ほんとだ。色が変わってる」
魔力の消費によって色が変わる魔法のペンダント。大切なユニからの贈り物。
ユウは再びペンダントをブラウスの下にしまう。
魔法少女ユウの新学期はこうして幕を開けた。




