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第5話 接触

待ちに待った休日。週末繁忙の忙しさを乗り越えたご褒美に俺は街へと繰り出していた。


(久々にクレゲでもやりに行きますか)


商店街を南下して駅と逆方向に進んでいく。平日ということもあってか、昼時でも行き交う人の波は疎らだった。


(昼飯でも食ってから行くか……)

「あのー……」

(ん?なんだ?)


不意に背中を軽く叩かれ振り返る。


「はい……?って、ええええぇぇッッ!?」

「あー!やっぱりハジメさんだぁッ!背がおっきいからすぐわかったよ!偶然だね!」

「……りる、ちゃん。どうしてここに?」

「そっか!ハジメさん、今日お休みって言ってたもんね!わたしもたまたま休みで今日はお買い物しようかなって思って!」

(俺が休みのこと、よく覚えてたな……)

「この辺はよく来るの?」

「うん。まぁ、割と?たまにかな?」

(びっくりした……まさか、休みの日にりるちゃんと会うとは……)


ゲーセンの客と店以外の場所で話すのは実に新鮮だった。

俺だったら外で見かけても絶対に話しかけないだろうが、それがこの子の人柄なのかもしれない。それならやたらと距離が近い理由も頷ける。


「ーーねぇ、ハジメさん」

「あ、ああ。なんだ?」

「わたし、お腹空いちゃって……」

「ああ、俺も丁度どっかで食べようかなって思ってた所だったんだよ。昼時だもんな」

「え、じゃあ、お昼まだなんですか?」

「そうだよ」

「……これが最後の晩餐ならいいのに……」

「晩餐?」

「ああ、いえ!なんでもないです!それより、もしよかったらなんですけど……」

(ちょッ……!?)


りるちゃんは器用に俺の腕を取ると、するりと懐に潜り込んだ。


「お昼、ご一緒してもいいですか?」

「え……えっ、と……」

「……ごめんなさい。迷惑、ですよね……折角のお休みくらい、誰にも邪魔されずゆっくり過ごしたいですよね……」

「いやいや、俺は全然!一人も二人も大してそんな変わらないだろ?……でも、俺なんかといたらりるちゃんがなんか変に思われるんじゃないかって」

「何言ってるんですかッ!!ハジメさんはカッコいいです!背も高いし、筋肉もあるし。もっと自分の良さを自覚すべきですよ!ね♡」

(かわいさを通り越して一種の暴力だろそれは……)


マスク越しでも伝わるその可愛さの権化は、俺の中の恋愛バロメーターをぶち壊すには充分すぎた。


「……じゃあ、行こうか。何か食べたいものある?」

「りるはなんでも!ハジメさん食べたいやつ食べいこーよ!」

「じゃあ、ハンバーグとかでもいい?」

「ハンバーグだいすき♡」

「じゃあ、いこっか」

「うん♡」

(離れてくれなさそうだし、たまにはいいか)

「……はぁ、ハジメさんちょ〜優しいなぁ……最高ッ♡」

「ん?なんか言った?」

「んーん、なんでもないよ!」

「……え?待って。まさか、このまま行くの?」

「え?そうだよ。だってこれ、デートだもん。腕組んで歩くものだって、友達が言ってたんだけどなぁー」

(そ、そういうもんなのか……?わからねぇ……つうかこれ、デートなの?)


ただ飯を食べに行くだけのはずだったので、デートと言われてもいまいちピンと来なかった。


ーー


「ん〜♡♡♡めっっっっちゃ、おいしい!!!」

(なんか、すげーテンション高いな。ハンバーグそんな好きなのか)

「うまそうに食べるね」

「だって、超おいしいだもん!!!」

「それなら連れて来た甲斐があったよ」

「はい、ハジメさん!あ〜ん♡」

「は!?ちょッ、こんなとこでダメだって……」

「え?二人っきりの時ならいいんですか?ハジメさんって、結構家庭的なんですね♡」

(違うが?あと、フォーク向けないでくれ)


一進一退の攻防も最終ラウンドまで縺れ込んだが、途中で俺が根負けした。


「おいしいですか?ハジメさん?」

「……あ、ああ。うまいよ……」

「ハジメさんとごはん、嬉しいな♡……わたし、こういうの初めてなんです」

(なんか、意外だな。こんなにかわいいのに……つうか、めっちゃ視線感じるんだが……)


店内は空席を探すほうが難しいほど混雑していた。

その中でも、りるちゃんの容姿は野郎共の視線を集めるには事欠かなかった。


「ねぇ、ハジメさん」

「ん?どうかした?」

「この後、時間あるよね?」

「まぁ、あるけど……」

「じゃあ、決まりッ!!」

「は……?」

「レッツゴー!!」

「ちょッ、ちょっと!りるちゃん!?」

(なんなんだよおおぉぉッ!!)


半ば強制的に連れられてきたのはそこそこ大きなショッピングセンターだった。


「ハジメさん。ほら、あ〜んして♡」

「ちょッ、ちょっと、まって……」

「えー、待てないよ〜。溶けちゃうもん。はい、あ〜ん♡」

(冷たいし、甘ったるいな……)

「これ、期間限定フレーバーなんだよー!」

「へ、へー、そうなんだ……」

「おいしいでしょー?」

「う、うん……オシャレな味だね……」

「だよねー♡」

(場違いだろ、俺……)


ロールアイスの専門店はなんとも可愛らしい装飾に加え、客層のほとんどが学生や若い女性が多くを占めていた。

俺一人ならまず間違いなく近寄れない聖域だ。


「あ、ここゲーセンあるじゃん。ねぇ、ハジメさん、ちょっと寄ってこうよ!」

「お、おう……」

「一緒にできるやつあるかなー?」

「体力使う系は勘弁してくれ……」

「ヘーキヘーキ!音ゲーやろうよ!ちょー余裕だって!」

(体力オバケかよ……)


その後もりるちゃんに振り回され音ゲーにレースゲーム、UFOキャッチャーにプリクラと、ゲーセンで大いに遊びまくった。


「あー、楽しかった!」

「そいつは、ようござんした……」

「あははッ!ハジメさん変な顔してるー!」

「それは、りるちゃんが変にくっつくから……」

「……でも、まだ足りないな」

(え?)

「次もまた行きましょうね!デート」

「え、っと……」

「約束ですよ?」

「ぜ、善処します……」

「……今日、来てよかった」


ーーまるで、最初からこうなることを知っていたかのようにりるちゃんは呟いた。


「ん?それって……」

「あ!ハジメさん、ちょっとスマホ借りるねー」

「あッ、ちょっと!」

「……これでよし、っと……」

(なんだ?急に真剣な顔して、どうしたんだ……?)

「はい、どうぞ」

「あ、ああ……」

「ーーこれで、いつでも会えますね」

「え?会うって……」

(また、うちの店で。ってことか?)

「じゃあ、近いうちに連絡するね。今日はありがとう、ハジメさん♡」

(は……?いや、連絡って……どういう……)


俺が半ば放心していると、りるちゃんは嵐のように過ぎ去って行った。

自分のスマホを覗くと、連絡アプリに一件新着登録が追加されていた。


「あの子、なにがしたいんだろ……」


夕焼けに向かい溶けていく小さな影を、俺はただ見詰めることしかできなかった。



第5話お読みいただきありがとうございます!

ちょくちょく更新の方頑張って行きたいと思います!

次回もまたハジメとりるの距離が近付くといいなぁと思っています。

読んでいて面白ければ感想やブックマークも宜しくお願いします!

次回、第6話でまたお会いしましょう!

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