第4話 偶然
あれから数日が経ったが、オーサーマンの熱は冷めないでいた。
それにも関わらず、一つだけ変わらない光景があった。
(また、いるな)
気付けば、りるちゃんは今日も店内にいた。
(俺がいる日に限って、よく来てる気がするんだよな……)
「ねぇ!ハジメさん!あれなにー?」
「ああ、あれか。あれはロケテスト機だよ」
「ろけっと、てすと……?なんか怖ッ!?」
「ロケットじゃなくて、ロケーションのことだよ。試作機を設置して、稼働に問題がないかチェックするんだ」
「へー!なんか面白そう!やってみてもいい?」
(近いのには慣れてきたけど、やっぱり近すぎないか……?)
「あーッ!後ちょっとだったのにー!」
「残念、ちょっと惜しかったね」
「くやしー!」
(むくれた顔もなかなかかわいいな)
真剣な眼差しで遊ぶりるちゃんを見ていると微笑ましい気持ちになる。
(いかんいかん。仕事せねば)
「じゃあ、りるちゃん。俺は仕事あるから」
「あ、待って!ハジメさん!」
「ん?なんか動作不良でもあった?」
「一個聞きたいことあって」
(なんだ?聞きたいことって)
「ハジメさんって、明日もいる?」
「いや、たしか、明日は休みだったはずだけど」
「ふーん、そっか」
(明日って、なにかあったっけ?特別、イベント事はなかったと思うんだけど……)
「それならいいんだ、アリガトっ!ハジメさん♡」
りるちゃんは満面の笑みを一度向けるとロケテスト機にまた挑戦し始めた。
(笑うとめっちゃかわいいんだよな、お人形さんかよ)
ーー
「そういやさ、あのツインテの子。最近よく来るよな」
「ああ、あの地雷系っぽい女の子ッスよね?前もちょくちょく来てましたけど、最近毎日のように来てますよね」
「てか、俺が出勤の日は毎回いるような気がするんだけど、俺がいない日も来てんの?」
「んー、いや……あんま見ないッスね」
「あん?なんだそりゃ。煮えきらないな」
「てか、ハジメさんがいない日は、来てもすぐ帰ってる感じッスけどね。見かけても、気付いたらいつの間にかいないし」
「そうなのか」
(……なんでだ?)
来店する理由など人の数だけ答えがある。無意味な詮索は野暮ってもんだ。
(……考えすぎか。ただの偶然だろ)
「なんスか?まさか、狙ってんスか?ハジメさんも隅に置けないッスね!」
「火あぶりにされてーのか、てめぇは」
「なんて恐ろしいこと言うんッスか!鬼!悪魔!」
「魔女狩りだよ、魔女狩り」
「目がマジなんスけど、なんなんスかマジで……勘弁してくださいッス……」
「俺はやるときゃやる男だぞ」
「彼女いない歴=童貞なのにッスか?現実的にムリなこと言わないほうがいいッスよ」
「確か備品倉庫に頑丈なロープがあったはずだから、それ使うか……」
「逃げるッス!」
「コラ、待て!逃がすかッ!ったく、口だけは達者だな……」
馬鹿に付き合ってる時間がもったいないのでフロア作業に戻ることにした。
「ーーあー、ハジメさんいたー!みてみてー!お菓子いっぱい獲った!」
「おお、やるなぁ」
「ほめてほめてー!」
「りるちゃんすごいね」
「ふへへへへッ」
(なんだこの生き物、かわいいな)
両手いっぱいにお菓子を抱えたりるちゃんは褒められて得意気に笑っていた。
その姿は頬にどんぐりを蓄えたリスのような癒しを彷彿とさせた。
「まだ、お仕事ですか?」
「そうだよ、今日もラストまでだからね」
「ハジメさんって、遅番ばっかりなんですか?」
「ああ、俺は基本遅番メインの勤務だからね」
「ふーん、そうなんだ……」
「なんでそんなこと聞くの?」
「いえ、ちょっと気になっただけで……そうか、遅番メインなんだ。なるほどね……」
(なんか、ブツブツ言ってんな……何言ってんだろ?)
まるで何かを確かめるかのように、りるちゃんは小さく頷いた。
「……明日が楽しみだな……」
「……楽しみ?楽しみって、なにが?」
「いえいえ、こっちの話です!今日はいっぱい獲れたから、もう帰りますね。これ以上持ちきれないし……」
「今、袋持ってくるよ」
袋にお菓子を詰めて手渡すと、りるちゃんがまたいつも通りの距離感で囁いた。
「お仕事お疲れ様です♡またね、ハジメさん」
(くすぐった……)
耳にかかる生暖かい吐息が神経を弄んだ。
りるちゃんが帰った後も、しばらくその余韻は消えなかった。
第4話お読みいただきありがとうございます!
地雷系女子の魅力を最大限お届けできるように頑張っていけたらと思います。
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次回、第5話でまたお会いしましょう!




