第一話 命名
生まれてから、いや、転生してから、というべきかもしれない、そこから3日がたち、やや俺のことがわかってきた。
俺を生んだ美女は生駒吉乃、信長の側室の人だ。そして、目覚めてすぐ部屋に入ってきた女性は帰蝶、信長の正室に当たる人間だ。…これだけでも俺は織田信忠である可能性は十分にあった。しかし――
生まれて、部屋の中が落ち着いた頃のことであった。俺を抱きかかえていた男性は不意に口を開いた。
『そういえば、この子に、名前をつけてやらねばならんのぉ。』
『そうですね、どんな名になさるのですか?』
『ふ〜む。…決めたぞ。この子の名は、奇妙丸じゃ!』
部屋がシーンと静まり返った。そりゃそうだ。息子に「奇妙」だなんて無付ける父親がいてたまるか。みんな唖然としている。だが、やっとのことで帰蝶が口を開く。
『殿?何を考えているのですか?なんでまたそんな名前を――』
『生まれたときの顔が、なんだか赤子のように見えず、奇妙だったからじゃ。』
吉乃も反論する。
『殿、だからってそのうような名前を付ける必要はありませんでしょう?』
そうだそうだ!俺だってこんな名前やだぞ!みんなから「奇妙丸様」とか「奇妙丸殿」なんて呼ばれたくない!
…だが、ここで確信した。やはり、俺は「織田信忠」に転生していたらしい。そして、父親が俺を抱きかかえる。
『ほれ、お主の名は奇妙丸じゃ。この信長の後をしっかり継げる男になるのだぞ!』
そして、この男、俺の父親になる人物はやはり織田信長であった。
今、俺は乳母である記憶が確かなら慈徳院の乳を吸っている。え?お前25歳なのに何してんだだって?しょうがないだろ、生命維持活動だ。生命維持活動。いやらしい気持ちなどまったくない。…そんなことはさておき、基本は、この部屋でこうやって暮らしながら、夜は父と母と寝る。その繰り返しである。だが、今は、だ。俺が織田信忠として生きる以上、史実通り行けば天正十年には死んでしまう。そうすれば、弟たちは間違いなく秀吉の天下取りの生贄にされる。それは避けないといけないし、いつ死んでもおかしくない戦国時代とはいえ、せっかく生きかえれたのだから、長く生き続けるに越したことはない。そもそも、二条城に籠城した挙句、明智の攻め手に心折れて自刃なんてごめんだ。よし、決めた!俺は生きる!この乱世を生き抜いて見せる!とはいえ、赤子だからまだわからないことも多い。外にも出られない。ここがどこかは記憶を頼りにしないとわからない。
決めた、ある程度成長するまで、情報収集だ。…でも喋れるようになるまでこの生活かぁ。やだなぁ。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。語彙力や文章力が貧弱で、読みにくい文章だったり、なにか歴史知識を間違っているところがあるかもしれません。




