表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/10

第9話:裏社会のマネーロンダリング!最優秀社員への和牛弁当とガムテープ

広域暴力団『贈集会ぞうしゅうがい』の本部。打ちっ放しのコンクリートの壁に設置された65インチの大型モニターには、NHKの討論番組が映し出されていた。午後の経済アナリストはいまだにペンを振り回し、インフレについてまくし立てていたが、内藤刑事のオフィスの中では、そのボリュームは「2」に絞られていた。


聞こえるのは、空気清浄機の低い作動音と、内藤が愛用するデュポンのライターが放つ静かな着火音だけだ。


後藤は神戸南地区の灰色い屋根の群れを見下ろす大きな窓の脇に立ち、鍛え上げられた胸の前で腕を組んでイヤホンを耳に当てていた。テレビの中で陸知事が4.5%の付加税を発表するのを見て、彼は砂利を引きずるような乾いた笑い声を漏らした。


後藤:「宇宙緊急付加税か……。あの県庁の役人ども、俺たちよりよっぽど面の皮が厚いな。あんな綺麗なやり方で市民の財布に手を突っ込むとはよ」


内藤は白く濃厚な煙の輪を吐き出し、それが画面の光を遮るように広がっていった。彼は笑わなかった。ただ、スタジオの背景パネルにフリーズされた、紺色のセーターを着て人差し指でメガネを支える山田の画像をじっと見つめていた。


内藤:「面の皮の厚さじゃない、後藤。必要に迫られているんだ。あの港は県全体のGDPの3割を動かしている。埠頭が沸騰した海水に沈んでいる時間が1時間増えるごとに、市は1億円の関税収入を失う。りくには今すぐ耐熱コンクリートとドイツ製のガントリークレーン、そしてダンプカーの出所を詮索しない下請け業者が必要なんだ。それも、月曜の朝までにな」


内藤はローズウッドのデスクの上に両肘を置き、身体を前に傾けた。彼は黒い革のファイルを開いた。そこには、組織が所有するフロント企業――建設会社、砂利の輸入業者、港湾廃棄物処理業者――の貸借対照表バランスシートが並んでいた。


内藤:「政府が日本銀行から金を引っ張るには、調査委員会を立ち上げて半年はかかる。だが、俺たちの手元には、湾岸のパチンコ店の地下金庫に眠っている30億円のキャッシュがある。北部の公共事業できれいに洗浄された、クリーンな裏金だ」


後藤:――ニヤリと不敵な笑みを浮かべて振り返る――「国のために、俺たちが港を直してやるってんですか?」


内藤:「国から港を買い取るんだよ。1960年代から続く、いつものビジネスさ」――内藤は短く間を置き、タバコの灰を落とした。――「明日の朝一番に、俺たちの系列の建設会社が第七埠頭の液状化ケイ素の撤去作業に緊急入札をかける。カタギの会社の半値だ。陸は自分の政治生命を救うために5分で契約書に判を突く。そして、市民が支払う4.5%の税金は、そのまま俺たちのケイマン諸島の口座へ直行する仕組みだ」


後藤:「全部、あの先生サマサマってわけですね」


内藤:――磨き上げられた大理石のような冷徹な笑みを浮かべて――「その通りだ。政府が神秘的な物語ストーリーを提供し、俺たちがセメントミキサー車を出す。大衆の偽善を維持するには、それを支える私的なインフラが必要なんだよ」


内藤はパチンと小気味よい音を立ててファイルを閉じた。彼は立ち上がり、流れるような動作でイタリア製スーツのジャケットのボタンを一つ留めると、窓辺へと歩み寄った。夕暮れの空に惨めに切り取られた「希望が丘団地」のシルエットを遠く見つめる。


内藤:「後藤。夜8時までに、あの404号室に特上の和牛弁当が届くように手配しろ。それと、配達員に工業用の超強力ガムテープも一巻持たせろ。メガネ用だ。うちの『今月の最優秀社員』が、テストの採点中に視力を落とされては困るからな」


後藤:「分かりました、兄貴。新税の件については、本人に何か言っておきますか?」


内藤:――窓ガラスに映る自分の顔を見つめながら――「いや、山田は金には興味がない。あの男が恐れているのは現実だけだ。ハードディスクが鍵の向こうにあり、毎晩温かい肉が食える限り、あいつは俺たちの命令一つで横浜を丸ごと溶かすだろう」


テレビ画面では、討論番組がCMへと切り替わった。『キリン・ゼロカロリー』の広告が、オフィスを鮮やかな青い光で照らし出した。それは、日本中の黙認の視線を受けながら、一人の大量虐殺者がタダ飯を食った、あのセブン-イレブンのネオンと同じ青だった。

【作者より一言】


第9話をお読みいただきありがとうございます!


表舞台では「神の奇跡」と「大増税」に右往左往する人々。しかし裏舞台では、ヤクザの若頭・内藤がその状況を完全に掌握し、市民の税金をフロント企業経由で丸ごと吸い上げるスキームを完成させていました。


宇宙の神の力を手に入れたはずの山田が、裏社会の「今月の最優秀社員」として和牛弁当と工業用ガムテープで飼い慣らされていくというシュールな展開。このダークでリアルな大人のビジネスの縮図を楽しんでいただけたら嬉しいです。


「ヤクザの頭脳がキレすぎてて震える」「山田、完全に有能な社畜になってて草」など、皆様の率直な感想をコメント欄でお待ちしております!続きが気になる方は、ぜひブックマークや星の評価ポイントでの応援をよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ