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第10話:黒船来航の金髪記者!BBCが見た日本の狂気とネットの洗礼

神戸ポートピアホテルのロビーには、工業用消毒液の臭いと、コーヒーをすする地元エグゼクティブたちの甘ったるい香水の臭いが漂っていた。サラ・ジェンキンスは一眼レフカメラのストラップを肩にかけ直した。日本の正午過ぎのねっとりとした湿気のせいで、トレンチコートの生地が背中に張り付くのを感じる。


サラは32歳。身長180センチ、金髪を実用的な三つ編みにまとめ、その青い瞳はこれまでにあまりにも多くの大量虐殺の現場マスグレイブを見てきた。彼女はメキシコのソノラ砂漠で3ヶ月を過ごし、前の『宇宙のアルゴリズム』の宿主――ライバルカルテルを神秘の炎で蒸発させ、モーテルでフェンタニルの過剰摂取により死亡した19歳のヒットマン――が残した、黒焦げの骨の残骸を調査してきたばかりだった。彼女はよく知っていた。フェニックスは徳のある者を選ぶのではない。社会の「腫瘍」を選ぶのだ。


だが、ここ神戸における問題は、死体そのものではなかった。人々の「視線」だ。


彼女がホテルの出口へと向かう途中、フロントに立つ3人のスタッフ――サラサラの髪を完璧に整えた20代前半の若者たち――は、彼女の首から下がるBBCの記者証には目もくれなかった。彼らの視線は、固定されたガラス玉のように、サラの体格のせいで少し張り詰めたコットンのシャツの胸元へと一斉に落ちた。


フロントスタッフ1:「見ろよ、あの外人ガイジンのサイズ。まるでお乳の出る牛だな。あの脚見たか? おいおい、あんなのに挟まれたら頭が潰れるぞ」――口元にへりくだった笑みを張り付かせながら、日本語で囁く。


フロントスタッフ2:「肉を食ってるからだよ。純粋なアメリカの脂肪だろ。ワケありの割引弁当でもチラつかせりゃ、車に連れ込めるんじゃねえの? ああいう手合いは恥ってものを知らねえからな、テレビドラマでも何でもさらけ出すだろ」――笑顔を崩さずにパソコンのキーボードを叩く。


東京特派員として4年間を過ごし、日本語が流暢なサラは、振り返りもしなかった。この島国特有の「受動的・攻撃的パッシブ・アグレッシブ」な差別の空気には慣れっこだった。彼らにとって、自分はBAFTA(英国アカデミー賞)を受賞したジャーナリストではなく、ただの「異国から紛れ込んだモブキャラ」であり、不快な質問で社会の平穏を乱しに来た、不釣り合いに巨大なエキゾチックの肉の塊に過ぎないことを彼女は知っていた。


外に出ると、港特有の熱気が顔を直撃した。数メートル先では、山中高校2年B組と同じ制服を着た男子高校生のグループが、彼女が通り過ぎるのを見て足を止めた。そのうちの二人がすぐにスマートフォンを取り出したが、それは遠くに見える第七埠頭の廃墟を撮るためではなかった。下品にニヤニヤと笑いながら、後ろから彼女の腰のラインに露骨なズームを合わせるためだ。


男子生徒1:「ボインボインじゃん! 先週の漫画に出てきたエルフの女騎士にソックリだわ! おい見ろよあのカーブ、ヤバすぎ。山田先生が例の炎の羽で一発カマして、あの服をビリビリに引き裂いてくれねえかな。クソ熱い展開だろ」――画面を友人に見せながら、よだれを垂らしそうになる。


男子生徒2:「ああいう外人の女って、自分の国が上手くいってないから嫉妬して、すぐこっちに来て人権がどうのって文句言うんだよな。どうせフェニックスは危険だとか、自分たちの政府がコントロールできないからって言いに来たんだろ。自分の国に帰ってポテトでも食ってろよ」


サラはため息をつき、十代の若者たちが鳴らすカメラのシャッター音を無視した。彼女は、色あせたトヨタ車の中でタバコを何本も吸いながら待っている地元フィクサーの元へと歩いた。引退した日本人ジャーナリストのケンジだ。


サラ:「ハロー、ケンジ。市役所の公式発表は無視して。陸知事は嘘をついているわ。ロンドンに届いた衛星画像を見たけれど、第七埠頭は空の物流拠点なんかじゃなかった。密輸コンテナを陸揚げしている貨物船があったのよ。犠牲者が出てる。それも、大量にね」――助手席に乗り込み、バックパックを後部座席に放り投げながら言う。


ケンジ:「サラ……相変わらずストレートだね、イギリス人らしいというか。だが、ここでは物事はそうやって動かないんだ。フェニックスは街を綺麗にしてくれた。人々は喜んでいる。なぜ西洋人はいつも我々の文化のネガティブな側面ばかりを探そうとするんだい? 君たちはここに適合しない『道徳観』に執着しすぎている」――窓から煙を吐き出し、哀れみと説教臭い父親のような視線をチラリと向けながら。


サラ:「ケンジ! 鉄のブロックの中で三十人以上の人間を蒸発させたのよ!? 肺がドロドロに溶けたの! 私はソノラでも同じ熱パターンの残骸を見たわ。前の宿主は統合失調症のパニックを起こして、村を一つ丸ごと消滅させた。ここにいる男は神なんかじゃない、公共の凶器よ!」


ケンジ:「……今のところ、彼は我々の救世主だよ、サラ。少なくとも今週いっぱいはね。それに……君のその格好を見てごらん。そんなトレンチコートをはだけさせて……この国でそれだけ目立つ女性は、発言にもう少し気をつけた方がいい。ネットの掲示板(5ちゃんねる)では、君が空港に着いた時の写真がすでに拡散されているよ。『金髪の女査察官』なんて呼ばれてね。BBCの道徳観で我々を植民地化しに来た、なんて言われてるぞ」――ゆっくりとエンジンをかける。


サラは窓の外を眺めた。幹線道路沿いの巨大なデジタル看板には、すでにテレビ神戸が作成したポスターが映し出されていた。桜の背景の中に神聖な翼を広げた山田のシルエットがあり、そのすぐ隣には、過剰に性的なポーズをとったモデルの顔写真と共に「補正下着」の広告が並んでいる。


この国の持つ歪んだ偽善のシステムは、すでに彼女をカタログに分類していた。当局にとっては「余計な場所に鼻を突っ込んでくる外国の脅威」であり、街を行く男たちにとっては「ネット掲示板のドス黒い妄想のネタに消費される、180センチの輸入物の肉の塊」だ。この国全体がネット依存の変質者の炎の中で泥沼に沈み込もうとしているというのに。


サラ:「山中高校へ行って、ケンジ。私たちの『神』が、普段どこで授業をしているのか見てみたいわ」――自分が一体どんなゴミ溜めに足を踏み入れてしまったのかを、正確に理解しながらサラは言った。

【作者より一言】


第10話をお読みいただきありがとうございます!

記念すべき第10話にて、ついに海外からの刺客(?)であるBBCの女性記者・サラが登場しました。


海外で「宇宙の力」がもたらした本物の地獄を見てきた彼女だからこそ、日本のメディアや市民が山田を「増税の原因」としつつもどこかエンタメ消費している狂気に気がついています。そして、日本のネット社会特有の洗礼(ネット掲示板での晒しや性的な目線)を受けるサラ。


「海外記者の視点が入ると一気にサスペンス感出るな」「ネット民の反応がリアルすぎて胸が痛い(笑)」など、皆様からの考察や感想をコメント欄でお待ちしております!この新展開を応援してくださる方は、ぜひブックマークや星の評価ポイントをよろしくお願いいたします!

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