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第3話:コンビニ弁当と極道。神の咀嚼に涙する群衆と、路地裏の計算

弁当は一分もしないうちに届いた。セブン-イレブンの店員――期末試験に落ちたばかりの男子大学生――が、両手でそれを捧げ持ち、まるで皇帝の前に跪く伝令使のように、山田の前に平伏した。


中身は完璧だった。つやつやの白米、新鮮な鮭、見事な錦糸卵……そして、神聖な願い(?)が通じたのか、無料のアイスクリームまで添えられている。震える青年は、数分前に上司からひったくったばかりのブラックカードをも差し出していた。


山田:「……あ、ありがとう」


聖なるお告げもなければ、食べ物への宇宙的な祝福もない。山田はただ(どこにでもあるプラスチックの)割り箸を割り、崩壊した市役所前広場で、プラスチック容器から直接バカバカと食べ始めた。


彼が一口運ぶたびに、周囲からは崇拝に満ちた一斉の視線が注がれる。自家製ワサビの効いた焼き鮭の一切れを山田が呑み込んだ瞬間……群衆の一人が感激のあまり失神した。


リポーター:「私たちと同じように召し上がられている……それどころか、あんな安物の箸をお使いになるとは……なんと、なんという天上の謙虚さでしょうか!」


年配の女性がヴィンテージのアナログカメラを取り出し、感動の涙を流しながらシャワーのように三連写した。


一方、市役所に隣接する路地の暗がりから、二人の男がその様子を遠巻きに観察していた。


一人は、地元を牛耳る極道組織『贈集会ぞうしゅうがい』の若頭、内藤刑事ないとう けいじ。仕立てのいい黒スーツに身を包んだ彼は、聖なる瓦礫の中でファストフードを貪り食う「鳥男」を、静かにタバコをふかしながら見つめていた。


内藤がゆっくりと吐き出した煙は、綺麗な輪を描いて空気中に溶けていく。鍛え上げられた鋼のように硬いその顔には、左の眉から頬にかけて一本の傷跡が走っており、そこには驚きの色は一切なかった。あるのは、計算だけだ。


その隣には、彼の右腕である後藤新時ごとう しんじ。丸刈りの頭に、首筋まで黒い蛇のような刺青が這い上がっている巨漢だ。彼は近くのビルの屋上に配置した二人の見張りからの無線をイヤホンで聞いていた。


後藤:「……あの野郎、街を半分ぶっ壊しといて、今はタダ飯食いですか」――後藤の身体が緊張で強張る。


内藤:「何者であれ、関係ない」――内藤は、ワサビご飯を貪るフェニックスから目を離さずに短く間を置いた。――「重要なのは、あいつが何をしようとしているかだ」


内藤は二本の指でタバコを揉み消し、躊躇なく地面に落とすと、20万円のイタリア製革靴のつま先でゆっくりと踏みにじった。


足元でプラスチックが潰れる音が、宗教的な静寂に包まれた広場に銃声のように響く。誰一人としてそちらを振り向く勇気はなかった――全員、山田の下唇についたワサビを舐めとる姿に釘付けだったからだ――。だが内藤には分かっていた。今や日本全土、いや、公安警察も潜入軍人も、なんなら衛星から覗いている外国のスパイまでもが、あの男に注目している。


内藤:「街を滅ぼせる男が、なぜプラスチックの皿で飯を食っている?」


後藤:「……ただのバカなんじゃないですか?」


内藤が鋭い視線で睨みつけると、後藤は慌てて言葉を添えた。


後藤:「いや、つまり……見てくださいよ。本人すら、自分に羽が生えてることにビビってるように見えます」


内藤は答えなかった。代わりに、スイス製のハンドメイドの銀のシガレットケースから新しいタバコを取り出し、静かに火をつけた。磨き上げられた鋼のような冷たい瞳に炎が映る。


煙が静かに立ち上る中、彼は『宇宙のフェニックス』を観察し続けた。……男は、器からはみ出しそうになった錦糸卵を嬉しそうに頬張っている。山田は口を拭こうともしない。唇の端には米粒がつき、脂ぎった首元には醤油のシミが広がっていた。


突然、内藤の口元が吊り上がった。それは、地面に落ちている大札を見つけた者だけが浮かべる笑みだった。


後藤:「……何を考えてるんですか?」


内藤:「……規律のない、絶対的な力」――煙を吐き出しながら、長い沈黙の後に呟く。――「そして、目的もない」


完璧に仕立てられたスーツの中で腕を組み、内藤は変貌した教師の不格好な動きを一つ一つ分析していった。不安からせわしなく咀嚼する様子、再び空腹を感じたのか羽が不規則にパチパチと燃え盛る様子……。


他の誰もそんな風には見ていなかった。皆、彼を現世に降臨したブッダか何かのように扱い、無償の恵みを授かろうと、地べたに這いつくばっているのだから。


内藤:「神格化される前、あの男がどんな奴だったか調べろ。近いうちに、自宅へ直々に『家庭訪問』といこうじゃないか」

【作者より一言】


第3話をお読みいただきありがとうございます!


ついに裏社会の人間まで動き出してしまいました。全人類が山田を「至高の神」として恐れおののく中、ヤクザの若頭・内藤だけは別の可能性に気づいたようです。


高級スーツの男たちが差し出したブラックカードではなく、セブン-イレブンの緑シールの値引き弁当(しかもアイス付き)を最高に美味そうに食う山田。この圧倒的な小市民感と、それを取り巻く狂気のギャップを楽しんでいただけたら嬉しいです。


「ヤクザが山田の家に行ったらどうなるんだ!?」「次の勘違いが楽しみ」など、皆様の感想や考察をぜひコメント欄でお聞かせください!ブックマークや評価ポイントでの応援も、どうぞよろしくお願いいたします!

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