第22話:第二章開幕:権利能力消滅!地下3階のアクリル密閉室と22日間の拠出金
東京地方裁判所の被告人席には、オーク材の荘厳さも司法の歴史の重みも存在していなかった。それは裁判所庁舎の地下3階、敷き詰められた鉛のプレートの上に直接ボルトで固定された、ステンレス鋼と高強度メタクリル樹脂でできたパイプ状の構造物だった。本来は生物兵器を持つテロリスト用に設計された、空気圧制御の隔離キューブ(密閉室)である。
山田武は、その室内の中心にある鋳鉄製の固定ベンチに腰掛けていた。彼は府中刑務所の未決囚が着用するオリーブグリーンのジャージを着ていたが、横須賀の軍医チームが彼の胸の筋肉組織を切り裂くことなしに削り落とすことができなかった、例の「人工火山岩(ケイ酸塩ポリマー)の瘡蓋」を隠すために、襟元は上まで固く締められていた。彼の眼鏡のフレームには、もはや造集組の工業用ガムテープは巻かれていなかった。裁判所の警備隊によって、彼のハゲ頭を締め付ける青い伸縮性のベルクロストラップに交換されており、そのため彼は教壇の3人の裁判官に対して頭部を硬直させたまま固定することを余儀なくされていた。
アクリル板の向こう側では、庁舎のエアコンがオフィスのそれと同じ規則正しいハム音を響かせていたが、キューブの内部の空気は希薄で、山田の皮膚から滲み出るオゾンと抗生物質軟膏の臭いで重く淀んでいた。
裁判長:――法務省の「菊花紋章」が押された一連の書類の束を読み上げながら。その顔の皮膚は黄色い折り目のように弛んでいた――「――国家安全保障委員会による特例規定、および2026年制定の『熱異常特性物質管理法』に基づき……当裁判所は、被告人・山田武に対する刑事事件番号402号の判決言い渡しを執り行う」
山田は裁判長を見ていなかった。鼻梁の傷痕のせいで細められた彼の目は、検察側の机に固定されていた。そこでは、非の打ち所のないグレーのパンツスーツを着た女性事務官が、彼が数学科の職員室で使っていたものと全く同じ3冊のリングファイル(バインダー)を整理していた。山田は右手の指を動かし、チョークの感触が失われていることに気づいた。研究所の医師たちが彼の手指にケイ酸塩の堆積物が蓄積するのを防ぐため、彼の爪は完全に深爪(生際まで)に削られていたのだ。
山田:「――あの……グレーのファイル。人事記録の、第3セクションです。もし、非常勤の免職手続きが火曜日より前の日付で登録されていない場合……6月分の公立学校共済組合への拠出(年金)が無効になってしまいます。私は……私は22日間、確かに勤務(拠出)しました」
彼の声は法廷のスピーカーを通過しなかった。キューブ内のグースネックマイクが、インターホンの振動板をかろうじて震わせるだけの、平坦で調子の抜けた低い擦れ音を拾い上げた。
裁判長は書類から視線すら上げなかった。裁判所という官僚機構にとって、アクリル板の内側の男はもはや法的主体ではなかった。識別番号のついた、ただの「熱管理上の問題」に過ぎない。
裁判長:「被告人は、未分類の代謝異常を行使し、兵庫県による一切の誘導指示を完全に無視して山中高校の敷地を完全に破壊し、結果として生徒32名を学籍簿から、および保安要員4名を修復不可能な形で消滅せしめたことが実証された」
宇宙的物質:「教室の家畜め……このコンクリートの穴ぐらにいる裁判官どもは怯えている……奴らの血は古い紙と恐怖の臭いがする……アクリルを沸騰させろ……この地下室を石灰の灼熱炉に変えてやる……」
寄生虫は彼の食道の奥底で身をよじったが、ジャージの緑色の布地を突き破って黄金の輝きが漏れることはなかった。横須賀のチームが、公判の前に彼の胸膜へ直接3リットルの冷たい硫酸バリウムゲルを注入していたからだ。山田の歯の根に響くその声は、浄化槽の底で悶える断末魔のエコーのように鈍く濁っていた。
山田:「静かにしろ……Aブロックはすでに無効になったんだ。成績簿は閉じられた。黙れ」
山田は目を閉じ、鉄のベンチに対してほとんど目立たない動作で踵を一度コツンと打ち付けた。
裁判長:「以上の事由により、また国家の安全に対する差し迫ったリスクを伴うことなしに通常の禁錮刑(刑務所収容)を適用することが不可能であることに鑑み……本裁判所は山田武に対し、**無期懲役(絶対隔離および強制的生物封じ込め措置)**の刑を言い渡す」
裁判長は一度言葉を切り、老眼鏡の位置を直すと、初めて隔離キューブの内側へと視線を向けた。その退職間際の老役人の目が、教師のハゲ頭を捉えた。
裁判長:「刑の執行は、海上自衛隊横須賀基地の地下施設において執り行われる。被告人の全公民権の永久剥奪、住民登録の抹消、および教職活動に由来する一切の資産の没収を命ずる。日本国政府は、当該対象の私法上の権利能力(人格)が消滅したことを宣言する。閉廷」
裁判長が叩いた木槌が、コンクリートの空間に乾いた、決定的な音を響かせた。それは、一日の終わりに職員室の引き戸が閉まる時と全く同じ音だった。
山田の右側で、空気圧制御の鋼鉄製の扉がプシューという排気音とともに開いた。自衛隊の防護服(NBQスーツ)を着用し、自給式呼吸器と磁気ショックバトンを装備した2名の警備官が、彼の皮膚に直接触れないようにして両腕を掴んだ。山田は抵抗しなかった。胸の石のかさぶたの重みと、肺の中のバリウムゲルの冷たさを感じながら、彼は左右非対称の不揃いな足取りで立ち上がった。
彼が地下の雑居房へと降ろされる貨物用エレベーターへと連行される間、山田は最後に検察側の机へと視線を走らせた。女性事務官はすでに、あのグレーのファイルを「廃棄物件」のスタンプが押された段ボール箱の中へと収め終えていた。
司法の歯車は今、この事件を「アーカイブ(処理済)」にした。ハゲた神にはもはや給与も、先任権のポイントも、文部科学省の階級( escalafón )における名前すら残されていなかった。無期懲役とは、単なる牢獄ではない。彼を安全装置として消費し尽くした後、容赦なく吐き出した「システム」の完全なる虚無そのものだった。
【作者より一言】
第22話をお読みいただき、ありがとうございます。そして、ここから『第二章・横須賀隔離施設編』の開幕です!
前章の港湾の焦熱から一転し、今回は東京地方裁判所の地下3階という、最も冷徹で事務的な空間からスタートしました。
どれほど宇宙的な破壊の力を秘めていようとも、国家のペーパーワーク(書類手続き)の前では、山田武の存在(人格)は「住民票の抹消」の一言で完全に消去されてしまいます。無印良品の赤ペンを奪われ、爪を削られ、グレーのファイルが「廃棄物件」の箱に放り込まれる描写は、ある意味でプラズマの爆発よりも残酷なシステムによる処刑です。
権利能力を失い、自衛隊の地下深くへと運ばれる「名前のない廃棄物」となった山田。そして、バリウムゲルで冷やされた胸の中で牙を研ぐフェニックス。
この最悪の監獄で何が始まるのか……。
「22日間の拠出にこだわる山田先生が悲しすぎる」「爪を削ってバリウム流し込む横須賀の対策がエグい」など、第二章の幕開けに対する皆様のコメントをぜひお待ちしております!
新展開の本作を、引き続きブックマークや評価ポイントで応援していただけると嬉しいです!




