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第15話:関数電卓は使用禁止!国家のトカゲの尻尾切りと、安全装置外されし教壇

午前八時半ちょうど、山中高校に始業のチャイムが鳴り響いた。しかしその音には、いつものような金属的な響きはなかった。神戸の南地区を包み込む灰色の雨のカーテンに遮られ、低く、重く、窒息しそうな音だった。


いつもなら三々五々、三百円の透明なビニール傘を引きずった高校生たちで賑わう中庭は、完全に静まり返っていた。代わりにアスファルトを占拠していたのは、兵庫県警の3台の大型機動隊車両カマボコだった。黒いナイロン製の防刃衣、ポリカーボネート製のバイザー付きヘルメット、そして透明な大盾を装備した隊員たちが、正門の脇に完璧な隊列を組んで控えている。彼らは通りを見ていなかった。彼らが見つめていたのは、二階の窓――2年B組の天井を覆う、あの突貫工事のブルーシートだった。


校舎の廊下には、天井の蛍光灯が発するジーという微かなノイズが聞こえるほどの重苦しい沈黙が満ちていた。生徒たちはすでに席につき、グレーの制服のボタンを一番上まで留め、筆箱を机の右隅に並行に並べて身じろぎ一つせずにいた。誰も喋らない。誰もスマートフォンを見ない。集団の恐怖は、完璧な「官僚的従順」の境地に達していた。


山田武は、コピーされた32枚のプリントの束を抱えて職員室のドアをくぐった。右手には三角関数の試験用紙、左手には事務員との3分間に及ぶ「備品管理の予算消費」に関する屈辱的な押し問答の末、ようやく勝ち取った一本の白チョークが握られていた。


彼の歩調は左右で乱れていた。右足の安物の黒い合皮靴が、湿ったリノリウムの床を叩いて乾いた音を立てる。左足は、破れたスニーカーから覗く煤けた包帯のせいで、一歩進むごとにうっすらとグレーの湿った跡を残していた。山田は周囲を見ようとしなかった。贈集会ぞうしゅうがいの工業用ガムテープを3重に巻いて修理されたメガネのせいで、レンズの綺麗な部分を通して焦点を合わせるためには、首を少し右に傾け続けなければならなかったのだ。


通りに面した廊下の窓を通り過ぎる際、山田は一瞬だけ足を止めた。眼下、警察の警戒線のすぐ後ろに、ケンジの色あせたトヨタ車がまだ停まっていたが、そのフロントガラスにはすでに赤色の「運行停止処分」のステッカーが貼り付けられていた。車の脇では、黒い傘の下でタバコを吸いながら、同じデザインのダークスーツとトレンチコートを着た二人の男が上を見上げていた。


一人は後藤だった。二階の窓辺に山田のハゲたシルエットを視認すると、彼は革手袋を嵌めた二本の指を帽子の鍔に当て、機械的で不快な挨拶を送ってきた。


山田は胃の奥に焼けるような痛みを感じた。内藤の部下たちの接近と、遠くで響くヘリコプターの爆音を察知した胸の中の寄生虫が、彼の食道の中で激しくのたうち回ったのだ。縫い糸ほどの細さの黄金の光の線が、ボロボロの紺色セーターの生地を透過して輝き、ウールの繊維をさらに1ミリ焼き焦がした。


宇宙のフェニックス:――山田の口蓋に直接響く、地鳴りのような低い囁き――「機械油と裏切りの臭いが大気を満たしている……人間の作る傲慢な歯車が閉じようとしているのだ……。我が熱圏の炎で周囲のすべてを清掃させろ……。この煉瓦の檻を、原初のケイ素へと還してやるのだ……!」


山田:「うるせえ……黙れ、黙れってんだ。金曜日までに成績表を提出しなきゃ……非常勤の契約更新がなくなるんだよ。三角関数は共通テストの必須項目なんだ……黙ってろ」――山田は歯を食いしばり、廊下の壁に肘を激しく打ち付けて胸の輝きをねじ伏せた。


彼は2年B組の引き戸を引いた。古い木枠の悲鳴のような音に、32人の生徒が一斉に背筋を伸ばした。まるで一つの神経系を共有しているかのようなシンクロニズムだった。


山田は木製の教壇に上がった。テスト用紙の束を、緑茶の滴る古い水筒のすぐ隣に置く。ゆっくりとした動作で黒板の方を向くと、白チョークで日付を書き始めた。彼の wrote 手はわずかに震え、「2026」の数字のストロークが少し右下がりに歪んだ。


その瞬間、教室の右上隅に設置された14インチのブラウン管テレビ――文科省の要請により、県からの緊急告知を放映するために学校側が常時オンにしているモニター――の画面が、点滅する赤色の背景へと切り替わった。


【兵庫県庁からのお知らせ・緊急特別番組】

画面は市役所の階段前へと直接切り替わった。テレビに映し出されたのは、陸俊雄りくとしお知事だった。そこにはもう、あのホワイトニングされた笑顔も、「救済の篝火」を謳った演説のトーンもなかった。彼の顔は青ざめ、報道陣のライトの下で硬直しており、嵐の風のせいで髪はわずかに乱れていた。


陸知事:――震える声で、プロンプターを真っ直ぐに見つめながら読み上げる――「――市民の皆様。ここ数時間、海外のメディア企業によって流布されている意図的かつ歪曲された情報に対し、当県庁は断固たる態度を表明せねばなりません。第七埠頭における介入は、民間の組織的な協調作戦ではありませんでした。フェニックスと呼ばれる熱異常を宿した市民、山田武氏は、個人の制御不能な『神秘的妄執』による精神錯乱状態で暴走したものであり、当政府の指示とは一切無関係であります」


教室内では、誰も動かなかった。山田の方を振り返る生徒は一人もいなかった。沈黙があまりにも濃密になり、天井のブルーシートを叩く雨の音が、まるで突撃の陣太鼓のように響いていた。


陸知事:「日本国政府は、不法滞在者であるか否かを問わず、過度な私有財産の破壊および人命の喪失を容認しません。したがって、国家安全保障の確保および国際条約の遵守に基づき……市民・山田武の教職機能の即時停止を宣言し、安全部隊に対し、精神医学的評価および熱量封じ込めのための予防的隔離(身柄拘束)を命じました」


山田は黒板の前で、チョークを黒い木肌から2センチ浮かせたまま完全に静止した。廊下で、機動隊の突撃銃アサルトライフルの安全装置が解除されるカチャリという金属音が、はっきりと彼の耳に届いた。


国家のシステムは、今まさにバラスト(重り)を切り離したのだ。内藤の「今月の最優秀社員」は、もはや単純化された方程式ではなく、二限目が始まる前に切り落とされるべき「余り物の変数」に過ぎなかった。


山田はゆっくりと手を下ろした。人差し指でメガネを押し上げると、ガムテープの冷たい感触が伝わってきた。彼は三角関数の試験用紙の一枚目を見つめた。そこには、第1問として「αの角度が無限大に収束する三角形の斜辺を求めよ」という問題が印刷されていた。


山田:「――大問Aを解く時間は……45分です。関数電卓の使用は認めません。……始めてください」――教室の窓ガラスを振動させるヘリコプターの爆音の中、彼の抑揚のないモノトーンの声は、1ヘルツたりとも変わることはなかった。

【作者より一言】


第15話をお読みいただきありがとうございます!


ついに国家の包囲網が2年B組の教室へと迫りました。テレビの中で自分を「精神錯乱の暴走ハゲ」と切り捨てる知事の緊急会見をBGMに、淡々と「関数電卓の使用は認めません」と言い放つ山田武(38歳)。この極限状態における、小市民的な狂気の極みがここにあります。


廊下でアサルトライフルの安全装置を外す警察。校門で見守るヤクザの後藤。そして胸の中で「全部灰にしろ」と囁く宇宙のフェニックス。

四面楚歌の教壇で、制限時間45分のテストが今、始まりました。


「この状況で関数電卓禁止は鬼畜すぎて草」「山田のメンタルどうなってんだww」など、皆様からの感想や応援コメントをお待ちしております!物語はここから一気にノンストップのクライマックスへ。ぜひブックマークや星の評価での応援をよろしくお願いいたします!

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