第13話:世界放映の爆弾!『ハゲた神』の殺人事件と、雨に煙る警察ヘリ
日曜日、神戸の朝は鉛色の曇り空で明けた。まるで、これから訪れる破滅を天候が予感しているかのようだった。地元のローカルニュースはすでに、内務省の息のかかった情報を流し始めていた。サラ・ジェンキンスは「日本の港湾機能を妨害するために中国企業から資金提供を受けた、反日組織とつながりのある外国人経済スパイ」である、と。
SNS上では、統制された排外主義のコメントが津波のように押し寄せていた。彼女の顔写真に角と炎を合成したコラ画像が拡散され、彼女の来日を「ジャーナリズムに変装した侵略行為」と書き立てる者もいた。
一方、ロンドンの午後九時。ニュース番組『ニュースウォッチ・ナイトリーレポート』のオープニング曲が流れた直後、完璧なスーツに身を包んだサイモン・ウィリアムズがカメラの前に姿を現した。
サイモン:「――こんばんは。今夜我が国は、日本政府の暗黙の了解のもと、一人の男の独断によって執行された大量虐殺の隠蔽工作について、その全貌を暴露します」
画面には、第七埠頭の破壊前と破壊後の衛星画像が映し出された。次いで、コンテナの中に何が入っていたのかを音声を変えて告発する、匿名の情報提供者たちの証言が次々と流されていく。
――*――
同じ時刻、山田はアパートの部屋で、何時間も瞬き一つせずにテレビの前に座り込んでいた。ハーフパンツのスポーツウェア一枚という格好で、じっとりとした不快な暑さに身体を濡らしながら、缶のコールドコーヒーを直にすすっている。
ローテーブルの上で、彼のスマートフォンが低く振動した。通知。――『BBCワールド:「日本の宇宙的殺人事件」』
リンクを開くと、そこにはあの高校の教室でのインタビュー中に撮影された、彼自身の写真が掲載されていた。見出しにはこうあった。
【『ハゲた神』と呼ばれる日本の教師、組織暴力団に操られ30人の移民労働者を焼き殺す】
山田は英語が得意ではなかったが、その画像に翻訳は必要なかった。そこには、ボロボロのセーターの背中から羽を覗かせ、生徒たちが救世主を見るような目を向ける中で、サラを指差している自分の姿があった。
冷たいコーヒーが太ももにこぼれたが、彼はまったく反応しなかった。彼の飛び出た両目は、写真と、辛うじて解読できるテキストの間を激しく往復していた。
【MURDER(殺人)】という単語が、記事の中に三度も登場している。
そして太字のサブタイトルにはこう書かれていた。
【政府公認の放火魔、ヤクザの犯罪を隠蔽するために32人の命を消去】
彼の呼吸が急速に浅くなった。頭蓋骨の奥で、爆発の直前のようなキーンという鋭い耳鳴りが響き渡る。国際政治も、内務省の隠蔽工作も、彼にはさっぱり理解できなかった。しかし、彼はもっと具体的で、もっと恐ろしい現実を理解した。――自分は『凶悪犯』として、世界中にラベリングされたのだ。
開け放たれた窓の向こうから、昼過ぎから降り続く細かい雨を切り裂いて、低空を飛行する警察のヘリコプターの爆音が響いてきた。
ここから何キロも離れた場所で、内藤もすでに同じレポートを読んでいるはずだ。おそらく、それが電波に乗るよりも前に。
【作者より一言】
第13話をお読みいただきありがとうございます!
ついにBBCが世界に向けて「ハゲた神(God Calvo)」の真実を放映しました。国内では「経済スパイ」としてサラを叩く世論が形成される中、世界基準の「MURDER(殺人)」という現実が山田のスマホに突きつけられます。
どれほど圧倒的な熱量を持っていようとも、世界的なメディアの弾頭と、太ももにこぼれる冷たい缶コーヒーの惨めさには抗えない山田武(38歳)。警察のヘリが迫る中、彼を社畜として囲い込んだヤクザの内藤はどう動くのか……?
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