第71話 企み
放課後分身ナンバー1がワイズベルの後を付ける。
ワイズベルは連れ込み宿に入った。
密会なのか。
現れた相手は盗賊風の男。
「魔法学園に襲撃を掛けろ。抜け道なら用意してある」
「王都の城壁にもか」
「ああ。だが王都の城壁から入っても街では騒ぎを起こすな。魔法学園ではどんな略奪しても構わない」
ワイズベルも大胆だな。
ワイズベルはその後、寮に戻った。
「決行は3日後だ。何としても騒ぎの間にライドを始末しろ」
「はい、最上級会員のパーティにやらせます。腕利きですから失敗はないでしょう。不安要素としてはファントムですね」
「そのための騒ぎだ」
下級会員以外には襲撃が知らされたようだ。
知らされた会員は盗賊を退治して功績をあげることになっているようだ。
口封じもばっちりってわけだ。
盗賊が侵入したら抜け道は塞がれるらしい。
一人も生きて返さないってわけね。
俺はカリーナの護衛チームに襲撃の日時を教えた。
これで大丈夫だろう。
Aランク冒険者がそこらの盗賊に後れを取るとは思わない。
それに、盗賊が侵入したらすぐに死魔術で殺すつもりだ。
賢者の塔の襲撃を知らされている会員は、トラップを作り始めた。
初級会員は襲撃を知らされてないので、中級会員以上が演習をするとだけ聞いている。
盗賊が可哀想だが、やつらは見つけ次第縛り首だからな。
いままで悪い事をしてきたのだから、仕方ない。
俺は自分とカリーナに害が及ばないのであれば別に構わない。
ただ、盗賊が学園に入ったら、うっとうしいので叩き潰すけどな。
俺の住んでいる寮にもトラップが多数仕掛けられた。
これは盗賊を殺すのではなくて俺を殺すためのものだろう。
名目は市街戦の演習だ。
魔道具のトラップは小型で、ほとんど目立たない。
今は仕掛けただけで起動してない。
当日、起動する予定だろう。
俺には魔力の流れで魔道具の類は分かる。
起動してなくてもだ。
魔力が流れると魔力回路が反応を起こすからだ。
俺に対して魔力回路をこっそり仕込むことなどできない。
サマンサ先生にも警告しておくか。
死んで困ったりもしないが、サマンサ先生は便利だからな。
「3日後、盗賊がこの学園に潜入します。そういう情報を得ました」
「奇襲でなければ容易いですね。これでも先生ですから。他の先生に伝えても良いですか」
「ええ」
「いつも思うのですが、そのゴーレム見事ですね。ちょびっと欠片だけでも」
分身がゴーレムみたいな物だと報せたが、魔力結晶はサマンサ先生には渡せない。
「駄目ですね。渡せません」
「では何か面白い題材はないですか?」
「魔力はエネルギーを吸収したり放出したりできるらしいです。魔力は吸収できませんが」
「そんなことは知ってますよ」
知ってたらしい。
「光を吸収すればダークゾーンが作れます」
「それも知ってます。ただの魔力の放出で破られますね」
ああ、ダークゾーンを作る魔力を魔力で押しのけるのか。
だよな。
考えてないわけがない。
「落雷を魔力で吸収したら、かなり強くなれるのでは」
魔力がパワーアップするからね。
魔力の総量は変わらないけど、魔力の質が上がる。
「そんな危険なこと出来ませんよ。いくら私でもです。できるのはせいぜい日光浴です。日光神の信者は全裸で日光浴して魔力を強くします」
「そんな宗派があったのですね」
「恥ずかしいので人気はありません。ただ一部の人は嵌るらしいですけど」
プリンクが入りそうな宗教だな。
奴は全裸が好きだったからな。
「他人からは変態に見られますね」
「性的なことを考えると破門らしいですよ。あくまで自然との同化を目指すらしいです。だから全裸になるのは誰もいない所だとか」
すまなかった。
真面目な宗教なんだな。
まあ、純粋な日光浴みたいなものか。
性的な興奮のためにやってない。
ヨーロッパなんかは日光浴文化がある。
真面目にやっているのを茶化したら悪い。
「考えたら自分を火あぶりにして熱を吸収したらどうです」
「一歩間違えたら全身大やけどです。みんなライド君ほど魔力操作が巧みだとは思わないで下さい」
俺も試すのは嫌だな。
火に対する恐怖がある。
恐怖心から魔力の操作を誤ったら火傷だからな。
魔力を外に放出して火を吸収するのなら良いけど。
それなら怖くないが、魔力の質を上げても何になるという気持ちがある。
ぶっちゃけ要らないよね。
それに体外に出した魔力を循環させて再び体に戻すのは俺以外にはできないだろう。
俺はやらないな。
魔力の経験値上げに火を燃やし続けるなんてめんどくさい。
お風呂ぐらいなら他の人も出来るけど、この世界の人もめんどくさいんだろうな。
熱エネルギーを得るためにお風呂に浸かり続けるのは。
俺は、吸収しても問題ないエネルギーを考えついた。
重力だ。
でも無重力で生きていると骨が弱くなる。
これも駄目だな。
なかなか難しい。
「磁力とか、電波とかを吸収ですかね」
「磁力は日光神信者もやってます。電波ってなんですか?」
「雷の余波の弱いものだと考えたら良いです。空気中を飛び交ってますからね」
「詳しく」
サマンサ先生に電波を説明した。
電波を使った魔道具とか、魔法を作るのかな。
ラジオはただ単に電波を飛ばしただけじゃ出来ないんだよな。
そんなに複雑でもないけど仕組みがいる。
一石ラジオ程度でもね。
まあ、サマンサ先生は何か考えるだろう。
生活が便利になるものだと良いと思う。
電子レンジとかね。




