第69話 ヒュドラ
今日は分身ナンバー3の映像。
クラフティ達、真(笑)勇者パーティだ。
今回の討伐はヒュドラ。
こいつが泉に居座っているせいで、下流に毒が流れている。
ヒュドラは考えようによってはドラゴンより強敵だ。
9つある全ての頭を短時間で潰さないといけない。
でないと復活するからな。
ひとつでも頭が残っていると死なない。
さてお手並み拝見。
「よし、俺が前衛。スロベニーは炎魔法。カルエルは解毒魔法。頼むぞ」
「ええ、任せて」
「毒は問題なくします」
3人がヒュドラの泉に近寄る。
「やるぞ」
無言で頷く二人。
クラフティは駆け出した。
「身体強化、身体強化、身体強化」
おお、クラフティ本気だな。
身体強化の3枚掛けとはやる。
2枚掛けでも高等技術なのに。
意外に実力はあったのかな。
まあ、騎士にはなかなか成れないよな。
「援護する、火炎竜巻」
スロベニーの魔法がヒュドラを炙る。
だがヒュドラは苦しんでいる感じではない。
「解毒」
カルエルが周りの毒を解毒する。
「てやー、やった首がひとつ」
クラフティはヒュドラの首を落とした。
ひとつだけじゃ駄目なんだよな。
ほら。
ヒュドラの別の頭がクラフティを噛む。
「くっ、解毒を」
「解毒。駄目、一回じゃ効かない。解毒、解毒、解毒、解毒、解毒」
ヒュドラがブレスの体勢になった。
「石壁」
何とかブレスは防いだが、毒のブレスには酸も含まれているのか白煙が上がり石壁が溶かされていく。
「くっ、噛まれた腕が痛くて戦闘できない。撤退するぞ」
「ええ」
「はい」
もう撤退しちゃうの。
撤退するときにクラフティは落とした頭を持ってきた。
そして、貴族の館で自慢し始めた。
「真勇者の底力だ。ヒュドラの首をひとつ落としたのだぞ」
ひそひそ声が聞こえる。
「貴族軍だって3つの首を落としたのに」
「普通の3人パーティなら確かに凄いが、勇者なら凄くないだろう」
「名誉勇者だからこんなものか」
「スェイン様に頼むべきか。今からでも遅くないな」
「討伐の金は払わないでおこう」
「みんな俺を喝采しているな」
クラフティはどんだけおめでたいんだ。
このひそひそ声が喝采なら、馬鹿と言うしかない。
「では討伐は失敗ということで処理します」
貴族らしきひとがそう言った。
「いや、これのどこが失敗なんだ。首ひとつ。十分な成果だろう」
「そうよ。冒険者程度では出来ない偉業よ」
「敵が強すぎたの。私達は悪くない」
「失敗は失敗ですから。幸いにしてヒュドラは怒ってません。泉から動いてないようです。なかったことにしましょう。ご苦労様です。お帰り下さい」
「大臣を通して抗議させてもらう」
「お好きなように」
あー、この貴族の派閥は敵に回したな。
どんだけ敵を作ったら気が済むんだ。
面白いから放っておくよ。
ヒュドラは少ししたら俺が始末しておこう。
緊急性はないからな。
「くそっ、ヒュドラの首が金貨5枚か。今夜は豪遊できないな」
「仕方ないわよ」
「癒してもらいましょう」
「そうだな金貨5枚でも酒ぐらいは飲める」
「役者にはかなり貢いだから、別れるなんて言わないわよね」
「私も孤児院にたくさん寄付しましたから」
3人は楽しんで憂さを晴らしたようだ。
夜、ファントムと分身が泉に到着した。
「分身は収納魔術を使うのは難しいからな。収納魔法を頼むぞ」
「へい」
「死。ヒュドラも高濃度魔力には形無しか」
「収納。帰りも飛ぶ座席ですかい。安全運転で頼みまさぁ」
「朝までに帰って来れないぞ」
「構いませんぜ。育ちが悪いので椅子の上でも寝れまさぁ」
ヒュドラ討伐は終り、次の日ヒュドラは王都で競りに掛けられた。
どこのヒュドラだと噂になる。
真勇者パーティが失敗したヒュドラと判明するのに1週間は掛からなかった。
「何で俺達が討伐失敗したヒュドラが、次の日に王都で競りに掛けられるんだ」
クラフティがわけわからんと混乱している。
怒ったら良いのか、喜んだらいいのか、嫉妬したらいいのか、悔しく思ったらいいのか分からないらしい。
「きっと、あの時の傷がもとでヒュドラが弱ったのよ。それを誰かが狩った。一晩で王都まで運べるのだから、大きな組織がいるのかも」
スロベニーが見当違いなことを言っている。
「傷が原因なら、ヒュドラの素材の半分。いいえ9割は貰わないと」
カルエルもたいがいだな。
「ヒュドラは匿名で売られたらしい。きっと裏の者だな。となるとファントムが怪しい」
「あいつ、私達をストーキングしているのかも」
「きっとそうね」
おう、そこに気づくとはな。
分身を見つけたら褒めてやろう。
「いや、俺の勘ではここにはいないな」
クラフティの勘とやらはへっぽこだな。
「確かに。私もいないと思うわ。ファントムの魔力って、かなり独特だから近くにいれば分かる」
「私もいないと思います。生命力が3人分しか感じられません」
「裏の者には貴族の権力が及ばない。金しか興味のない奴らだからな。きっと依頼を出した貴族が裏切ったな。奴がヒュドラの情報をファントムに流したのに違いない」
揃いも揃ってへっぽこだな。
まあ死んでも良いって送り出された奴らだろうから、こんなものか。




