第62話 討伐の旅
「ふんっ、本当に徒歩で来た。馬の一頭も持ってないのね」
スロベニーに鼻で笑われた。
そのスロベニーは家紋入りの2頭立ての馬車。
メイドを2人も連れている。
クラフティは馬車でなくて、馬に野営道具を積み込んでいた。
カルエルも馬車だが、こちらはお付きの者は御者だけだ。
ケチったのか、ひとりが楽だと思ったのか分からない。
さて。
俺はおもむろに飛ぶ座席を収納魔術で出した。
俺が乗ると座席は浮かんだ。
「何それ?」
「古代魔法王国の魔道具だ」
そういう設定になっている。
「4人なんだから全員乗せなさいよ。ねえみんな」
「そうだな」
「ええ、乗せてくれるのが当然よね」
「嫌だ。これは金貨10万枚はする品物だ。おまえたちを乗せたら価値が下がる」
「くっ、良いわよ。メイドを乗せないといけないからね。ただ覚えておきなさい」
「リーダーとしての資質に問題ありと騎士団に報告する」
「好きにしろ」
「私の治癒魔法はあてにしないでね」
「ああ、あてになんかしてない。魔道具もあるし、魔術も使えるからな」
とにかく出発できた。
もっと早く移動したいが、馬は遅い。
何時間かおきに休憩して、飼い葉と水を与えないといけない。
最初の野営地についた。
俺は魔力結晶で家とベッドを作り、収納魔術でマットと布団を出した。
3人はそれを恨めしそうに見てる。
俺だって鬼じゃない。
ファントム様の指示通りに動きますとひと言いえば、家も作ってやるし、飛ぶ座席にも乗せてやる。
もちろん座席を6人乗りにしてメイドも乗せてやる。
だが、敵意むき出しで来られたら、そんな気にはなれない。
プリンクの映像を見てストレスを晴らそう。
「プリンク様、馬車10台分の食料ありがとうございます」
「うむうむ、金はいつも通りに現金で頼む」
「はい、食料の引き渡しの時にもってきます」
「ふはは、今日もスペシャルコースだ」
あの風呂屋がお気に入りだな。
毛が抜けて子供みたいと言われて怒っていたのにな。
喉元過ぎれば熱さを忘れるだな。
「交換日記を持ってまいりやした」
ファントムの声がして交換日記が置かれた。
「ありがとう。カリーナの様子はどうだ?」
「寂しそうでした。学園では分身ナンバー1を眺めて、ため息をついてますぜ」
討伐が終わったら、会いに行くとしよう。
パーティメンバーも討伐が終わったら2、3日休むだろうからな。
「スェインの方はどうだ?」
「噂では決闘してパーティメンバーをボコボコにしたそうですぜ。その復讐に最初の野営地で寝込みを襲われたけど、返り討ちでさぁ。泣いて謝るぐらいにボコボコにして、今は従順らしいですぜ」
そんなめんどくさいことしているのだな。
だが窮地に陥ったらたぶん裏切るな
まあ、スェインのことだから織り込み済みなんだろうな。
あいつのことだからきっと死なないさ。
そんな気がする。
最初の討伐は肩慣らしの意味も含めてオークの集落だ。
死魔術で1秒だが、パーティメンバーの実力も見てみたい。
好きにやらせてみるか。
初めての野営を終えた朝。
クラフティは何でもない顔で、スロベニーとカルエルはうんざりした顔で現れた。
眠れなかったらしい。
顔に虫刺されの痕がある。
虫は耳元に来られると鬱陶しい。
確かに眠れないよな。
俺は死を展開しているから、虫は入ってこない。
「クラフティ、虫除けの香を売って」
「私も」
「いいよたくさんあるから」
クラフティは小遣い稼ぎしているな。
俺はそんな3人を横目に朝食の支度をした。
良い匂いが立ち込めた。
「私達も朝食にしましょう。メイドに作らせるから、買わない?」
「そうだな。本職に作ってもらった方が美味いな」
「じゃあ私は虫刺されを魔法で治してあげるから、ただね」
俺を除いたパーティメンバーで連携ができつつある。
こいつらが結託しようが構わない。
カルエルは尻の痛みを治すことで小遣い稼ぎを始めた。
スロベニーは料理で、クラフティは野営製品を売ってそれをした。
結託しているようで無料でやるとは誰も言い出さない。
仲間のようであり、仲間ではないな。
「俺が先頭を行く」
食事を終えたクラフティがそんなことを言った。
「好きにしろ」
「出て来たモンスターの素材は俺が全部貰う。良いよな?」
「自分で倒した分は好きにしろ」
「じゃあ私は収納魔法で運んであげるから、素材の1割ね」
スロベニーも抜け目ない。
「私は解体を手伝うわ。素材の1割ね」
カルエルも抜け目ない。
「いいぜ。俺は誰かさんと違って太っ腹だからな」
クラフティに皮肉を言われても全然堪えない。
金なんか腐るほどある。
小遣い程度の金は惜しくない。
俺は何もしないさ。
最後尾をゆっくり行かせてもらう。
出発して、1時間。
グラスウルフが3頭出て来た。
クラフティの乗っている馬が1頭蹴り殺し、クラフティが残りの2頭を槍で突いて殺した。
Eランクモンスターの3頭ぐらい朝飯前か。
まあ、それぐらいの実力はないと騎士はやっていけない。
問題はSランクモンスターに勝てるかだ。
Sランクに勝てるのなら、金で利用してやらないでもない。
まあ無理だと思う。
それに勝てる自信があるなら、勇者選抜試験に出ているはずだから。




