第61話 新年度
今日は進級式と入学式。
俺も魔法学園の2年生になった。
プリンクは退学していない。
その代わりに異母兄弟のワイズベルが入ってきた。
ワイズベルはキツネ目で細身だ。
母親に似たんだな。
プリンクは父親似だったが。
「ライド、あなたには負けない」
進級式が終わってワイズベルにそう言われた。
「俺は爵位なんかどうでも良い。名誉勇者を何年か勤めたらきっと爵位は貰える」
「だが、父上の頭の中にあなたの名前がある限りはライバルだ。いや宿敵だ」
きつい口調で言われたが、恐らく爵位を狙っているのだろう。
「好きにしろ」
入学式に分身ナンバー1を出した。
俺は屋敷でゆっくりするよ。
分身ナンバー2はプリンクに付けている。
奴は何かしそうだからな。
プリンクは現在、店を作り、馬車を仕立てた。
店の看板は出てない。
ぱっと見は何の店か分からない。
だが俺は知っている。
ファントムが闇商人の印が書いてあると、教えてくれたのだ。
闇商人は別に違法という訳ではない。
ただ違法な物品を扱った時点で違法となる。
誰かが訴えて初めて手配されるのだ。
告訴されない闇商人はたくさんいる。
そのうちのほとんどが法を犯している。
中にはグレーな闇商人もいるが少ない。
さあ、プリンクはどっちだろうな。
さて、分身ナンバー3は屋敷にお留守番にして、俺は名誉勇者として討伐の旅に出る準備をした。
ファントムは名誉勇者がファントムなのでややこしい。
なので俺の従者ではなく伝令を勤めてもらう。
カリーナとのやり取りができないと嫌だからね。
ファントムは伝令と呼ぶことにした。
名誉勇者パーティの顔合わせに出た。
騎士のクラフティ。
腹に一物ありそうな男だ。
ただ美丈夫ではある。
さぞやモテるだろう。
魔法使いのスロベニー。
きりっとしていて出来そうな女に見える。
実力はどうだかわからない。
治癒師のカルエル。
優しそうな目つきだが、実際はどうなのかこれも分からない。
ただ俺がいる限り治癒師の出番はなさそうだ。
全員貴族の子弟だ。
「ファントムだ。よろしく」
「ああ、俺はお前の指示には従わない好きにさせてもらう」
「私も、魔力の配分があるので好きにするわ」
「ポーションがあるうちは各自で飲んでね。どうしてものときは助けるわ」
おいおい、こいつら大丈夫か。
まあ、戦力としては期待してなかったが酷い。
スェインも苦労しているのかな。
貴族の力関係があるからどうにもならない。
名誉勇者として首にできるが、どうせまた似たような奴が送り込まれる。
討伐の旅は危険が伴う。
旅はつらいだろうし、そんな現場に送り込むとしたら捨て駒か、名誉欲に取りつかれている奴だろう。
「出発は3日後だ。準備しとけ」
「馬車は人数分お願い」
スロベニーがそんなことを言う。
こいつ。
メイドとか連れてくるつもりか。
遊びじゃないんだぞ。
「自分で用意しろ。俺は自分の面倒しか見ない」
「それでもリーダーなの。やっぱり名誉なんて物が頭に付くお飾りは駄目ね」
「とにかく馬車は用意しない」
「ちっ、使えない男。いいわ、あなたは歩いて来なさい。私は馬車で行くから」
3日後が楽しみだ。
俺は飛ぶ座席で行くつもりだ。
馬車で尻が痛いのは御免だ。
座席は余っているがこいつらは乗せてやらない。
「カリーナ、旅に出るけど、ちょくちょく帰るつもりだ。空を飛べば国の中なら半日で帰れるから」
カリーナにお別れの挨拶をする。
「お土産話を期待してます。どうか気を付けて行ってらっしゃいませ」
「ああ、話だけでなくお土産も買って来るよ」
プリンクの様子はどうかな。
プリンクは人相の悪い奴と商談している。
今のところ食料を売っているだけだ。
だが売り先は恐らく盗賊だな。
だが商談相手が盗賊だと証明するのはめんどくさい。
もしかしたら商談相手は闇商人かもしれないからな。
分身を付けて監視するほどでもない。
「ファントム、一応、さっきの商人を調べてくれ」
「調べなくても知ってまさぁ。あいつは闇商人で、けして尻尾は掴ませないとの話です。盗賊と取引する場合何人も間に入れる奴でして。ただ評判が悪いのでほとんどの商店は品物を売りませんぜ」
プリンクが商品を買えているのは貴族時代の伝手だろうな。
今も母親は貴族だから、その伝手も使っているに違いない。
プリンクの羽振りは良い。
仕入れは相場で、売値は確実に何割か増しだからな。
こんな美味しい商売はない。
ただ、普通の闇商人の弱い奴はカモにされる。
商品の代金を払って貰えないとか日常茶飯事だ。
そういう事情をファントムに聞いた。
プリンクは貴族崩れだから怒らすと怖いと思われているに違いない。
いまのところ代金の不払いはないようだ。
ホクホク顔で金を受け取るのをたびたび分身が見た。
討伐の旅に分身を出そうかとも考えたが、さすがにモンスター被害に遭っている人のことを考えたら真摯にやらないとな。
とにかく何とかなるだろう。
パーティメンバーは最低だが、構わない。




