第60話 結果発表
まず、現在の点数発表でプリンクが現在1位。
スェインが2位。
ゲイリック王子が3位。
今日で試験期間が終わる。
プリンクが1位とはなんの冗談だ。
「あー、皆さん。プリンク殿が現在1位ですが、不正が発覚しました。現在の順位は以下になります」
スェインが1位。
ゲイリック王子が2位。
後ろからがしっと肩を掴まれた。
振り返ると、どうやら王が後ろから肩を掴んでいるらしい。
「どこへ行こうとしているファントム。それとも別の名前で呼んでほしいか。ほれっ、獲物を提出せよ」
あー、そう言えば勇者問題が解決してなかった。
ファントムは勇者に相応しくありません。
駄目だな。
論破されるのが目に見えている。
あー、辞退は難しそうだ。
なら被害を最小限に。
「ファントムという男は、下劣な男です。勇者に相応しくありません」
「構わん。わしが許す」
「貴族からの横やりが目に見えています」
「ふん、そんなもの叩き潰せ。できるだろう。できないとは言わせない」
あかん奴だ。
「仕方ない。ここはひとつファントムは名誉勇者ということで」
「なにっ?」
「男爵とか元帥にもあるでしょう名誉の付く奴」
「考えたな」
渾身のアイデアだと思っている名誉勇者。
名誉が付けば、付いてないのと比べると格下。
その代わり義務はほとんど発生しない。
会社だと顧問みたいなものだ。
意見はそれなりに言えるが、権力はない。
敬意も払われるが、それだけ。
「どうでしょう。貴族からの横やりも防げますし、切り札を2枚持つというのは悪くないことだと思います」
「良かろう」
ふぅ、良かった。
そして日没。
「勇者となられる方はスェイン殿です。そして本来は1位なのですが、出自が怪しいということでファントム殿は名誉勇者になります。そして不正をしたプリンクは貴族籍はく奪とのことです」
「納得いかん」
プリンクが真っ裸パンチ。
司会をしてた大臣を吹っ飛ばした。
「見苦しいぞ」
ゲイリック王子がプリンクを剣の腹で叩いたが、真っ裸パンチにやられた。
殺すのをためらうからだ。
大事な発表を血で穢したくないからだと思うが、そういうところが甘いんだよ。
「銃」
プリンクの手足を撃ち抜いてやった。
「ぎゃあ。誰だ。姿を見せろ。くっ、痛い。がぁ……」
プリンクは気絶した。
出血多量かな。
まあ死んでも構わない。
「ファントムだ」
「ファントムがやったんだ」
ざわめきが起こる。
俺の隠蔽魔術も上達したものだ。
誰も俺に気づいてない。
王に気づかれたのは、影の者が報せたからに違いない。
「以上を持ちまして勇者選抜試験を終了します」
ポーションを飲まされ復活した大臣が最後を締めた。
「ファントム、良かったな。名誉勇者だってさ。もう一生働かなくても良いぞ」
「あれはあっしではないので」
「だが、ファントムはファントムだ」
「無理を言われても困りますぜ」
実家から呼び出しがあった。
「来て貰ったのは、後継ぎのことだ」
「そんなのは要らん。プリンクの債権があるから払ってくれさえすれば良い」
「家中からはお前を推す声がある」
「そんなの関係ないだろ。親父が後継ぎをこれと決めれば良いだけだ」
「分かった。プリンクの財産を清算して借金を払おう。遺産相続の前払いをすれば払えるはずだ」
「それでいい」
「後継ぎはしばらく空席だ。考えたい」
考えることもないだろう弟はたくさんいる。
その中でまともそうな奴に継がせりゃ良い。
くだらん時間を潰した。
気分直しに飲もう。
酒場に行くと、今日の勇者選定試験の話で持ち切りだった。
まあそうだよな。
「名誉勇者のファントムは殺し屋出身だともっぱらの噂だ。これは荒れるぜ」
「正式勇者のスェインの身分も低いし、貴族が騒ぐだろうな」
「ゲイリック王子を応援してたのにな」
「所詮、お坊ちゃまのボンボンよ。本当に強い奴ってのは平民から出たりするもんだ。環境の厳しい所からな」
「不正した奴がいたな。プリンだったっけ」
「ああ、そんな奴。珍しい虫をたまたま手に入れて、金の力で獲物を買ったらしい」
「王家の影が見てるってのに不正なんかできないだろう」
「だろうな」
「俺はスェインが気に入ったぜ。努力の人だって言うじゃないか。親近感が持てる」
「勇者スェイン万歳」
「スェインに乾杯」
「ファントム、恰好良いと思うがな。さすがに殺し屋が勇者は不味いよな」
「強けりゃ別に良いと思うぜ。殺し屋なら契約は守るだろう。形勢が悪くて簡単に撤退とかされたら困る」
「そうだな。勇者が出る案件はSランクモンスターだからな」
スェインの人気が高いな。
ああいうキャラの方が民には受けるんだろうな。
やっぱり俺は英雄タイプじゃない。
裏ボスとか、魔王のタイプだ。
「各地で眠り病が発生したが、あれから新たな患者は聞かないな」
「勇者に解決してもらおうぜ」
「剣士が医者の役目ができるかよ」
邪教信者の後始末もあるんだった。
めんどくさいな。
国の隅々を回るのは勘弁だ。
眠っていても死なないから、ゆっくりとやろう。
あっ、しまった。
カリーナへの報告を忘れてた。
とりあえず。
「ファントム」
「へい」
「カリーナに手紙を届けてくれ」
「了解いたしやした」
さらさらと経緯を書いてファントムに託した。
明日、朝一で行かないときっとカリーナはすねるな。
手紙には、日没を過ぎていたので、遠慮したと書いたが。
忘れてたことが伝わったりしちゃうもんなんだよな。
女の勘は侮れない。




